みんなの「再エネ」取組み

再エネを導入された個人、自治体、企業の方に
取材を行い
具体的な導入事例などを
ご紹介させていただきます。

再生可能エネルギーのある暮らしがすぐそこまで来ている!?身近に迫る脱炭素化の最前線を見てみよう。

世界レベルで加速する脱炭素化や再生可能エネルギーの導入。最近、ニュースや新聞でよく聞かれるトレンドですが、一般消費者レベルでその潮流を肌で感じるシーンは、まだそれほど多くないかもしれません。今回は暮らしに欠かせない“住まい”や“まち”の視点から、再エネ化や脱炭素化の流れについて、大和ハウスグループの事例をもとに紹介します。

“家づくり”“まちづくり”の観点から求められるメーカー主体の脱炭素化・再エネ化・省エネ化の波

先進導入事例として「令和2年度気候変動アクション環境大臣表彰」を含めて、4つの賞を受賞した、大和ハウスグループが手掛けた「船橋グランオアシス」。 先進導入事例として「令和2年度気候変動アクション環境大臣表彰」を含めて、4つの賞を受賞した、大和ハウスグループが手掛けた「船橋グランオアシス」。

企業自らの目標が、世界が目指す1.5℃目標に合致していることを確認する「SBT」※1、事業で使用する電力を100%再エネで賄うことを目指す「RE100」や、事業のエネルギー効率を倍増させること(省エネ効率を50%改善)を目標に掲げる企業が参加する「EP100」など、脱炭素化・再エネ化・省エネ化の波が、産業の種類を問わず押し寄せています。

※1 SBT:パリ協定が求める水準に整合した、5~15年先の目標として企業が定めた温室効果ガス排出削減目標。

住宅・建設業界においても、先進的な脱炭素を推進することは大切な役割として認識されており、今回取材した大和ハウスグループも例外ではありません。同社が脱炭素への戦略的アプローチとして取り組んでいる「再エネ100%のまちづくり」は今後、私たちが暮らす住まいがどうあるべきか? の好例として示唆に富んだものです 。

なぜ進む? 再エネ100%のまちづくり 避けては通れない2つの世界的潮流

社会課題解決を事業の柱としている大和ハウスグループは、環境長期ビジョン『Challenge ZERO 2055』のもと、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを推進しています。

住宅メーカーが再エネ化・脱炭素化を推進する理由とトレンド。 住宅メーカーが再エネ化・脱炭素化を推進する理由とトレンド。

大和ハウスグループが脱炭素に取り組む背景には、世界的な二つの潮流があります。

一つ目は、「気候変動の深刻化」。気象災害の頻発化・激甚化が進み、住まいの安全・安心が脅かされる状況では、マイホームの夢を描く人が減少していく可能性があります。

二つ目は、「脱炭素革命の加速」。近年、世界経済は脱炭素に舵を切っており、世界でビジネスを拡大するには、世界標準の取り組みが必須になります。

大和ハウスグループは、こうした潮流を捉え、2018年には住宅・建設業界として世界で初めてSBT、EP100、RE100の3つの国際イニシアティブに加盟するなど、世界標準の高い目標を掲げて、脱炭素を推進しているのです。

再エネ&省エネで進む「脱炭素を目指すまち」。 この10年で誕生した事例を紹介

大和ハウスグループは、自社活動の脱炭素を進めるとともに、自社施設で蓄積したノウハウを活かして再エネ100%のまちづくりを推進しており、全国各地に複数のスマートシティ/タウンを誕生させています。これらは近い将来、私たちの“まちでの暮らし”がどう変わっていくのか、その参考になる事例といえます。

高尾サクラシティ(2016年)

戸建住宅街区では「太陽光」「燃料電池」「蓄電池」を導入。非常時には商業施設からマンションへ電力供給が行われる。 戸建住宅街区では「太陽光」「燃料電池」「蓄電池」を導入。非常時には商業施設からマンションへ電力供給が行われる。

東京都八王子市の「高尾サクラシティ」は、戸建住宅と分譲マンション、大型商業施設を擁する、住・商一体のまちです。

街全体でエネルギー利用の見える化を行っているほか、住宅-商業施設間のクールシェアサービスや、非常時に商業施設からマンションへの電力供給を実施します。

そして、戸建住宅街区では、全住戸3電池(太陽光発電、燃料電池、リチウムイオン蓄電池)と「D-HEMS」を導入。「D-HEMS」は、大和ハウス工業がスマートハウス向けに開発した「HEMS(Home Energy Management System)」で、住宅内の消費電力を「見える化」するほか、リチウムイオン蓄電池等の家電・設備機器の制御に対応しています。

スマ・エコ タウン陽だまりの丘(2014年)

まちの太陽光発電所で使われる太陽光パネル。 まちの太陽光発電所で使われる太陽光パネル。

三重県桑名市の「スマ・エコ タウン陽だまりの丘」は、住民共有のまちの太陽光発電所(約100kW)や住戸の省エネ・創エネ・蓄エネ設備により、街全体でネット・ゼロエネルギーを達成したスマートタウンです。

余剰電力を売却して得た収入で、住まいのメンテナンスなど、生活支援サービスを提供。 余剰電力を売却して得た収入で、住まいのメンテナンスなど、生活支援サービスを提供。

まちの太陽光発電所で得た収益は、生活支援サービスとして住民に還元。生活支援サービスは、まちのエネルギーの見える化運営や超小型電動モビリティの管理運営等の「タウンサービス」、および住戸のメンテナンスや住宅修繕費の積立といった「各戸へのサービス」の2種類が用意されています。

再エネ100%の暮らしの最新事例。 船橋グランオアシスの場合

「船橋グランオアシス」は千葉県船橋市行田地区、東武アーバンパークライン「塚田駅」から徒歩数分のエリアに広がる閑静な住宅エリア。 「船橋グランオアシス」は千葉県船橋市行田地区、東武アーバンパークライン「塚田駅」から徒歩数分のエリアに広がる閑静な住宅エリア。

千葉県船橋市にある「船橋グランオアシス」は、施工段階を含む、まちで使用する電力のすべてを再生可能エネルギーで賄う“再エネ電気100%タウン”です。

まちで使用する再エネ電気は、大和ハウスグループが全国で管理・運営する377か所※2の再⽣可能エネルギー発電所のうち、2018年10⽉より本格稼働した岐⾩県⾶騨市の「菅沼⽔⼒発電所」で発電した電気を中⼼に供給。大和ハウスグループが同発電所で発電した電気であることを証明する⾮化⽯証書(トラッキング付)を購⼊することで、再エネ電気のみを利⽤するまちづくりを実現しています。

※2 2021年3月末時点。

CO2削減効果としては、一般的な建物の排出量合計が2,935t-CO2/年とした場合、この船橋グランオアシスでのCO2排出量は751t-CO2/年(ガス使用に伴うCO2排出量)となり、74.4%の削減効果(商業施設は含まず)が期待されます。

こうしたCO2削減効果には、大和ハウスグループが培ってきた様々な省エネのノウハウも大きく貢献しています。

「船橋グランオアシス」の分譲マンション内に設置されたリチウムイオン蓄電池。屋上のソーラーパネルで生成した電気がここに蓄電される。 「船橋グランオアシス」の分譲マンション内に設置されたリチウムイオン蓄電池。屋上のソーラーパネルで生成した電気がここに蓄電される。

分譲マンションでは、使用電力が増加する時間帯には、太陽光発電システムからリチウムイオン蓄電池に貯めた電力を放電し、共用部の電気に使用することでマンション全体のピークカットを自動的に実施。停電時には、リチウムイオン蓄電池から特定の機器に電気を供給する仕組みを取り入れています。

また、各戸にリアルタイムインジケーターを設置し、電⼒の利⽤状況を⾚・⻩・緑の⾊でリアルタイムに入居者に知らせます。表⽰と併せて、電力負荷に応じて変動料金となる仕組みを取り入れ、無理のない節電⾏動が電気代の削減に繋がるようになっています。

戸建住宅エリアで送電は地下を通るため、景観が電柱や電線に邪魔されない。また配電盤(写真左下)を使って区画間での電力の融通も可能。 戸建住宅エリアで送電は地下を通るため、景観が電柱や電線に邪魔されない。また配電盤(写真左下)を使って区画間での電力の融通も可能。

戸建住宅では、5~6区画で6つのサークルを形成し、サークルごとに電力を一括管理。サークル単位で電力を融通することで、より効率的なエネルギー消費が可能となります。

大和ハウスグループによると、「船橋グランオアシス」の住宅の電気料金は、大まかに、大手電力会社よりも安く、値段にこだわっている新電力会社と比較すると少し高い程度ということです。

船橋グランオアシスの周りに整備された、街区以外で暮らす住民も通行可能な道路・緑道。 船橋グランオアシスの周りに整備された、街区以外で暮らす住民も通行可能な道路・緑道。

さらに、「船橋グランオアシス」の街づくりのなかで、町内会の整備などによる街区内の住民同士のつながりはもちろん、地域とのつながりも重視。街区以外で暮らす住民も利用可能な道の整備(道路拡幅や緑道の整備)なども行い、地域のレジリエンス向上にも貢献しています。

これからどうなる? 再エネ・省エネ・脱炭素のまちづくり

脱炭素社会の実現に向けた取り組みが世界規模で加速していく中で、まちづくりの脱炭素化、省エネ化、再エネ利用もいっそう進んでいくと考えられます。

大和ハウスグループが推進するスマートシティ構想の軸となる3つの「Re」の概略。 大和ハウスグループが推進するスマートシティ構想の軸となる3つの「Re」の概略。

そうした中で、大和ハウスグループでは、実現性(Reality)と再生可能エネルギー (Renewable Energy)の活用、災害時にも強靭な回復力を発揮するレジリエンス (Resilience)の3つの「Re」に着眼した街づくり郊外型複合まちづくり「コReカラ・シティ プロジェクト」を推進して、脱炭素社会の実現に取り組んでいく計画を表明しています。

近い将来、住まい探しや街選びでも、再エネ・省エネ・脱炭素が大切なキーワードになっていくと予想されます。今回紹介した事例から、再エネや省エネが“あたりまえ”になった暮らしをイメージしつつ、これからの住まいについて考えてみてはいかがでしょうか?