顧客の共感を得られるCO2削減活動が社員の意識を高める
【パネルディスカッション:脱炭素経営と社内意識啓発 レポート】

COOL CHOICE編集部
COOL CHOICE編集部
パネルディスカッションの様子

2019年2月15日、環境ビジネスが主催するフォーラム「これからの脱炭素経営」が東京・秋葉原で開催され、約400人の参加者を集めました。「脱炭素経営と社内意識啓発」と題するパネルディスカッションでは「COOL CHOICE」に賛同する企業の担当者3人がパネリストとして登壇。CO2排出量削減のための取り組みと、それを実行するまでのステップなどについて話し合いました。その様子をレポートします。

パネリスト
株式会社LIXIL(リクシル) EHS推進部 部長 川上敏弘氏
株式会社アルファシステムズ 品質管理部 課長 大沼慶雄氏
株式会社セブン&アイ・ホールディングス サステナビリティ推進部 オフィサー 尾崎一夫氏

モデレーター
株式会社日本ビジネス出版「環境ビジネス」編集長 白田範史氏

環境を考える機会を社内外に提供して製品使用時のCO2排出量を減らす

パネルディスカッションの様子
(株式会社LIXIL(リクシル) EHS推進部 部長 川上敏弘氏)

 LIXILグループは、顧客が使用する住まいや暮らしの最終消費財を製造・販売しているため、製品の使用場面でのCO2排出量の割合が高く、全体の95%を占めています。「それをどう減らしていくのかが私たちの活動のメインになっています」と川上氏は述べます。
 LIXILグループは環境負荷の低い製品を作っていますが、それを消費者に選んでもらわないことにはCO2排出量の削減に貢献できません。そこで、消費者がLIXIL製品を選択するきっかけづくりとして、地球環境について考える機会を社内外に啓発する「みんなでスマイルエコプロジェクト」を行っています。
 第1弾の取り組みとして、「マイボトル推進活動」を行いました。ペットボトルによる環境負荷を減らすために顧客や従業員にオリジナルマイボトルを配布。それと併せてすべての事業所にセラミック・フィルターで水をろ過するLIXILグループ製の浄水栓を導入し、水道の蛇口からおいしい水が出てくるようにしてマイボトルの利用を促したのです。
 第2弾の活動である「THINK HEAT」では、顧客や社員に温度計を配布しています。家の中の温度を測ってもらうことで設定温度と室内温度に差があることを知ってもらい、「省エネ」と「健康・快適」を両立する室温を保つことの重要性について着目を促す取り組みです。その一環として社員が講師となって小学校を訪れ、「健康と環境によい住まい方」の出前授業を行い、ヒトと地球にやさしい温度について小学生とともに考える機会も設けています。

「COOL CHOICE チャレンジ」への参加で社員のモチベーションアップ

パネルディスカッションの様子
(株式会社アルファシステムズ 品質管理部 課長 大沼慶雄氏)

 アルファシステムズは情報通信システムのソフトウェアの受託開発を中心に事業を展開するIT企業です。ソフトウェア開発が主な事業のため、温室効果ガス削減の取り組みも自ずとオフィス内でできることがメインとなります。同社は、各事業所に環境推進委員会を設置し、本社品質管理部がそれらを統括しています。具体的には「EMS」(Environmental Management System:環境マネジメントシステム)に則って電気やガス、紙の使用量、ごみの排出量の削減に取り組んでいます。
 2004年に取り組み始めてから電気とガス、紙、ごみのすべてを削減してきましたが、ここ数年は削減量が横ばい状態。その状況を打破するきっかけとして「COOL CHOICE チャレンジ」に参加しました。それまでの活動に加え、COOL CHOICE チャレンジのポスターによる啓発を行ったり、ライトダウンキャンペーンを実施したりしたのです。
 「COOL CHOICE チャレンジに参加する前は、社員の温室効果ガス削減活動への参加意識が少し低くなっていたのですが、国民運動として同活動に取り組むことをアピールした結果、社員の積極性が増してきました」と大沼氏は説明します。
 また、COOL CHOICE チャレンジのウェブサイトに同社の活動が掲載されたことで、経営層を含む多くの社員が、「温室効果ガス削減活動に取り組んでよかった」という気持ちになれたことも同活動に参加したことの成果のひとつと言えます。

最新技術を投入した店舗で使用電力の約46%を再生可能エネルギーで賄う

パネルディスカッションの様子
(株式会社セブン&アイ・ホールディングス サステナビリティ推進部 ※3月1日より部署名変更 オフィサー 尾崎一夫氏)

 セブン&アイグループはコンビニエンスストアやスーパー、百貨店などの事業を展開しており、一日当たりの国内来店客数は約2300万人に上ります。エネルギー使用量を確認すると店舗運営に伴う電力が9割を占めており、「店舗運営における削減行為が重要になる」と尾崎氏は語ります。
 そこで同グループでは、店舗で使用する電力削減を目的に、新しい技術を導入した「セブン-イレブン相模原橋本台1丁目店」をオープンしました。この店舗では『ひとと環境にやさしい店舗』をテーマに、「路面埋め込み型太陽光パネル」の駐車場への設置や、「ハイブリッドカーのリユースバッテリーによる蓄電」などの様々な技術を採用。その結果、使用電力の約46%を「CO2排出ゼロ」の再生可能エネルギーで賄うことが可能となりました。
 セブン&アイグループのうち4社では、顧客参加型の資源循環としてペットボトルの回収を行っており、その回収数は年間約2億3700本、重量で約7000トンに上ります。また、顧客や地域社会との繋がりを深める環境活動にも取り組んでいます。例えば店舗の近くにある幼稚園の園児と一緒にグリーンカーテンを作ったり、来店した子供と牛乳パックで箸置きを作ったりしているのです。
 さらに社員に向けた環境意識の啓発も進めており、植樹や間伐、下刈りなどの森林保全活動や、「eco検定」の受検促進などを行っています。

環境とレクリエーションの融合で社員の積極的な活動参加を促す

パネルディスカッションの様子
(モデレーターを務めた、雑誌「環境ビジネス」編集長の白田範史氏)

 3人のパネリストの説明が終了すると、モデレーターの白田氏から、「CO2排出量削減に取り組むに際してどのようなことから手をつけ、どのようにスタートさせたのでしょうか」という質問がなされました。
 尾崎氏は「社内に環境部会を設置し、年に3~4回会議を行っています。そこでCOOL CHOICEの活動をお客様にどう伝えていくのか、などについて話し合われているのです」と答えました。
 例えば、同社のスーパーや百貨店にはEV(Electric Vehicle:電気自動車)用の充電器が約2000台設置されていますが、充電する場所が空いていることが少なくありません。その場所にCOOL CHOICEのロゴを貼って来店者にアピールするアイデアや、環境配慮型商品にロゴを掲示する取り組みを生んだのは環境部会でした。
 大沼氏は、「COOL CHOICEに賛同登録する際、その旨を経営層に諮ったところ、スムーズに承認してもらえました。難しいのは社員に積極的に活動に取り組んでもらうことです」と話しました。
 その課題を解決するために考えたのが、環境とレクリエーションの融合です。アルファシステムズの本社は川崎市を流れる多摩川近辺に立地しています。多摩川の河川敷では川崎市が主催する環境ボランティア活動が行われており、大沼氏が所属する品質管理部の社員たちが率先してその活動に参加し始めました。地域住民らとの交流を楽しんだことを社内に発信したところ、レクリエーションのひとつと捉えて環境ボランティアに参加する社員が増えていったそうです。
 川上氏は「LIXILグループでは2015年に、2030年に向けた環境ビジョンを策定しました。その際、まず経営層から巻き込んでいこうと考え、経営層向けの環境に関する勉強会を開催し、議論ができる下地づくりに時間を掛けました」と答えます。
 もともと経営層は環境に対する意識が高いため、議論が始まると多くの意見やアイデアが生まれ、それらを基に新しい環境ビジョンがつくられたといいます。
「じつはSBTは後付けで、2030年に向けた環境ビジョンを実現するための目標を設定したら、SBTに認証されるレベルのものが出来上がっていたのです」と川上氏は明かします。

ビジネスの判断を行う際に環境も考慮できる社員をたくさん増やしたい

 続いて白田氏から、「今後、どのような活動を行っていきたいですか」という質問がありました。
 川上氏は「当社は今、どうやって目標を達成するのかというステージまで来ています。本社の環境部門に所属する私たちは事業部門の社員と一緒に目標達成のための方策を積み上げていくことが大事だと思っています」と答えました。また、環境部門が再生可能エネルギーの利用率や廃棄物の再資源化率などといった、具体的な“旗”を立てることも必要だと考えているとも言います。さらに川上氏は、「お客様の共感を得ながらCOOL CHOICEを促す活動を行っていくことで、お客様だけでなく実際に活動を行う社員の意識も高まり、様々なビジネスにおける価値判断に環境のことも考慮できる社員をたくさん増やしていきたい」と話しました。
 大沼氏は、「COOL CHOICEに賛同登録したことを有効利用して社内啓発を行い、さらに社外にもアピールしていきたいです」と答えました。同社の主力事業であるソフトウェア開発を通して環境保全のための役に立ちたいとも言います。「当社が開発したソフトウェアをお客様が使用して作業効率を向上させることで、電力や人件費の削減に寄与し、ひいては環境の負荷低減に貢献していけると考えています」と大沼氏は述べました。
 尾崎氏は「現在の環境活動の推進に加えて、様々な課題に対して長期的なビジョンを持って取り組むことが重要だと考えています。脱炭素経営に向けたCO2削減だけでなく、フードロスや持続可能な調達などにもグループ全体で取り組んでいきたいです」と話しました。

 予定の終了時間を迎えてパネルディスカッションは終了しました。3人のパネリストによる話はいずれも実体験に基づいたものであり、参加者が自社で脱炭素経営を行う際、実務に生かせる内容となっていました。

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