いま、全国の自治体や団体などで、街路灯や防犯灯のLED化が進んでいます。
当サイトでも、北海道白糠町の街路灯・防犯灯LED化事業を取り上げました。
今回は、静岡県東伊豆町で、あかりの魅力や特性をまちづくりに活かす社会実験が行われていると聞き、あかり記者hirocoが現地を取材、2回にわたりレポートをお届けします。
静岡県東伊豆町は、温暖な気候に恵まれた伊豆半島東海岸の中央に位置し、人口は約1万3千人。豊かな温泉が湧出する大川・北川・熱川・片瀬・白田・稲取の6つの温泉郷を擁しています。
また、みかんやわさびなどの農産物、金目鯛や伊勢えびなどの海産物、日々彩りを変える山々など、自然の恵みにもあふれています。
伊豆半島の東海岸、伊東と下田の間を走る伊豆急行の「伊豆熱川駅」に降り立ったとき、まず目に入ったのは、町の象徴という「温泉やぐら」からあふれ出てくる湯けむりでした。
熱川温泉では、駅前だけでなく各所に「温泉やぐら」が林立し、もうもうと湯けむりをあげています。とても幻想的で町の雰囲気づくりにひと役買っているのですが、日が暮れてくるとそれがまた顕著に。というのも、「温泉やぐら」が、その内側を照らすようにライトアップされていたからです。
東伊豆町のあかり実験(※)は、同町の熱川・稲取両地区の一部で、今年(2016年)の夏からはじまりました。
もともと住民から防犯・防災の観点から夜間照明を見直してほしいという要望がありました。また熱川地区では、自治会ごとに電気料金を住民が負担していて、その費用が年々上がっていることもあり、自治会や観光協会での協議の結果、全面LED化を検討しつつ、省エネタイプの電球形LEDランプの防犯灯などを設置して、今回のあかり実験を行うことになったそうです。
(※)東伊豆町のあかり実験は、同町のライトアップイベント『夢あかり2016』の一環として、工学院大学 西森研究室、東京都市大学 小林研究室、ぼんぼり光環境計画の協力のもとで行われました。
今回のあかり実験の特徴について、同実験の設計者である照明家の角舘まさひでさんに現地でお話を伺ったのですが、まずは地元の方々や観光客が夜に出歩くとき、行き先を照らし危険も察知でき安心できる道標となるあかりを設置しようと考えたそうです。
そこで道路上や空き地などの暗くなる部分がなくなるよう、既存の街路灯の代わりに空間や間隔に応じて、消費電力の少ない電球形LEDランプを使った、ノスタルジーな雰囲気の傘付き防犯灯などを設置したのです。
国民宿舎 伊豆熱川荘前の道などは、あかりがぽつんぽつんと点在していて、道先を案内してくれているような印象でした。どれも小さなあかりですが、とても心が和みました。
「温泉やぐら」のライトアップも、煌々と照らすスタイルではありません。小さな照明器具をいくつか使用してライトアップを行っているのですが、これは防犯上、暗い路地をつくらないためでもあり、夜間に地震が起こった場合には、避難経路の道標としての役割もあるそうです。
防犯灯も「温泉やぐら」も、街歩きするには十分の明るさに感じました。実は防犯灯は、すれ違いざまに相手の顔が見える明るさを意識して設置してあるのだそうです。
その為、電球形LEDランプの明るさも3ワット級の100lm(ルーメン)に抑えることができたとのこと。それでも十分明るく感じますし、既存の照明設備に比べると、ずいぶんと省エネに!
今回の実験に限っていえば、伊豆熱川駅前の空間において、既存の水銀灯と比べると電気代は約1/8になるそうです。
あかり実験は、防犯・防災と省エネが当初の目的でしたが、実験に使用されたオレンジ色のあかりは、情緒あふれる街並みを醸し出すことになりました。
夜間の歩行者の不安を減らすための道標となる小さなあかりは、今後、伝統ある温泉郷、熱川のイメージアップにもつながっていくのではないでしょうか。
熱川地区から車で10分程の稲取漁港でも、あかりによるまちおこしの実験が同時期に行われていました。
この付近の防犯灯の中で蛍光灯照明器具20灯を消灯して、消費電力が約10ワットのLED照明器具を配置したとのこと。これでこの付近の消費電力は約1/2以下になると計算しています。また、商店街の水銀灯26灯を消灯して、消費電力が約10ワットの電球形LEDランプを配置した場合、約1/10以下の省エネになると地元では期待しています。
そして、あかりを電球色に統一したことで、高台から見下ろす夜景は、どこか外国の港町にいるような異国情緒すら感じました。
この地区では、より防災を意識してあかりを設置。実は稲取漁港は地震発生時に津波の心配があります。そこで、夜間でも高台にある神社の方へスムーズに避難できるよう、あかりを設置したそうです。
稲取漁港側から神社へと向かう道すがら、曲がり角には神社方向に向けた街路灯があり、足元には小さなあかりが道標となるように点在していました。また、境内へ向かう階段の手すりにも照明が設置されていました。それらのあかりには、そこに神社がある、避難できる、という安心感があると思います。
また、稲取漁港にある防波堤や漁協のセリ場にも、転落防止のため海との境目をわかりやすく示す照明を設置しています。
防犯・防災と省エネが目的でしたが、ここ稲取でも、ほのかなあかりによってノスタルジーな雰囲気を醸し出していました。漁港周辺だけでなく商店街の街路灯もLED照明を導入される予定とのことですので、さらに街全体に統一感が出るのだろうと思います。
あかりの設置方法や工夫で、防犯・防災に効果が表れるだけでなく、街のイメージアップにつながり、さらに省エネで大幅なコストの削減にもなる。一石二鳥、いや一石三鳥くらいの〝あかりによるまちづくり”でした。
次回は、あかり実験に携わる東伊豆町のみなさんにお話を伺います。
街路灯・防犯灯は、夜間に長時間点灯するという特徴から、従来の水銀灯や蛍光灯からCO₂の排出量を大幅に削減できるLED照明へ置き換えることのCO₂削減効果が非常に大きいと考えられます。
地球温暖化対策としても効果的な防犯灯・街路灯のLED化について、あなたが住む地域の取組みについても、一度、確認されてはいかがでしょうか。