みんなの「再エネ」取組み

再エネを導入された個人、自治体、企業の方に
取材を行い
具体的な導入事例などを
ご紹介させていただきます。

一人の社員の立案が再エネ導入推進の原動力に

大企業はもちろん、中小企業での取り組みも増えている脱炭素経営。ですが、一方でコストやマンパワーの問題などから一歩踏み出せない企業も多いのではないでしょうか。空調メンテナンスを主力事業とするエコ・プランでは、ある疑問を抱いた一人の社員の立案が経営層を動かし、自社拠点における再エネ由来電力の順次導入につながりました。ある疑問とは何だったのでしょうか。疑問をもつだけでなく、自ら行動し、その経験を基に、現在は中小企業向けの脱炭素経営支援なども行う野村裕紀子さんと、その上司の水谷忠宣さんに同取り組みの経緯や苦労した点などについて聞きました。

野村 裕紀子/水谷 忠宣
野村 裕紀子(のむら ゆきこ)・写真左

株式会社エコ・プラン 環境事業本部 ESC事業部 営業推進課 副主任。2007年2月入社、住環境開発課で事務を経験した後、2人目の育休復帰を機に営業推進課に移動。2018年10月からWEBマーケティング事業立上げに参加。自社の脱炭素化の取り組みを進めながら、ホームページに関連コンテンツを掲載。

水谷 忠宣(みずたに ただのぶ)

執行役員。2002年、同社創業時に入社。空調メンテナンス事業に従事し、2009年から省エネコンサルティング事業を立ち上げる。現在、脱炭素及びレジリエンス関連の事業に取り組みながら、東日本を統括する現職を務める。

自分たちにできる小さな一歩から

空調の分解洗浄により、設備の効率化および省エネ促進などを支援しているエコ・プラン。他社の省エネを促進する立場にありながら、自社では脱炭素化に向けて具体的なアクションを取っていないことに疑問を抱いた社員が声を挙げ、まずは「自分たちにできることから」と脱炭素関連コンテンツの配信を始めました。そして、同分野について学べば学ぶほど、再エネ由来電力への切り替えの必要性を感じ、電力小売自由化を契機に自社拠点での切り替えに踏み切りました。

三郷CKテクニカルセンターの太陽光パネル 三郷CKテクニカルセンターの太陽光パネル

2019年6月からみんな電力社、アスエネ社、リコージャパン社と連携し6拠点での順次切り替えを進め、2021年10月現在で12拠点中9拠点において再エネ100%電力を導入。うち、唯一の自社物件である三郷CKテクニカルセンターには、2020年2月に自家消費型太陽光発電システム(太陽光パネル12kW、蓄電池6.5kWh×2台)を設置。2021年8月には、同社全体で使用する電力の59%(2018年比)を再エネ化し、一部の拠点では電気代の削減も同時実現しました。

こうした実績の裏には、その立地条件や中小規模事業者ならではの数々の苦難があったといいます。テナントとして入居している事務所では電力会社と個別契約を結んでいないため、同社が入居するスペースのみの電力使用量を把握する上でも、電力切り替えにおいてもビルオーナーとの交渉が不可欠でした。一方、社内では経営層の説得も大きなハードルの一つに。いかにコストをかけずに自分たちにできることから着手するか、環境と経済(利益)の両立を図れるかが、中小規模事業者にとっては重要な視点となりました。

SBT認定支援で脱炭素の輪を中小企業に

紆余曲折を経て実現した取り組みやその過程をWebサイトで発信することで、社内外への波及効果も生まれています。社内では同じように環境に関心を持つ社員から、さまざまな提案が寄せられるように。一方で、再エネ導入を検討しているクライアントからの問い合わせが増加、SDGsやESG活動を重視している金融機関から高評価を得るなどの好影響もみられ、それが経営層の意識改革にもつながっています。

2021年8月、全社における使用電力の59%を再エネに切り替え。残すはテナントとして入居し電力契約が個別ではない拠点のみに 2021年8月、全社における使用電力の59%を再エネに切り替え。残すはテナントとして入居し電力契約が個別ではない拠点のみに

エコ・プランはSBT(SME)認定も取得しており、現在は中小企業向けのSBT認定を目指す企業に対して、目標設定から認定までの支援サービスを無料で提供。定量的なデータ収集は自社の立ち位置の把握に加えて、経営層の理解にもつながるため、同社がこの取り組みで得た知見を共有しながら、脱炭素の輪を中小企業にも広めていこうと奔走しています。国策による制度や環境整備と同様、同社のように一社員や一企業が問題意識を持ち、自発的に取り組みを進めることが、社会の変革を後押しする力となるのでしょう。