みんなでおうち快適化チャレンジTOP  記事一覧  ZEH(ゼッチ)マンション増加中。入居して初めて気づいた快適性とエコな未来
2021.02.05

ZEH(ゼッチ)マンション増加中。
入居して初めて気づいた快適性とエコな未来

2018年度から集合住宅も補助金制度の支援対象となり、ZEHマンションの普及が進んでいます。私たちにとって身近なものになりつつありますが、まだ「ZEHマンションって何?」という声も多く、あまり知られていない状況です。冬暖かくて夏涼しい、省エネで光熱費も削減できるというZEHマンションですが、その気になる住み心地は? 本当に省エネにつながるの? ZEHマンションの現状と、実際に住んでいる人の声を聞いてみました。

ZEHの2つの柱「省エネ」と「創エネ」

ZEH(ゼッチ)とは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略。住宅の断熱性能を高め、エネルギー効率の高い設備の導入で「省エネ」を図り、太陽光発電などで生み出す「創エネ」でエネルギー収支を「ゼロ以下」にする住宅のことです。近年では、戸建住宅だけでなく集合住宅でもZEHが増えつつあります。

まず知っておきたいのは、ZEHの集合住宅には省エネ率などによって種別があるということ。創エネを加えて100%以上の省エネ率を実現する『ZEH-M(ゼッチ・マンション)』から、創エネの導入を条件にしていない『ZEH-M Oriented(ゼッチ・マンション オリエンテッド)』まで4つに分かれます。これは、高層マンションになるほど住戸数に対して太陽光パネルの設置が不足することから勘案された定義です。

ZEHの集合住宅は、省エネ率などにより種別が4つに分かれています。
※出典:「ZEHの普及促進に向けた政策動向と令和2年度の関連予算案(令和2年3月)」

実際には、どのようにしてマンションをZEH化するのでしょうか。
「省エネにおいて、給湯と冷暖房のエネルギーを削減すると大きなインパクトが得られます」と話すのは、分譲住宅開発事業を手掛ける大京および穴吹工務店の広報を担う、オリックス株式会社グループ広報・渉外部の小野誠さんです。
具体的には、高効率のエアコンや省エネ性の高い給湯器「エネファーム」や「エコキュート」を設置して消費エネルギーを削減しているそうです。
「合わせて外壁や屋根、床や天井を高性能な素材にして断熱性を高めます。窓ガラスやサッシの断熱性を高めることも重要です」(小野さん)

『ZEH-M』は、太陽光発電などによる創エネによって省エネ率を高める仕様になっています。
※出典:積水ハウス

さらに、創エネによって省エネ率100%を満たす『ZEH-M』ではどうでしょうか。
「『ZEH-M』は、太陽光発電などの創エネがポイントになります」と話すのは、積水ハウス株式会社の環境推進部、木戸一成さんです。同社は、日本で初めて『ZEH-M』の基準を満たした分譲マンションをつくるなど、ZEH住宅建築の先駆者的存在です。
各住戸に割り当てた太陽光パネルと燃料電池「エネファーム」を設置し、これらで生み出したエネルギーを“自給自足”するだけでなく、余剰分の電気を売電することによって光熱費を削減できるしくみです。

住んでみて実感!ZEHの快適性と安心感

では、ZEH化された集合住宅の住み心地はどうでしょう。今回は、山梨県と愛知県にお住まいのお二人に、それぞれお聞きしてみました。
「夏は涼しく過ごせますし、冬でも『布団から出たくない』と感じることがありません。とても快適で、家の居心地が良くなりました」と笑顔を見せるのは、山梨県甲府市のZEHマンション(『ZEH-M Oriented』)に住むKさんです。
Kさんは、事前に分譲マンションのマンションギャラリーでZEH住宅を体感。一般的なマンションと比べて「ZEHマンションはさらに快適だ」と感じて現在の住まいを選んだそうです。

広い開口部には、高い断熱性と強度を併せ持つ高性能サッシを採用。冬は暖かく夏は涼しい。冷暖房の効率にも貢献します。

盆地である甲府市は、冬は寒さ、夏は暑さが厳しい気候で知られます。東京から移り住んだというKさんですが、室内の温度はどう感じているのでしょうか。
「体感的にはもちろん、室温も毎日チェックしていますが、外が氷点下でも室温が極端に低くなったり高くなったりすることがないですね。部屋や廊下など室内の温度差も少なく、ヒートショックの心配がないのも嬉しいです。住み慣れてしまうと当たり前になっていますが、朝起きたときに寒さへのストレスを感じません。日々の積み重ねなので健康へのインパクトは大きいと思います」(Kさん)

愛知県名古屋市のZEHマンション(『ZEH-M』)に住むMさんも、快適さを実感されていました。これまでお子さんの成長に合わせて数年おきにマンションの住み替えをしてきたMさん。現在の住まいも立地などを条件に選んだところ、結果的にZEHマンションになったそうです。
「正直、省エネや創エネに対する関心はあまり高くなくて、ZEHであることは『付加価値はあるな』という程度にしか感じていませんでした。実際に住んでみると、一年を通してとても快適に過ごせています。コロナ禍で家にいる時間が増えて、改めてZEHの快適さを実感しました。家族も引っ越しておいてよかったねと喜んでいます」(Mさん)

Mさんの住まいは、太陽光パネルに加えて燃料電池「エネファーム」を備えているため、停電時にもガスが止まっていなければ電気が使えるのは、心強いポイントだそう。
「日本各地で災害が発生していますが、万が一の時にも電力の供給が止まらないので、インフラに対する安心感が大きいです。快適だけでなく安心です」(Mさん)

Mさんが住む集合住宅に設置された太陽光パネル。ベランダから太陽光パネルが見えます。

もはや太陽光パネルも身近な存在になっているようです。
「うちは最上階なので、ベランダ横のスペースに設置された太陽光パネルが見えます。天気の良い日は、太陽光パネルに日が当たっていると創エネできているなと実感できるんですよ。季節によって違いはあるものの、年間で見ると売電によってかなりのプラスになっています」(Mさん)

はじめてZEHマンションに移り住んだというお二人ですが、「次に引っ越すことがあってもZEHを選びたいです」(Mさん)、「もうZEH以外には住みたくないですね。将来、戸建てに住み替えるとしてもZEH住宅にしたいです」(Kさん)と、お二人ともZEHマンションに大満足の様子です。

近い将来、ZEHマンションは当たり前の存在に!?

実際に入居された方々から住み心地の良さについて伺ってきましたが、果たして今後、ZEHマンションは、私たちにとってより身近なものになっていくのでしょうか。

「現状、マンション市場におけるZEHの割合は高いとは言えませんが、それは伸びしろがあるということです。現在、超高層のマンション(『ZEH-M Oriented』)の建設も進んでいます。将来的にスタンダードになる可能性はあると思います。まずはZEHが「新築」「駅近」のようにお部屋探しの選択肢になるよう、マーケットを創っていきたいと思います」(木戸さん)

そのためにはまだ、社会的な認知度不足や、低コスト化を図るための技術革新など、課題も残されていますが、
「家で過ごす時間が増えている今、住まいの基本的な性能の重要性を見つめ直す時を迎えているのだと思います。また、今後はさらに、できる限り環境を壊さず、かつ資源を使いすぎないような住まいが求められると思います」(小野さん)

もっとも居心地が良い場所でありたい我が家が地球環境にやさしい存在であるためにも、家族の健康と快適な暮らしのためにも、分譲でも賃貸でもZEHが住み替えの優先条件になる未来は、案外近いかもしれません。

株式会社大京/株式会社穴吹工務店(オリックス株式会社グループ)

オリックスグループで住宅開発事業を手掛ける大京および穴吹工務店は、国の「エネルギー基本計画」に示された目標の実現に向け、『ZEH-M』の基準を満たすマンション開発事業を推進している。
https://www.orix.co.jp/grp/

積水ハウス株式会社

新築戸建住宅の87%がZEH(2019年度実績)。戸建住宅で培ったノウハウを生かし、賃貸住宅や分譲マンションにおいてもZEHを推進している。
https://www.sekisuihouse.co.jp/