農地を立体的に活用し、エネルギーと作物を同時に創ることができるソーラーシェアリングが脚光を浴びています。
一般社団法人ソーラーシェアリング協会(東京都中央区)は、千葉県市原市で農業法人「SUNファーム市原」を経営しており、ソーラーシェアリングを活用してさまざまな農作物を栽培しています。SUNファーム市原は、クリーンエネルギーを使って水の潅水(かんすい)・循環や気温調整、肥料(養液)の自動制御等を行っている未来型試験農園です。
近年、注目が集まっているソーラーシェアリングのメリットや意義について、SUNファーム市原の風間さんに話を聞いてみました。
農地を立体的に活用してクリーンエネルギーを生み出すソーラーシェアリング
ソーラーシェアリングは、立体的に土地を活用することで農業と太陽光発電の両方を行うことが可能になり、さらに発電したエネルギーを農業設備や地域の電力供給として利用することができるメリットがあります。
パネルの日陰により農作物の生育を心配する声も聞かれますが、作物に合わせた適切な日照量を確保すれば問題ありません。
私たちが取り組んでいるトマトなどの水耕栽培(注)では、水の循環や水温調整、室温に多くのエネルギーを必要としますが、ソーラーシェアリングによって必要なエネルギーの一部を賄うことも可能です。
電源や食料供給など、災害時に重要な役割を担う可能性も
また、ソーラーシェアリングは災害時の対策としても有効です。蓄電池も併用すれば、夜間電力にも対応できるので非常用のインフラ設備としても価値があります。今後EV車が普及してくれば、エネルギーステーションとしての役割を果たすようになるかもしれません。
電力を供給するインフラとしてだけではなく、作物を栽培しているのであれば食料の供給にも繋がりますので、地域や自治体で災害時のオペレーションを決めておけば地域の味方になるはずです。
ソーラーシェアリングはエネルギーと食料の地産地消へつながる取り組み
ソーラーシェアリングの軸はあくまで農業であり、農地を立体的に活用することでエネルギーを生み出す取り組みです。メガソーラーのように土地を占有してすべてを太陽光発電に使うのではなく、あくまでも農業経営を安定化するための仕組みとして作用します。
したがって、単に収益のことだけを考えるのではなく、ソーラーシェアリングで発電した電力を地域内の各種施設で自家消費するなど、確保した食料・エネルギーを地域社会で共有して地域全体を豊かにしていくという発想(SLOC:Small Local Open and Connected)を持つことが大切だと考えています。最近では、地方の自治体からのソーラーシェアリングに関する問い合わせも増えてきており、グローバルではなく個人個人がつながって地域社会を活性化しながらビジネスを展開していく時代が近づいてきていると感じています。
さまざまな農作物の栽培だけでなく、災害対策や農業経営の安定化にもメリットを発揮するソーラーシェアリング。これからの農業にとって、再生可能エネルギーの活用は欠かせないものとなっています。