電力の切り替えにおいては、環境価値だけでなく、地域循環共生圏などの視点も含めたサステナブルな仕組みを求める声も。そうしたニーズに応える新たな仕組みとして徐々に広まりをみせている「再エネ都市間流通」について、まち未来製作所の青山 英明さんに聞きました。
- 青山 英明(あおやま ひであき)
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株式会社まち未来製作所 代表取締役。福島県郡山市出身。北海道大学農学部 同院卒業後、株式会社荏原製作所入社。東日本大震災を経験し、復興まちづくりのコンサルティングファームを経て起業。一般社団法人ローカルグッド創成支援機構を立ち上げ、現在は理事を務める。
地方の再エネの余剰を都市部へ 運用益の一部を地域活性化資金に
日本初となる再エネ都市間流通による地域活性化モデル「グッドアラウンド」では、地方の再エネ発電所で発電された電力を「地域新電力」や「都市への輸出」に割り振り運用。都市部の事業者は小売電気事業者を介して同社が供給する再エネを、産地や発電方法(産地価値/特定電源価値)などの情報とともに受け取ることができます。事業収益の一部は、用途を自治体と協議した上で地域活性化資金として発電所の立地地域へ返還されるため、間接的に地域社会へ貢献できる仕組みです。
この仕組みの考案の背景には、地域社会と再エネの共存という課題がありました。現在、再エネの発電所で発電された電力はFIT(固定価格買取制度)に基づき買い取りされ、小売電気事業者が日本卸電力取引所(JPEX)を通じて調達、事業者や生活者に供給しています。しかし、同制度では電源の種類や産地を示した上で取引が行われているわけではないため、地域の資源を利用して発電した電気やお金が地域外に流れていってしまいます。この仕組みでは、発電した電気を地域新電力に優先的に振り分けることで、再エネを発電所の地元で消費する地産地消が可能に。地元企業や生活者は、グッドアラウンドを活用する地域新電力の電気プランに切り替えることで、再エネ利用が可能になるだけでなく、地元に貢献することができます。
自治体と連携し、事業者や生活者の再エネ導入を促す一手に
神奈川県横浜市や茨城県神栖市などでは、こうした仕組みを活用し地域の事業者や生活者の再エネ導入を促す動きも。後者は昨年、まち未来製作所と連携協定を締結し、地元再エネ発電事業者3社(風力、太陽光、バイオマス 合計約30MW)および再エネ特化型の地域新電力複数社と連携した電気の運用と流通を開始。16GWh/月の取り扱いで月間200万円相当の地域活性化資金を生み出しています。この仕組みで都市部に送り届けられた電気は野村総合研究所などが購入。CSRの観点から企業価値を向上させる一手にもなっています。
再エネの都市間流通を可能にする同仕組みの利用により、事業者や生活者は再エネへの切り替えとともに地域循環共生圏の創出や地域課題の解決などに貢献することが可能に。社会・地域・環境に配慮して商品やサービスを選択するエシカル消費。その広がりが、脱炭素社会の実現を大きく後押しします。