富山県の東部に位置する魚津市は、市内から立山連峰を眺望でき、天然記念物の埋没林や蜃気楼、ホタルイカ、洞杉など自然に恵まれた街です。魚津市は、そうした自然環境を維持するため、2020年2月に「ゼロカーボンシティ宣言」を行い、2050年の温室効果ガス実質排出ゼロを目指して、さまざまな取組みをしています。
今回は、自然豊かな北陸の地で、電力会社と連携して再生可能エネルギーの利用拡大に取組む、魚津市の活動を紹介します。
市民が作り出した再エネを、公共施設で利用する「エネルギーの地産地消」
2022年6月、魚津市は北陸電力株式会社(富山県富山市)と連携し、再生可能エネルギー固定価格買取制度による買取期間が終了した電力(以下、卒FIT電力)を活用し、魚津市の公共施設へ再エネ電力を供給する取組みを開始しました。
この仕組みでは、魚津市内で卒FIT電力を保有する世帯を対象に、北陸電力が電力を買い取ることで、魚津市の公共施設(魚津埋没林博物館)へ再エネ電力の供給を行います。地域の家庭で作られた再生可能エネルギーを、地域の施設に供給する「エネルギーの地産地消」を実現する取組みとなります。
この取組みは、魚津市がゼロカーボンシティを目指す具体的なアクションであるとともに、地域が抱える課題やニーズに対応した持続可能な社会の実現に寄与することを目的として、魚津市と北陸電力が締結した「SDGsの推進に関する包括連携協定」に基づくものです。
再生可能エネルギーで稼働する「ゼロカーボン自動販売機」も登場!
魚津市と北陸電力は、この他にも地域の再エネ利用拡大に関する活動を推進しています。
2022年4月からは、飲料メーカーである株式会社ダイドードリンコ北陸(福井県福井市)とも連携し、魚津市役所の本庁舎内に設置してある自動販売機に再生可能エネルギー由来の電気を供給する「ゼロカーボン自動販売機」の取組みを始めています。
この仕組みでは、北陸電力がダイドードリンコ北陸に対して、遠隔地から電力の検針ができるサービスを提供、現場で目視による検針が不要になることで、CO2排出量削減に寄与する効果もあります。
「ゼロカーボンシティ」実現に向けて、市民に負担をかけずに、無理なく継続できることに取組む
ゼロカーボンシティの実現に向けて、地元の企業と連携しながら、さまざまな方法で再エネの利用拡大に取組む魚津市。今後の取組みについて、企画政策課未来戦略室の高瀬さんに話を聞きました。
―エネルギーの地産地消へ取り組む経緯について。
「ゼロカーボンシティ」を実現するには、市民や市内企業等が一丸となった取組みが不可欠となります。一方で、コロナの影響による経済状況の悪化等を考慮すると、「再エネ設備の導入」や「環境価値の購入」など、金銭的な負担をかける取り組みを無理にお願いできる時勢ではないとも考えています。
そこで、まずは「魚津市役所」としてできることはないかと考え、包括連携協定を結ぶ北陸電力様に相談した結果、ゼロカーボン自販機や卒FIT電力の活用に関する提案をいただき、取組みを行うことにしました。公共が率先して事業を行うことで、市民等に向けた将来的なゼロカーボン事業の啓発につながればと考えています。
―今後の取組みについて。
「地球温暖化」は世界的な問題であり、規模の大小に関わらず様々な取組が必要なことは理解していますが、無理に実施する事業は続かないと考えています。ゼロカーボンの分野においても、まずは市内事業所や関係団体等へのヒアリングを行い、市民の要望を踏まえた事業を企画、実施していきたいと考えています。
また令和3年度に調査を行った結果、市内には水力発電のポテンシャルがあることがわかり、市内適地での小水力発電設備の導入を検討しています。魚津市では、市内で水の循環システムが完結するという世界的に特異な地形を活かし、「魚津の水循環」を基本理念とした様々な施策を行っています。そのため、小水力発電設備の導入に関しても、「水循環」に絡めた取組とできないかと考えています。
ぜひ色々な方々に魚津市の取組に興味を持っていただき、一緒に「魚津モデルの水力発電事業」を構築する仲間になっていただければと思います。
市民や地元の企業とともにCO2排出削減に取組む魚津市では、北陸の豊かな自然を未来へつなげるために、再生可能エネルギーが活躍しています。
https://www.city.uozu.toyama.jp/event-topics/svTopiDtl.aspx?servno=10649外部リンク