COOL CHOICE

秋冬の味覚に危機?地球温暖化の影響と“地産地消”という選択

秋から冬にかけて、サンマやサケなどの水産物やリンゴなどの農産物が旬を迎えています。ところが、地球温暖化の影響もあって、収穫量減少や品質低下が見られるといいます。

農水産物の不漁や不作を伝えるニュースもある中、具体的にどのような危機に瀕しているのでしょうか。農林水産省や研究機関などによる様々な調査結果などを基に、詳しく見ていきましょう。

サンマの平均単価が10年で3.6倍に!

秋の食卓への大きな影響を感じたのは、サンマの価格高騰ではないでしょうか。

2006~2010年の5年間でみると、サンマの平均単価は1kgあたり81.6円。かつては、安くておいしい“秋の味覚”の代表でした。

ところが、2016~2020年の5年間では、1kgの平均単価がそれ以前の約3.6倍の295円まで上昇し、今では食卓に並ぶ魚の中でも“高値の魚”になっています。

サンマの漁獲量と価格の推移

漁獲量の減少が、サンマの価格の急騰に繋がっています。2008年に約35万tだった漁獲量は、2019年に10万tを切り、2020年には約3万tまで落ち込んでいます。

日本近海に近づくサンマの来遊量が減っていることが、漁獲量減少の原因です。その一因が地球温暖化による海水温の上昇とみられています。

サンマは、15~20℃の水温を好み、主な生息地は北太平洋です。秋になると、魚群の一部が千島列島から日本列島の東岸にごく近い位置を移動していました。

ところが、2010年以降、サンマの好漁場である常磐沖(じょうばんおき)に暖水塊(だんすいかい:黒潮由来の暖かい海水)が発生し、釧路沖で停滞。さらに、黒潮(暖流)の流れが変わったことによる日本列島近海の水温上昇などの影響から、低温を好むサンマの親魚が、より沖合を移動するようになったのです。

近年のサンマの来遊ルート

2019年に暖水塊はなくなりましたが、沿岸への来遊量は少ないままでした。これは、高い水温を好むマイワシやマサバが増え、そのまま“居座った”ことによりサンマと餌を奪い合うなどの理由が考えられています。

漁獲量が減っている魚はサンマだけではありません。水産庁は2021年6月の検討会で、サンマ、サケ、スルメイカの漁獲量が2014~2019年の5年間で、74%減少したと発表しました。さらに、水産庁としては初めて、不漁の原因を「地球温暖化や海洋環境変化などに起因する資源変動」によるとしたのです。

果物への影響も深刻

地球温暖化は、秋から冬に収穫期を迎えるリンゴなどの果物にも、大きな影響を及ぼしています。

リンゴについては、夏季の高温によって日焼けや着色の不良・遅れといった品質劣化の多発が報告されています。

また、「年平均気温が6~14℃の地域」とされているリンゴの栽培適地が、徐々に北上しつつあるのです。

国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が発表した第5次評価報告書のシナリオのうち、最も気温上昇が高いRCP8.5シナリオ(※1)の通りに地球温暖化が進めば、2046~2055年頃には、現在リンゴが栽培されている関東地方の内陸部や本州の日本海側には、リンゴの栽培に適さない地域が広がると予測されています。

※1:RCPシナリオとは、IPCC第5次評価報告書の気候モデル予測で用いられる温室効果ガスの代表的な濃度の仮定(シナリオ)を指す。RCP8.5シナリオとは、報告書内で示された4つのシナリオ(RCP2.6、4.5、6.0、8.5)のうち、最も気温が高くなるシナリオ。
https://www.jccca.org/ipcc/ar5/rcp.html(外部サイト)

リンゴの栽培適地の将来予測

このように地球温暖化による影響は、漁業者や農家はもちろん、私たちの日々の食卓にも大きな影響を及ぼします。

解決のために、何ができるのか?

地球温暖化の防止には世界規模の取組が必要ですが、私たち一人ひとりにも、食生活を通じてできることがあります。それが「地産地消・旬産旬消」です。

地域の旬の食材を食べることは、食料の輸送・距離にかかるエネルギー指標である「フード・マイレージ」の減少に大きくつながります。

フード・マイレージは「食料の輸送量×輸送距離」で、日本の数値は2001年の試算で9,002(億t・km/以下同)と、アメリカの2,958、フランスの1,044、ドイツの1,717を大きく上回り、世界で第1位となっています。日本のフード・マイレージは、2010年に8,669、2016年に8,413まで減少しましたが、なお欧米諸国に比べて高いです。

各国のフードマイレージ

日本の食料自給率(カロリーベース)については、1965年度には70%以上ありましたが、2020年度は37%まで低下しており、これは先進国の中でも最低の水準で、多くの食料を外国からの輸入に頼っていることが分かります(農林水産省「食料自給率・食料自給力について」より)。

地元の食材を購入することは、輸送距離が短くて済み、輸送に係るエネルギー消費量を抑えることが可能になります。

例えば、石川県の和食献立で、地元食材を使用した場合と、市場流通に委ねて輸入食材も含めて使用した場合とを比較した例をみると、市場流通に委ねた場合は、地元食材を使用した場合に比べて、フード・マイレージは256倍、CO2排出量は44倍になると推計されています(農林水産省「地元食材を使った和食におけるフード・マイレージの計算」より)。

地産地消は、日本の食料自給率を高めることに加えて、地域経済の活性化にも大きく役立つ可能性があります。

また、旬産旬消は栽培に係るエネルギー消費量も抑えることもできます。“食欲の秋”こそ、おいしく栄養価も高い、旬の食材を食べましょう。

おいしくいただいた後は、さらに、食品ロスを減らすこと。

日本の食品ロスは年間約600万t(2018年度推計)といい、うち約半分は家庭から出ています。食品ロスの削減は、ごみを処理する手間が減るなど暮らしのメリットがあるとともに、温室効果ガスの削減、つまり地球温暖化の防止にもつながっているのです。

私たちにできる行動「COOL CHOICE」

温室効果ガス排出量

水産物や農産物等、さまざまな影響を及ぼす地球温暖化を進行させないために、日本では2050年までにCO2などの温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを目指します。

そのために、私たちにできる行動として、環境省では「COOL CHOICE」を推進しています。

「COOL CHOICE」は、CO2などの温室効果ガスの排出量を削減する「製品への買換え」、「サービスの利用」、「ライフスタイルの選択」などのあらゆる「賢い選択」によって、持続可能で豊かな暮らし、脱炭素社会を実現していこうという取組です。

また、衣食住・移動・買物など日常生活における脱炭素行動と暮らしのメリットを「ゼロカーボンアクション30」として紹介しています。

「COOL CHOICE」は、CO2などの温室効果ガスの排出量を削減する「製品への買換え」、「サービスの利用」、「ライフスタイルの選択」などのあらゆる「賢い選択」によって、持続可能で豊かな暮らし、脱炭素社会を実現していこうという取組です。私たち一人ひとりが実践できることから取り組んでいきましょう。

参考資料など

  • 北海道水産会「北海道における秋さけの不漁の影響と対応」/さけます・内水面水産試験場「さけますの回遊経路」/国立研究開発法人水産研究・教育機構「ふ化放流事業のながれ」/同「平成30年度国際漁業資源の現況:サケ(シロザケ)日本系」/同「令和2年度 サンマ長期漁海況予報」/農林水産省「令和2年漁業・養殖業生産統計」/同「農林水産物輸出入概況(2020年)」/同「農業生産における気候変動適応ガイド」(2020年)/同「環境保全に向けた食料分野での取組」/同「我が国の農産物輸入等の動向」/同「食料自給率・食料自給力について」/水産庁「令和2年度 水産白書」/同「不漁問題に関する検討会配布資料」(2021年)/北海道大学大学院水産科学研究所教授 帰山雅秀「気候変動とサケ資源について」(2011年)/弘前大学農学生命科学部 伊藤大雄「21世紀の気候変動が北東北のリンゴ栽培に及ぼす影響」(2020年)/環境省「サステナブルで健康な食生活の提案」(2021年)/北海道地球温暖化防止活動推進センター「一村一品応援プロジェクト」(2010年)/中田哲也『フード・マイレージ-あなたの食が地球を変える』(新版、2018.1、日本評論社)

制作協力 ウェザーニューズ

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