“お風呂博士”に聞きました!
体があたたまり、元気に冬を過ごせる入浴法とは?

自宅で体をあたためるには、やっぱりお風呂が一番!忙しいとシャワーだけで済ませがちですが、ゆっくりと湯ぶねに入ると、体があたたまるだけでなく、リラックスできたり、ぐっすり眠れたり、さまざまな効能が期待できます。温泉入浴指導員・睡眠改善インストラクターなどの資格を持つ、株式会社バスクリンの“お風呂博士”石川泰弘さんに、お風呂のメリットや効果的な入浴法などについて、教えていただきました。

以下、株式会社バスクリンの石川泰弘さんにお話を伺いました。


お風呂が体をあたためる理由は、
「温熱」「水圧」「浮力」にあり!

お風呂に入ると、なぜ体があたたまるのでしょうか?これは、入浴が体に与える3つの作用が影響しています。
ひとつめの作用は、「温熱」です。温かいお湯に入ると、血管が薄くなり、やわらかくなります。すると血液が通る道が広くなり、血流が良くなるのです。人間の体温を調節しているのは血液なので、血液の流れが促進されることにより、体があたたまります。
2つめの作用は、「水圧」です。水による圧力でおなかが押されると、肺の横隔膜が上がります。人間には元の状態に戻そうとする“恒常性”と呼ばれる働きがあるので、元に戻そうと酸素を取り入れて肺を大きくしようとします。すると自然と呼吸数が増え、心肺機能が高まってさらに血流が良くなります。また、足や下半身も圧力で押され、ポンプのように下から上へと血液が押し戻され、心臓の動きが活発になることも、血流が良くなる要因になります。
3つめの作用は、「浮力」です。筋肉や関節がゆるみ、リラックスできます。リラックスすると自律神経が整えられ、末端の手足の先まで血液が流れやすくなります。
これらの3つの作用の相乗効果で、血液の流れを促進し、体をしっかりあたためることができます。




入浴することで、
睡眠の質もアップ!

入浴で血流が改善することにより、冷え予防、肩こりや腰痛の緩和、ストレス解消などが期待できますが、血液は栄養、酸素、ホルモン、免疫成分など体に必要なものを運ぶ働きもあるので、体が強くなり、風邪などをひきにくくなります。また、体温が上がることで、免疫細胞が活発になること、傷んだ細胞を修復する働きを持つタンパク質「ヒートショックプロテイン(HSP)」を増やすことも期待できますね。
もうひとつ、入浴の見逃せないメリットが、ぐっすり眠れること。人間は体温が下がる時に眠くなる性質があります。赤ちゃんが眠そうにしている時、体があたたかくなっていますが、これは熱を放出して体温を下げているためです。
入浴すると体温は上がりますが、血管が拡張しているため返って熱放散し、スムーズに体温を下げることができます。入浴直後はまだまだ体温は高いのですが、入浴後1時間半〜2時間ほど経ち、体温が下がったタイミングで布団に入ると、人間が本来持つ眠りのリズムに合わせて、深い眠りにつくことができます。眠りが深いと、翌日の目覚めが違うことは、多くの方が経験済だと思います。良質な睡眠は、疲れを取り、翌日の活力につながります!




体をあたためるには、
「ゆっくりぬるめのお風呂に入る」が効果的!

効果的な入浴のためには、お風呂の温度とつかっている時間が大切です。「サッと熱いお風呂に入る」ではなく、「ゆっくりぬるめのお風呂に入る」ことをおすすめします。具体的には、個人差はありますが39〜40℃のお風呂に10~15分ほど入ると良いでしょう。
なぜじっくり入るのが良いかと言うと、まず体の内側まであたたまるには時間がかかるからです。体の表面があたたまるには5分、筋肉は10分程度が目安です。
また、血液が体内をひと巡りするには、1分ほどかかると言われています。15分入れば15周、あたたかいお風呂で血管が開いた状態で血液を循環させることができます。毛細血管までしっかり血液を届けてあげましょう。
39℃のお湯で15分入った場合と、42℃のお湯で3分入った場合の体温の様子をサーモグラフィで見ると、39℃は体温の上昇はゆるやかですが、冷めにくく、特に心臓から遠い足元のあたたかさが続いています。逆に42℃は、上がった後に体温がぐっと下がって、足元も冷えてしまっています。ポカポカしたあたたかさをキープしたいなら、この実験結果からもわかるように、ぬるめのお風呂にじっくり入るのがおすすめです。


※出典:株式会社バスクリン

ただし、入浴するときには、いくつか注意事項があります。まず、お風呂に入る前に水分補給をしてください。特に冬はのどの渇きを感じにくく、隠れ脱水状態になっている人もいます。そんな状態でお風呂で汗をかくと、脱水症状のリスクがとても高くなります。体内の水分が少ないと、血液の循環が悪くなり入浴事故のリスクも高まりますので、冬でもこまめな水分補給を心がけましょう。
体をあたためるという意味では、温熱、水圧、浮力の効果を全身で感じられる全身浴が良いのですが、水圧は心臓に負担がかかるので、それを避けたい時は半身浴がおすすめです。お風呂に入れない時は、手浴、足浴などの部分浴も体をあたためる効果があります。早くあたたまるのは手浴なので、体が冷え切ってすぐにあたたまりたい時は、まずは手浴をするとホッとひと息つけます。


バラエティに富んだお風呂がある銭湯で
楽しみながらあたたまろう。

最近は銭湯も進化してきて、バラエティ豊かなお風呂を備えたスーパー銭湯や日帰り温泉施設などが人気です。銭湯の良いところは、自宅のお風呂よりも広さ、深さがあり、水圧と浮力の恩恵を存分に受けられること。銭湯で手足をグーッと伸ばして入浴すると、最高にリラックスできる!と感じている方は多いのではないでしょうか。
銭湯はサウナと水風呂があることも多いですね。サウナには温熱効果はありますが、入浴と違って水圧と浮力の効果がありません。お湯につかっているので実感はありませんが、入浴でもしっかり発汗しているので、リラックスや血行促進が目的なら入浴をおすすめします。ただ、サウナは心臓に負担がかからないので、長い時間ゆっくりあたたまりたい場合は向いているかもしれませんね。
水風呂と温かいお風呂に交互に入る交代浴は、表面の血管が冷たい水で収縮し、お湯で広がることを繰り返すので、血液の流れが良くなり冷え症に良いと言われています。最近流行りの炭酸泉は、お湯に溶け込んだ炭酸ガス、つまりCO2が血管に入り込むことで、CO2を体外に出そうとする代謝機能が働きます。そのため、血行が良くなります。ぷちぷちした炭酸は肌についても効果はないので、こまめにはらってください。
銭湯はいろいろなお風呂があり、結果的にゆっくり、長く入ることになります。「ウォームシェア」にもつながりますし、楽しみながら入浴の効果を感じてくださいね。

入浴すると、体があたたまって体温が上がり、過度な暖房を使う必要がなくなります。それだけでなく、ストレスが解消したり、体が丈夫になったり、ぐっすり眠れて疲れが取れたり、良いことがいっぱいです。今回ご紹介した効果的な入浴法で「WARM BIZ」を実践して、快適な日々を過ごしてください!



<プロフィール>
石川泰弘(いしかわ やすひろ)
株式会社バスクリン 広報 博士(スポーツ健康科学)
温泉入浴指導員、睡眠改善インストラクター の資格を持ち、現在、「お風呂博士」としてTV・雑誌・Web・ラジオなど多くのメディアでPR活動を行う傍ら、全国各地で温泉や入浴、睡眠に関する講演を実施し、講演数は382回(2019年3月末現在)にも及ぶ。

著書: 「バスクリン社員が教える究極の入浴術 お風呂の達人」、「たった一晩で疲れをリセットする睡眠術」など多数
和田由貴先生



「ウォームビズ」とは

環境省は暖房時の室温を20℃で快適に過ごすライフスタイル「WARM BIZ」を推進しています。
「20℃」は目安です。暖房の適切な使用をお願いします。
(身近に温度計を置くことをおすすめします。)
◆ウェブサイトはこちらから
https://ondankataisaku.env.go.jp/decokatsu/warmbiz/


「COOL CHOICE(=賢い選択)」にご賛同ください。

「COOL CHOICE」は、CO2などの温室効果ガスの排出量削減のために、低炭素型の製品・サービス・ライフスタイルを賢く選択していこうという取り組みです。
クールビズも「COOL CHOICE」の一つです。
未来の地球のために、「COOL CHOICE」に賛同して、できることから始めてみませんか?
◆ご賛同はこちらから
https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/join.html


みんなで集まる!「ウォームシェア」
余分な暖房を止めて、みんなでひとつの部屋、場所に集まることでエネルギーを節約するのが「ウォームシェア」。
たとえば、個別の部屋の暖房は止めて街へ出かけて、図書館や博物館、児童館などの公共施設、レクリエーション施設などを利用すれば、全体としてエネルギーの使用量を抑えることができます。
詳しくは「ウォームシェアについて」のページをご覧ください。
WARM SHARE 『ご存じですか?ウォームシェア』