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オフィスビルの照明のLED化は、初期投資などの費用負担が大きいことなどから、なかなか進まないのが現状です。
そんな中、2012年という早い時期に「大改造!! 劇的ビフォーアフター」にも登場し、“癒し空間のアーティスト”としてテレビや講演でも活躍中の建築士・照明コンサルタントの江口惠津子さんが手掛けたオフィスがあります。
リフォームのプロ達が選んだ全面LED化の効果と、照明を活用した快適なオフィスづくりのポイントをお聞きしました。

エリアで照明を変え、働きやすくおしゃれなオフィスを創出


オフィスの入り口から見た様子

オフィスがあるのは、東京・六本木の9階建てビルの7階。
オフィスのドアを開けると、左側には花が飾られた白いつい立てが置かれ、右側には新たに壁を建ててつくったコーナーがあります。

「白いつい立てから左側が社員の皆さんが働く制作エリア、右側が会議室や社長室などがある接客エリアです。
制作エリアの天井の照明のラインを断ち切るようにして接客エリアの入り口をつくることで、エリアの切り替え感を明確にしています」と説明してくれたのは、リフォームを担当した建築士・照明コンサルタントの江口恵津子さんです。


建築士・照明コンサルタントの江口惠津子さん

照明はもちろんすべてLED照明。2つのタイプの照明を、エリアによって使い分けているそうです。

「制作エリアの照明には、大きくて部屋全体を明るく照らす直管形のライトが合います。リフォーム前の照明設備をそのまま生かし、蛍光灯を直管形LEDライトに取り替えました。自然な白っぽい光の〝昼白色〟の照明です。
一方、接客エリアにはお客様をお迎えする場や社員達がくつろぐ場所もあります。そこで、天井と同じ板材で既存の照明設備を埋め込み、新たにLEDダウンライトを取り付けました。オレンジがかった色の〝電球色〟にして、エリアで雰囲気を変えています」

制作エリアは昼白色の直管形LEDライト
接客エリアにある会議室は電球色のダウンライト

昼白色はいきいきした雰囲気をつくるので、人が活動するエリアに向いています。赤みがかった電球色は落ち着いた雰囲気になり、リラックスした空間をつくり出すとのことです。このように、エリアや目的によって光の色を使い分けることも、オフィス環境を整える際には効果的です。
なお、用途に合わせて光の色を調節する機能を「調色」といい、LED照明器具の種類によってはリモコンひとつで調色の操作ができるものもあり、より手軽に好みの光の色を演出できるようにもなってきています。

「照明はオフィスの雰囲気づくりに、とても大きく影響するんですよ」と江口さんは言います。
「光の色だけでなく、照明器具の種類によってもさまざまな効果が生まれます。とくにダウンライトは、当てる角度を狭くしてスポットライト的に使ったり、広角にして全体をやわらかく照らしたり、間接照明のように壁に当てたりいろいろな使い方ができるので効果的です」

このオフィスでもリースや白い椅子にLEDダウンライトを当てて、さりげない演出がされています。壁にユニークな形の椅子の影が映し出されたり、リースの鮮やかな色を浮かび上がるなど、印象的なコーナーになっています。

「オフィスの雰囲気は、照明にこだわったり、質とデザインがいいものをさりげなく置くことでグレードアップします。そして、逆に仕事とは関係がないものが何故か置かれていたりすることがすごく大切。そうした空間が働く方の心に余裕を生み、仕事の効率を上げることにもつながるんです」(江口さん)


オフィス入り口の壁

数年先の未来を考えたとき、LEDの選択が当然だった

オフィスの全面LED化への切り替えは、タイミングも悩むところです。この会社の場合は、オフィスの移転と社員の声がきっかけでした。
移転前に社員達と〝照明をLEDにするべきかどうか〟を話し合ったところ、皆が「先のことを考えたら切り替えるのが当然だ」という意見だったそうです。そのとき、新しいオフィスは全面LEDにすることが決まりました。

しかし賃貸オフィスの場合、照明器具本体はテナントのものではなく、オーナーの資産であることがほとんど。LED化の初期投資はオーナーが負担することになるため、テナント側がLEDにしたくてもできないことが多くあります。
また、仮にテナント側の負担でLED化をしたとしても、移転の時には原状回復工事をしなければならないなど、オーナーとテナント側での意見や希望の食い違いが多く、照明をLED化すれば大幅に省エネ&節約ができると知っていてもなかなか進まないのが現状です。

この会社の場合は、会社側からビルオーナーに、全面LED化したい旨とリフォームプランを伝えました。ビルオーナーも時代がLED化の流れになっていることを強く感じられていた時期だったようで、LED化に協力的でスムーズに受け入れられたそうです。
とはいえ、直管形LED照明への取り替えや、ダウンライトを新たに設置するなど全面LED化にかかる工事費用は、話し合いの結果この会社が負担しました。

「LED化すると決めた後でしたから、最初の段階で工事費用がかかることになっても迷いはありませんでした。
オフィスを移転した後は少なくとも10年くらいは動かないつもりでいました。そう考えたとき、たとえ初期費用がかかっても、オフィス環境を整えて社員のモチベーションを上げ、仕事の効率アップを図ることは必要な投資だと考えたんです。全面LED化することで、長い目で見たらずっと経済的になりますから、決して損ではない投資だと思いました。リフォームから5年たちますが、照明が切れて取り替えたことはまだありません。長寿命なのもLEDだからこそ。煩雑な取り替えの手間が減って、何より社員達が喜んでいます」とこの会社の社長は語ります。

実際、オフィスの照明の消費電力を試算してみると、以下のように、LEDにしたことで蛍光灯のときよりも50%近く減少。思っていた以上に大きな省エネ&節約効果が上がっていることがわかりました。

現在、世の中のLED化への流れは加速しています。LED化に関心が高いビルオーナーが増えており、既設の照明設備を活かして使えるLED照明器具が多く開発されるなど、初期費用を軽減する方法も増えています。また、LED照明をリースで取り入れるなどのさまざまなサービスも登場しています。
まずは、ビルオーナーとテナント側の双方で話し合うことが、互いが納得のいくLED化の方法を見つける近道になるのかもしれません。

昨今、CSR報告がさかんであることからわかるように、省エネは社会貢献上、会社が取り組むべき課題の1つになっています。同時に、働きやすいオフィス空間を実現することで生産性の向上につなげることも、会社にとって重要なテーマです。

一方、光熱費削減の効果は最も明確に把握できるメリットであり、ビルオーナーにとっては重要な事業コスト削減要素です。さらに、設備の性能が向上することはビルの訴求力、ブランド力を高めることにもつながり、入居希望が増える要因にもなると思います。

時代の要請を取り入れたこのような取り組みが、会社側、ビルオーナー側双方、これからさらに求められていくでしょう。

取材協力:株式会社ジャンプコーポレーション

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