みんなの「再エネ」取組み

再エネを導入された個人、自治体、企業の方に
取材を行い
具体的な導入事例などを
ご紹介させていただきます。

脱FITを目指す、太陽光発電の新常識「PPAモデル」とは?

日本の発電電力量に占める再エネ比率は16.9%(2018年度)で、先進諸国と比べると低いことが指摘されています。そこで注目を集めているのが、企業や自治体が保有する施設の屋根や遊休地を電気事業者が借りて、無償で太陽光発電設備を設置し、発電した電気を企業や自治体が利用するPPAモデルです。今回は、太陽光PPAサービスを展開している株式会社アイ・グリッド・ソリューションズの執行役員で、同グループの株式会社VPP Japan取締役COOの加田木太朗さんに話を聞きました。

加田木 太朗
加田木 太朗(かたぎ たろう)

株式会社VPP Japan取締役COO。2011年に株式会社アイ・グリッド・ソリューションズに入社。太陽光発電を手掛ける合同会社ミドルソーラーエナジーの立ち上げ、家庭向けの電力小売り事業の立ち上げに携わる。2017年、VPP Japanの設立時から事業責任者として太陽光PPAサービスを推進。

企業や自治体に負担をかけないPPAモデル

PPAモデルは、FIT(再エネの固定価格買取制度)とは違い、自家消費した電力に再エネ賦課金がかかりません。さらに、発電設備は電気事業者など第三者が保守・運用するため、企業や自治体に負担がかかりません。

同社が展開するPPAサービスは、店舗や施設の屋根等に太陽光パネルを設置する「オンサイトソーラー」です。施設の屋根等を活用するため、土地がなくても問題なく、発電した電気を施設に直接送電するので、電力会社の送電網のキャパシティを圧迫しません。また、災害時のバックアップ電源としても活用できるため、地域のレジリエンス強化につながります。

同社では、流通小売や物流倉庫などを中心に既存施設の屋根を活用した太陽光発電所を約310施設、約65,000kW保有しています(2022年1月現在)。

余剰電力循環モデルの導入で、再エネ比率が大幅に向上

従来モデルでは、自家消費できる分だけのパネルを設置するのが主流でした。しかし、それでは屋根面積に対して太陽光容量が小規模で、再エネ普及が進まないという課題がありました。そこで、2021年6月より導入を開始したのが「余剰電力循環モデル」です。

余剰電力循環モデルは、同社独自のAI技術を用いて、施設ごとの発電量と需要量から余剰電力を予測し、同社グループのアイ・グリッド・ソリューションズが余剰電力を買い取り、他の施設などに供給するという仕組みです。

実際に、東海地方を中心にホームセンター等を展開する株式会社バローホールディングスの店舗では、平日と休日など電力消費量の差が激しいときに電力を余らせてしまうことがネックとなり、太陽光パネルの設置面積が小規模にとどまって経済合理性が成立しない、という課題がありました。そこで、余剰電力循環モデルを導入し、太陽光導入量の最大化と需給調整を実施。すると、従来モデルでは使用電力における再エネ比率が26%だったのに対し、余剰電力循環モデルでは86%に。さらに再エネ100%の時間帯も生まれ、余剰電力も出ました。

ホームセンターバロー本巣文殊店の1日の電力データ比較(2021年7月13日のデータで、従来モデルはシミュレーション値) ホームセンターバロー本巣文殊店の1日の電力データ比較(2021年7月13日のデータで、従来モデルはシミュレーション値)

今後は、余剰電力をグループ内の店舗同士でやり取りしたり、メーカーや物流施設などのサプライチェーン内でやり取りしたり、地域で循環させる展開などを考えています。

その一環で、次世代エネルギープラットフォーム「R.E.A.L. New Energy Platform®」の実証実験を、株式会社ヤオコーが運営する埼玉県内の食品スーパーで実施しています。ここでもAIやIoTを活用し、余剰電力の予測や、蓄電池や来店客・宅配用EVの充放電を利用することで、地域循環型の再エネ普及モデルの実現を目指しています。