気候変動が深刻化している昨今、それに起因する甚大な災害が増加しており、レジリエンスの強化が地域づくりの課題の一つとなっています。自然災害などによる停電に強い家と電気代の削減を同時実現する手法として現在鹿児島県で提供されている「初期費用0円で太陽光発電システムと蓄電池が設置できる新しい電気料金プラン」について、エクソルの楠田大祐さん、おおすみ半島スマートエネルギーの村上博紀さんに聞きました。
- 楠田 大祐(くすだ だいすけ)
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株式会社エクソル 経営企画本部 経営管理部 部長。2010年11月、東京の営業職として入社。札幌・名古屋・大阪の責任者を経験した後、企画部門に異動し、19年6月から経営管理部長を務める。
- 村上 博紀(むらかみ ひろき)
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おおすみ半島スマートエネルギー株式会社 代表取締役。2017年4月に入社、19年から現職。同社の運営はもとより、鹿児島県大隅半島の肝付町や、同半島全体の地方創生に取り組む。
お得な電気料金プランで自家消費システムを普及 災害レジリエンス強化も
鹿児島県本土の東南部に位置する肝付町が出資する自治体新電力、おおすみ半島スマートエネルギーとエクソルは協働で、県内の住宅における再エネの導入拡大を目指して、太陽光発電システムと蓄電池を初期費用0円で設置できる電気料金プラン、「Re・リーフ」プランの普及を図っています。
既存の電気契約を同プランに切り替えると、太陽光発電システムと蓄電池を初期費用0円で設置することが可能、月間電気使用量の上限は400kWhで、上限まではどれだけ電気を使っても月額9,850円(税込)の定額制。契約期間の10年間は自治体新電力が太陽光発電設備を所有・管理し、発電した電気を契約者に供給、電気の使用料を徴収する仕組みです。
同プランで設置した太陽光発電システムと蓄電池は契約から10年後に契約者に無償で譲渡されるため、以降は電気料金を通常の半分以下に抑えることが可能となります。また、台風の上陸数が多い鹿児島県では停電が多発、数日間続くようなケースも珍しくありません。太陽光発電システムだけでなく蓄電池もあれば、停電時でも天候や時間帯を問わず電気の利用が可能になり、安心・安全を確保することができます。
地域ビルダーと連携し、認知度の向上を図る
現在は地域ビルダーとの連携により、新築住宅の購入や既築住宅のリフォームを検討している家庭を対象に、経済性でのメリットを第一に、レジリエンス強化にもつながる電気料金プランとして案内。県内を中心に、認知度の向上を図っています。
比較的小規模な組織であることが多い自治体新電力ですが、このように太陽光発電の総合企業や地域ビルダーと協働することで、市民にメリットをもたらしながら再エネの普及拡大を促進することができます。また、電力小売業界の競争が激化する中、契約期間中は安定した収益をもたらす同プランは自治体新電力の収益基盤の強化にもつながります。
現在は戸建て住宅をメインとする「Re・リーフ」プランですが、今後は公共施設や事業者へとその裾野を広げ、また他地域への取り組み事例の水平展開により再エネ普及拡大の一翼を担うことが期待されます。