日本や欧州各国は2050年までに温室効果ガス(GHG)をゼロにするカーボンニュートラルの達成を目標に掲げ、一般企業においても脱炭素・ESG対応として再生可能エネルギーの活用が進んでいます。また、一般消費者の中でもサステナビリティへの意識が年々向上し、再生可能エネルギーへの切り替えを検討したり、実際に切り替える人が増えています。そこで、切り替え先の一例として、環境省グッドライフアワード環境大臣賞を受賞した「みんな電力」(株式会社UPDATER)にフォーカスして、特徴や切り替えのポイント、利用者の声などを紹介します。
全国600か所の発電所から100%の再生可能エネルギーを提供
みんな電力は、日本各地の大小様々な再生可能エネルギーの発電所600か所(2021年7月現在)と契約し、法人および一般家庭向けに再エネ電力を提供する再生可能エネルギー事業会社です。
企業だけでなく、一般家庭でもどこから電気を買うのかが関心事となっている中、みんな電力では「顔の見える電力™」をキャッチコピーに、法人向けにはブロックチェーンを使用した電力トラッキングを運用して、払った電気料金がどこに行くのかを明確化。一般家庭向けには、応援したい発電所を指定して、電気料金の一部から“応援金”を支払うサービスで、電力の生産者と消費者をつないでいます。
再エネ電力の利用に大がかりな設備は一切不要、申し込みは約5分で完了
再生可能エネルギーを自宅で使うとなると、ソーラーパネルを設置したり、専用の電線を引いたりする必要があると考える人もいるかもしれませんが、みんな電力との契約に大がかりな設備は一切不要です。
発電所で発電された電気は、たくさんの電気を送る送電線に集められてから各家庭に届くため、応援した発電所で発電した電気そのものが届くわけではありません。みんな電力では、全国の再生可能エネルギー発電所と直接契約をして、利用者に必要な電力を調達しています。みんな電力を通して、電気料金が契約発電所に届くお金の流れをつくることで、利用者に100%の再生可能エネルギーを提供しているのです。
実際の契約で必要になるのは、利用している電力会社の「電気ご使用量のお知らせ(検針票)」と「支払い用のクレジットカード」の2点のみ。申し込みはウェブサイト上から行い、約5分で完了します。
また、「再生可能エネルギーは高いのでは?」「急に値上がりしたりするのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、みんな電力の新料金プラン「みんなのプラン」では、大手電力会社の従来プランよりも安く、しかも電力市場に左右されない安定した価格を実現しています。
再エネ電力の供給、その安定性は通常の電力と同じ
みんな電力と契約して、再生可能エネルギーの提供を受けていても、停電のリスクが高まったり、復旧が後回しになることはありません。電力事業は、発電、送配電、小売りで事業者が分かれていて、送配電は共通のインフラとして位置づけられているので、みんな電力と契約しても、送配電業者は変更されないのです。
たとえば、東京電力エリアでは、東京電力パワーグリットが送配電を管理しており、停電した際の復旧作業などは、どこの小売事業者と契約しているかに関わらず、東京電力パワーグリッド(送配電事業者)が公平に作業を行います。
電気を使うだけじゃない。アーティストからも再エネ電気が買える
みんな電力では、これまでの電力会社にはないユニークな取り組みも実施していて、ただ電気を使うだけでなく、楽しみながら再エネを使うことができます。
そうした取り組みの一つが、再エネを通じてアーティストとファンがつながれる「アーティスト電力」です。第1弾としてスタートした「いとうせいこう発電所」は、福島県・二本松市の太陽光発電所でつくられた電気がトレーサビリティ付きで自宅に一部供給されるというもので、契約者は限定ライブなどの特典も楽しめます。いとうせいこう発電所は、定員に達したため受付終了となっていますが、第2弾、第3弾の準備も進んでいるということなので、気になる方はウェブサイト等を確認してみてください。
福島の復興も支援できる「被災地応援でんき」
みんな電力が被災地復興に多数の実績がある一般社団法人LOVE FOR NIPPONと協業して提供しているのが、被災地を応援できるプラン「被災地応援でんき」です。
このプランでは、被災地にある発電所に毎月の電気料金から応援金100円を送り、さらにオンラインやオフラインのイベントなどを通してつながりを持ちながら、被災地を応援できます。その中で、被災地応援でんきに選ばれた発電所は、単に被災した土地に設置された発電所というだけでなく、その運営が被災地の復興支援につながっていることも重要な要素になっています。現在は、コロナ禍の影響で実現できていませんが、今後は被災地応援でんきの契約者を対象に、現地の発電所や被災地を訪れるツアーも検討しているということです。
みんな電力では、次世代を担う子どもたちも対象にした啓蒙活動を展開
みんな電力は、未来の環境・地球に向けた啓蒙活動にも力を入れています。東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故から10年を契機に、福島県の環境再生と未来について考えるイベント「いっしょに考える『福島、その先の環境へ。』シンポジウム外部リンク」では、「被災地応援でんき」に取り組む一般社団法人LOVE FOR NIPPON 代表・CANDLE JUNE氏のレクチャーによる再エネ電気切替デモンストレーションを実施。また、電力を切り替える権限を持っている大人だけでなく、次世代を担う子どもたちへの発信にも注力し、未来を見据えた活動を展開しています。
使うだけじゃない再エネ電力。実は“つくる側”にもなれる
もっと積極的に再生可能エネルギー普及に貢献したいという方は、自ら発電施設を設置して、みんな電力に売電することもできます。実際に、みんな電力の契約発電所の中には、個人所有のところもあるそうです。ちなみに、新規で発電所をつくると、その投資を回収するまでには10数年かかるそうですが、興味のある方はみんな電力に相談してみてください。
再エネ電気の使い心地は? みんな電力を利用している人たちの声
みんな電力が実施したアンケートによると、「みんな電力を選んだ理由は?」という質問に対して、43.8パーセントの人が「電気料金で再エネを応援できるから」、37.7パーセントの人が「再エネ比率(FIT電気比率)が高いから」と回答し、利用者の再エネに対する意識の高さがうかがえます。また、みんな電力への意見としては、
- ・離れていても故郷を応援できるところがよい
- ・オンラインイベントなどで、電気の生産者さんの声をお聞きして身近に感じられるようになった
- ・一度発電ツアーに参加して、対応がすごく良かったのと、生産者の方とお会いして安心できた
- ・毎日必ず使う電気を通して、環境問題にコミットできるという手軽さに価値を感じている
- ・『ちゃんと価値のあるものを適正な価格で買っている』という満足感を感じている
などがあり、生産者とのつながりや、環境に優しい再生可能エネルギーが使用できることに満足感を覚えている人が多いようです。
最後に:未来志向の再エネ電力は、“使ってもらう”ための工夫がおもしろい
将来、電気に困らない社会をつくるために「再エネ for ALL」をかかげ、“顔の見える”電力を提供している「みんな電力」の取り組みは、ユニークなものばかりです。再エネ電力への切り替えでは、再エネの使用率以外にも楽しさや面白さ、生産者とのつながり、社会貢献度など、自分が重視するポイントを見つけながら電力会社選びをしてみるのも良いかもしれません。