地球温暖化防止コミュニケーター

コミュニケーターに押さえておいてもらいたい温暖化の最新情報(1.5℃特別報告書)

2019年3月18日掲載

パリ協定(2015年)では、世界の平均気温の上昇を、産業革命前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追及することとで合意しましたが、それを受けて、2018年10月に、IPCCは1.5℃の気温上昇の影響、リスクおよびそれに対する適応、関連する排出経路、温室効果ガスの削減(緩和)等に関する特別報告書(1.5℃特別報告書※)を公表しました。非常に分かりにくい内容ですが、私なりに1.5℃特別報告書のポイントをまとめてみました。

※正式名称は、「気候変動の脅威への世界的な対応の強化、持続可能な発展及び貧困撲滅の文脈において工業化以前の水準から1.5°Cの気温上昇にかかる影響や関連する地球全体での温室効果ガス(GHG)排出経路に関する特別報告書」

1.5℃特別報告書のポイント

1)人間活動は、産業革命前に比べて約1℃温暖化させたと推定され、近年にみられる進行速度で続けば、2030年から2052年の間に1.5℃に達する可能性が高い。
2)1.5℃上昇でも影響リスクは高まるが、2℃上昇よりは低い。例えば、海面上昇は2℃上昇よりも10センチ低くなる。
3)1.5℃上昇に抑えるための世界のCO2排出量は、2030年までに2010年に比べて約45%削減、2050年前後には正味ゼロになっている。
4)パリ協定で提出された国別目標では、地球温暖化を1.5℃に抑えることはできず、大きな社会システムの変革が必要である。それは持続可能な開発(SDGs)との相乗効果もある。

それぞれ、もう少し詳しく補足します。

1)1.5℃の地球温暖化の理解
1.5℃特別報告書によると、人間活動は、産業革命前に比べて、2017年時点(2017年を中心とする30年平均値)で、約1℃(0.8℃~1.2℃)、温暖化させたと推定しています。第5次評価報告書(AR5)では、過去132年間に世界の平均気温が0.85℃上昇としていましたが、「最新情報では地球温暖化により、産業革命前に比べて気温が約1℃上昇した」と伝えることもできます。
さらに、1.5℃特別報告書では、近年にみられる度合いで続けば、2030年から2052年の間に気温上昇が1.5℃に達する可能性が高いとしています。AR5でもここ数年のCO2排出が続くと、2℃上昇までにあと30年で到達としており、これを踏襲するような内容といえます。 
また、現在までの人為的な温室効果ガス排出による地球温暖化は、数百年から数千年にわたって持続し、これに起因する海面上昇などの長期的変化(影響)も継続するとみられます。

図1 気温上昇の違いによるリスク比較
(出典)IPCC「GLOBAL WARMING OF 1.5°C(Summary for Policymakers)」

2)予測される気候変動、潜在的な影響および関連するリスク

1.5℃上昇した場合の影響を、2℃上昇した場合と比較しつつ、リスクの大きさなどを科学的に評価しています。ほとんどの地域における平均気温の上昇、人間が居住するほとんどの地域の極端な高温の発生頻度は、上昇する気温によって異なるほか、いくつかの地域における激しい雨、干ばつや少雨の確率の発生頻度も異なると予測しています。
また、1.5℃上昇の場合、2100年までの海面上昇は、2℃上昇と比べて10センチ低くなるとみられており、1.5℃上昇のほうが当然、影響は低くなります。しかしながら、生態系や健康、水供給など気候関連リスクは1.5℃上昇でも増大し、2℃上昇ではさらにリスクが増大すると予測されています。

図2 世界平均気温と1.5℃上昇の経路
(出典)IPCC「GLOBAL WARMING OF 1.5°C(Summary for Policymakers)」

3)1.5℃の地球温暖化に整合する排出経路とシステムの移行

1.5℃特別報告書では、産業革命前に比べて、気温上昇を1.5℃に抑えるために、世界全体の人為的なCO2の正味排出量を、2030年までに2010年に比べ約45%削減し、2050年前後に正味ゼロにする必要があることを示唆しています。また、2℃上昇に抑えるモデル経路においても、2030年までに約20%削減、2075年前後に正味ゼロにする必要があります。
そのためには、エネルギーや都市、交通と建物を含むインフラや産業システムでの急速かつ広範囲に及ぶ、大幅な排出削減への移行が必要になり、すなわち、早急に脱炭素社会を目指す必要があることを意味しています。コミュニケーターとして、この危機感を多くの国民に正しく伝える必要があるのではないかと思います。

4)世界全体による対応の強化
1.5℃特別報告書では、パリ協定の下で提出された国別目標では、たとえ2030年以降の排出削減規模を大幅に引き上げたとしても、地球温暖化を1.5℃に抑えることはない、すなわち、早くかつ大規模な対応を取らなければ、1.5℃上昇で抑えることができないことを意味しています。
また、1.5℃に抑える緩和策は、SDGs(持続可能な開発目標)に対して、負の影響もありますが、相乗効果も数多くあるとしています。また、SDGsの取組は1.5℃上昇に抑えることに寄与する社会およびシステムの移行と変革を支援することにもなります。

最後に、昨年(2018年)の夏、日本でも40℃以上が相次ぎ、「災害級の暑さ」に見舞われました。さらに、西日本豪雨(平成30年7月豪雨)といわれる大雨にも見舞われ、甚大な気象災害となりました。記録的な暑さや記録的な豪雨には地球温暖化が関係していると考えられており、身近な問題として地球温暖化を実感することが多くなっています。そこで、防災や地球温暖化、さらにはSDGs(持続可能な開発目標)まで関連づけた幅広い視点で、地球温暖化防止コミュニケーターとして伝えていくことが大切ではないかと思います。


【参考資料】
・ 環境省(2018)「1.5℃特別報告書 政策決定者向け要約(SPM)の概要」(https://www.env.go.jp/press/files/jp/110087.pdf)
・ 社会環境システム研究センター 地域環境影響評価研究室長 肱岡靖明(2019)「1.5°C特別報告書のポイントと報告内容が示唆するもの」
(http://www.cger.nies.go.jp/cgernews/201901/337002.html)
・ IPCC(2018) Global Warming of 1.5℃(Summary for Policymakers)
(https://www.ipcc.ch/site/assets/uploads/sites/2/2018/07/SR15_SPM_version_stand_alone_LR.pdf)
・ 気象庁(2018)「平成30年7月豪雨」及び7月中旬以降の記録的な高温の特徴と要因について」
(https://www.jma.go.jp/jma/press/1808/10c/h30goukouon20180810.pdf)

岩谷 忠幸(いわや ただゆき)
地球温暖化防止エキスパートコミュニケーター・トレーナー
NPO法人気象キャスターネットワーク副代表/気象予報士/防災士

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