みんなの「再エネ」取組み

再エネを導入された個人、自治体、企業の方に
取材を行い
具体的な導入事例などを
ご紹介させていただきます。

北海道松前町で地域マイクログリッド事業開始 災害レジリエンス強化と地域活性化を目指す

非常時に系統からの電力供給が遮断されたとしても、電気の自給自足を可能にするエネルギーシステムとして知られる地域マイクログリッド。災害レジリエンスの強化や地域の再エネ活用による地域循環共生圏を実現する有効な手段として、近年注目を集めています。北海道松前町と連携し、同地域でマイクログリッド事業を展開する東急不動産の中原靖雄さんに、その取り組みや同社が代表理事を務める再生可能エネルギー地域活性協会の活動内容について聞きました。

中原 靖雄
中原 靖雄(なかはら やすお)

東急不動産 戦略事業ユニット インフラ・インダストリー事業本部 インフラ事業企画部長。一般社団法人再生可能エネルギー地域活性協会 運営委員長。

地域資源を活用 災害時でも安定した電力供給を可能に

東急不動産は地域マイクログリッド事業の第一弾として、北海道松前郡松前町と「再エネによる地域活性化」に関する協定を締結。リエネ松前風力発電所(定格出力40.8MW、蓄電池容量約130MWh)で発電された再エネを活用し、災害レジリエンスの強化や地域経済の発展に取り組んでいます。

経済産業省の「地域の系統線を活用したエネルギー面的利用事業費補助金地域マイクログリッド構築支援事業」の一環として、2020年度マスタープランを作成。北海道電力ネットワークの送配電網を活用し、大規模停電時にも同町主要部に電力供給を行えるシステムの構築を図っています。

地域マイクログリッド イメージ(2020年度マスタープラン作成時点) 地域マイクログリッド イメージ(2020年度マスタープラン作成時点)

仕組みとしては、同社が保有する風力発電設備と蓄電池を松前変電所に接続。停電などで系統からの電力供給が遮断された際は同変電所を通じて、蓄電池に貯めた電気を役場や避難所となる小中学校、病院などの主要部や一部の一般家庭に供給します。将来的には再エネ発電設備を追加で設置し、すべての世帯の電力需要を賄えるよう整備を進めるとともに、非常時だけでなく平常時も松前町で消費する電力を100%再エネ化することを目指しています。

また、地域資源やエネルギーの地産地消の大切さを住民に理解してもらうための活動も展開しています。例えば、子どもたちを対象とした環境教育を行う、地元主催の夏祭りで風力発電によって発電した電気を使うなど、再エネを身近に感じてもらえるような取り組みを企画。こうした活動は再エネ発電所建設に対する理解を促すだけでなく、地域の住民一人ひとりの脱炭素に対する意識の向上にもつながっています。

脱炭素化に向けて、地域と再エネ事業者が相互発展できる仕組みづくり

「再生可能エネルギー地域活性協会」(略称:FOURE)の取り組み 「再生可能エネルギー地域活性協会」(略称:FOURE)の取り組み

再エネ事業において、地域との共生および相互発展を主題にする同社は、今年6月に「再生可能エネルギー地域活性協会」(略称:FOURE)を設立しました。現在、発電事業者や小売電気事業者など多岐にわたる分野から計19社が加盟。地域と事業者、双方のニーズを吸い上げ適切なマッチングおよび事業化を支援するプラットフォームビジネスの構築に向けて、自治体や事業者などを対象に広く意見を集めています。

また、同社は今年2月、自社施設の電力100%再エネ化を加速させるべく「RE100」の達成目標年度を2025年に前倒ししました。既に全事業で使用している電気を上回る再エネ発電量(開発中含む)を有しているため、それらの発電所と紐づけた「トラッキング(追跡)付きFIT非化石証書」を活用。約457,000MWhの電力を再エネに切り替え、CO2年間約21万トンを削減する見込みです。一方では再エネ発電事業者として、他方ではその導入を先駆的に進める事業者として、脱炭素化への道を切り開いていく構えです。