再エネの導入は、オフィスビルにテナントとして入居する企業にとっては「どう取り組むべきか分からない」という思いもあるのではないでしょうか。立地にかかわらず脱炭素経営を積極的に推進し、テナントとして入居するオフィスの100%再エネ化を達成したメンバーズの高野明彦さんに、その取り組みについて聞きました。
- 高野 明彦(たかの あきひこ)
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株式会社メンバーズ取締役 兼 専務執行役員。1999年一橋大学経済学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行、新生銀行を経て、2005年メンバーズ入社。2011年10月執行役員、2016年4月常務執行役員、2018年6月に取締役就任。グループ経営及び管理部門担当。働き方改革、東証一部上場など全社的な重要プロジェクトの推進を数多く担う。
J-クレジット活用で再エネ100%を2年前倒しで達成
WebサイトやEC(電子商取引)サイトの企画・運営を柱とするデジタルマーケティング事業を展開するメンバーズは、2020年度の事業活動に伴う電力について、100%再エネ化を達成しました。「再エネ100宣言 RE Action」に加盟し、2022年末までに再エネ100%に転換することを掲げていましたが、その目標を2年前倒しで達成したことになります。
同社はオフィスビルに入居しているため、自社単独での電力契約の切り替えは困難でした。その制約の中で活用したのが、国が認証するJ-クレジット制度です。再エネ由来のJ-クレジットを購入し、カーボン・オフセット(排出されたCO2を他の場所で直接・間接的に吸収すること)によってCO2排出削減に貢献しています。
さらに、CO2排出量の削減に直接的に寄与するため、発電事業を行う100%出資子会社「株式会社メンバーズエナジー」を2020年10月に設立。千葉県長生郡睦沢町に営農型非FIT太陽光発電所「メンバーズソーラー発電所」(設置容量210.38kW)を建設し、今年6月に稼働を開始しました。初年度の発電見込み量は約24.8万kW。同社の事業活動で使用する電力の50%相当分の再エネ発電を行っています。
また、同発電所で発電する再エネを使用したオリジナル電力プランを、自然エネルギー発電事業を行う自然電力株式会社と共同開発し、社員に向けた提供を開始しました。今後は事業活動のみに留まらず、社員の日常生活などにおける再エネ電力への切り替えも支援し、脱炭素型ライフスタイルの実現を後押しします。
経営価値と社会価値の同時実現で持続可能な社会を目指す
昨年には、2030年に向けたビジョンを策定。社会課題解決とデジタルマーケティングを組み合わせることで、社会におけるCSV経営(経営価値と社会価値を同時実現する)手法の浸透を目指しています。マーケティング支援を通じて、まずは企業の価値観を変革し、次に価格・機能からSDGsを重視した選択へと消費者の行動変容を促すことが、持続可能な社会実現への第一歩となります。
社会課題の解決と経済性を両立させながら事業を継続するのは容易ではありませんが、「脱炭素」という大きなテーマに対して、立地や業種にかかわらず、またその分野を本業とせずとも誰もが取り組める手法の確立と共有を目指しています。「環境に悪影響を与えるけれども、利益のためにやむを得ない」という考え方から脱却し、「環境に配慮した行動をすることが結果的に企業や社会の発展につながる」仕組みづくりの一翼を担っていく構えです。