みんなの「再エネ」取組み

再エネを導入された個人、自治体、企業の方に
取材を行い
具体的な導入事例などを
ご紹介させていただきます。

企業の再エネ導入を促進する「電力リバースオークションサービス」とは?

2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロを表明した自治体(ゼロカーボンシティ)の数は9月末時点で464に上り、各自治体はその実現に向けて一事業者や生活者とともにCO2削減に取り組むことが求められています。そうした中、とりわけ中小企業での再エネ導入を促進する施策の一つとして徐々に広まりつつある「電力リバースオークションサービス」の自治体での活用事例について、エナ―バンクの代表取締役社長、村中健一さん、COO佐藤丞吾さんに聞きました。

村中 健一
村中 健一(むらなか けんいち)

株式会社エナーバンク 代表取締役社長/共同創業者。慶應義塾大学理工学部及び大学院理工学研究科で最適化理論・機械学習を学ぶ。ソフトバンクで経済産業省HEMSプロジェクト主任。2016年電力自由化で電力事業の立ち上げ、電力見える化プロダクト開発のリーダを務める。IoT関連の新プロダクト企画・開発実績。2018年エナーバンクを創業。

佐藤 丞吾
佐藤 丞吾(さとう しょうご)

株式会社エナーバンク COO/共同創業者。国際航業株式会社に入社。社会インフラ構築の調査・設計、自治体の総合計画や都市再生整備計画など上位計画策定支援などに従事。高精度将来人口推計システムの開発、政令指定都市の採用実績あり。エネルギーコンサルタントチームの立ち上げを担当。太陽光・蓄電池導入シミュレーション「エネがえる」をゼロから立ち上げる。2018年エナーバンクを創業。

事業者の再エネ切り替えを後押し、電気代削減も

2016年の電力自由化以降、市場は複雑化しており、新電力の参入数は700社以上に上ります。「再エネやお得な電気に切り替えたいけど、どの電気事業者を選べばいいのか分からない」と頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。こうした課題の解決に向けて、現在さいたま市や神奈川県、新宿区などでは企業向けの再エネ促進ツールの一つとして電力リバースオークション(⼀定期間何度でも再⼊札可能な)サービス「エネオク」を提供しています。

エネオクは、他社の⼊札価格が⾒える状態で、⼀定期間何度でも再⼊札可能な仕組み(リバースオークション⽅式)を採⽤している エネオクは、他社の⼊札価格が⾒える状態で、⼀定期間何度でも再⼊札可能な仕組み(リバースオークション⽅式)を採⽤している

利用する企業はWEBサイトに使用電力の明細情報を登録(無料)すれば、全国の小売電気事業者の中から希望に合った条件の電力契約を見つけられるため、自力で小売電気事業者を探す・交渉するといった手間や取引コストを解消することができます。現在30社を超える小売電気事業者が同サービスに参加しており、システムを通じて得た利用者の情報を基に最適な電力プランを提示して入札に参加する仕組み。定められた期間内であれば、最低の価格を確認しながら何度でも条件提示を行うことができるリバースオークション形式(競り下げ方式)を採用しているため、通常の相見積よりも大幅な低価格を実現します。

環境省では現行契約よりも安価にRE100を達成する手法の先行事例として、「公的機関のための再エネ調達実践ガイド」にも同サービスを掲載。全国の官公庁自治体でも同手法を活用して150契約をRE100に切り替え、電気料金を平均9.8%削減しました。また、RE100のみならず事業者の状況に合わせて再エネ比率を選択できるのも、その特長の一つです。

先行事例のノウハウを蓄積、脱炭素ドミノ実現の一手に

導入実績は、利用法人数(官公庁自治体含む)214、総オークション数は1249施設、取扱総額は75.6億円にのぼる 導入実績は、利用法人数(官公庁自治体含む)214、総オークション数は1249施設、取扱総額は75.6億円にのぼる

昨年、エナ―バンクと再エネ利用促進に関する連携協定を締結したさいたま市や神奈川県では、地域の事業者や電力供給者向けに同サービスの周知を目的とした説明会の実施やDMによるPR活動を行っています。地域の特性を勘案したアプローチなども取り入れており、神奈川県では再エネ共同オークションを開始。一社だけでは調達量が少ない事業者をグループ化することで、供給側のメリットも生み、コストの削減・適正化を図る狙いです。

エネオクは、事業者単体での利用も可能ですが、自治体と共に取り組むことで安心感を高められるといったメリットがあるほか、自治体からRE100認定書が発行されるなどCSRの観点から企業価値を向上させる一手としても活用できます。

今後は同サービスを通じて、都道府県ごとの再エネ導入目標と進捗をリアルタイムでWEBの地図上に可視化、また先⾏導入地域のノウハウをプラットフォーム上で共有できるようになる見通しです。自治体が中心となりこうした仕組みの活用を広めノウハウを蓄積、先行事例を伝搬することで、事業者における再エネ導入が進み、全国でゼロカーボンシティの実現が加速することが期待されます。