2050年までに脱炭素化を目指すゼロカーボンシティを宣言した横浜市では、再エネ資源を豊富に有する東北の13市町村と「再生可能エネルギーに関する連携協定」を締結しました。これは、再エネの主力電源化への課題の一つである、再エネポテンシャルが高い地域と電力大消費地である都市部が離れていることへの解決の道筋にもなります。同市の再エネの利用拡大に向けた取り組みについて、温暖化対策統括本部 企画調整部担当部長の高橋一彰さんに聞きました。
- 高橋 一彰(たかはし かずあき)
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横浜市 温暖化対策統括本部 企画調整部担当部長。環境庁(現環境省)入庁後、大気環境保全、廃棄物管理、生物多様性保全、東日本大震災対応、フロン対策、化学物質管理・水銀に関する水俣条約対応、水環境保全、気候変動適応等の担当を経て、2021年7月より現職。
市内で発電される再エネだけでは十分にまかなえない
横浜市では2018年10月に、2050年までの脱炭素化「Zero Carbon Yokohama」を目標に掲げ、再エネ利用のさまざまな普及施策を展開しています。例えば市の率先行動として、2020年4月から供用を開始した新庁舎の使用電力の100%再エネルギー化を2021年3月に実現しました。また、市内の事業者向けに再エネ電気供給メニュー情報を市のWEBサイトで紹介するキャンペーン「うちも、再エネにしました」を2020年度から実施しています。さらに市民向けとして、再エネ電気の共同購入キャンペーン「みんなでいっしょに自然の電気(みい電)」を首都圏の都県市と連携して、また、太陽光発電・蓄電池の共同購入キャンペーン「みんなのおうちに太陽光」を神奈川県と連携して、各々展開しています。共同購入は、一定量の需要をまとめることで供給側の調達メリットが生まれ、お得な料金メニューを提案しやすくなる仕組みです。
一方、大都市の共通の課題として、需要量に見合った再エネの供給ポテンシャルが都市内で得られないことが挙げられます。横浜市の再エネ供給ポテンシャルは2050年の市内電力消費量の約8%と試算され、市内で発電される再エネ由来の電力だけでは需要をまかなうことはできないと想定されています。
そこで同市では、再エネ資源を豊富に有する東北の市町村と「再生可能エネルギーに関する連携協定」を締結し、再エネの創出・導入・利用拡大に資する取り組み等を進めています。現時点で13の市町村と協定を締結し、5市町村(横浜町・八峰町・軽米町・会津若松市・一戸町)から36事業者に電気を供給しています。
再エネの都市間流通で地域活性化も
同協定では、再エネの利活用を促進するとともに、地域の資源を活用しながら自立・分散型の社会を形成する「地域循環共生圏」の新たなモデルの構築にも取り組んでいます。例えば、会津若松市からの供給は、本市とまち未来製作所が締結した連携協定に基づき、再エネの都市間流通による地域活性化モデル「グッドアラウンド」を活用した実証事業で行っています。
この事業は、需要家に電気を供給する小売電気事業者を入札方式により決定するとともに、電気代の一部を地域活性化資金として電源が立地する自治体に還元し、その活用方法を関係自治体などとの協議により決定する国内初のモデルです。これにより、再エネの普及拡大とともに、地域・住民などの交流の活性化による地域活力の創出が図られることが期待されています。
現在、同市では「横浜市地球温暖化対策実行計画」の改定について検討を行っており、2050年カーボンニュートラルには再エネのさらなる利用拡大を図る必要があるとしています。再エネポテンシャルの高い地域との連携が、今後どのような展開をみせて、都市部の脱炭素化に向けたロールモデルを確立していくのか期待が高まります。