太陽光発電等の再生可能エネルギーの導入を検討する場合、設置スペースや設置コストの問題で悩む人もいるのではないかと思います。
今回は、工場やビルの排水管を使って、省スペースで設置できるマイクロ水力発電の仕組みを紹介します。
三重県鈴鹿市の株式会社ユームズ・フロンティアでは、2018年からマイクロ水力発電システムの開発に取り組み、2021年から販売を開始しています。
マイクロ水力発電システムの特徴や開発の経緯について、ユームズ・フロンティアの代表取締役である林さんに話を聞きました。
工場やビルなどの循環水を利用した発電システム
―マイクロ水力発電システムとは?
当社が開発した「Crutto(クルット)」は、工場、ビル、浄水場などの循環水を利用して発電するシステムです。コアテクノロジーである水車を独自開発しており、分散型発電に貢献します。
設置が可能な条件は、①満水配管、②流量4L/s以上、③落差4m以上、です。この3つを満たしていればどこにでも設置が可能です。
カーボンニュートラル実現のためには、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーと共存できる、設置場所の条件等に合わせて最適な再エネを普及させるべきだと考えています。そういう点では、マイクロ水力発電システムは、水が流れている配管に手軽で簡単に設置できます。
―マイクロ水力発電システムの設置に適している場所は?
工場、マンション、病院、商業施設、浄水場などの設置は適しているといえます。また、システムが動き始めるためには、一定のエネルギーが必要となります。そのため、流量が多く、落差が大きいほど理想の設置場所となります。
一方で、密閉型の配管に設置するタイプとなりますので、開放型の河川や農業用水路への設置は向いていないといえます。
大規模発電に依存しない、小規模で分散した発電の実現を目指して
―マイクロ水力発電システムを開発しようと思った経緯は?
2011年に東日本大震災があった時、私は関東の町工場で働いていました。震災によって大規模な発電所に被害があると一帯が停電し、その後も計画停電などが必要になるといったことを初めて実感しました。また電気があることで避難所の灯りや暖を取ることにも使え、電力の重要性を感じました。
その時の体験がきっかけとなって、大規模発電に依存しない、小規模で分散した発電を実現したいと思うようになりました。小型で分散した電力インフラを構築するには、エネルギーがどこにでも豊富にあり、安定したエネルギーが必要不可欠です。しかもCO2を出さない、きれいで地球にやさしいことも必要です。
そこで生活インフラでもある私たちの身近にある配管を流れる水を使って発電するマイクロ水力発電『Crutto(クルット)』の開発に着手しました。
私はものづくりの分野に長年関わっていることから、工場を持っている企業にはぜひ使っていただきたいという思いがあります。工場では取水、循環水、排水と多くの場所に設置が可能です。活用していない水を電気に変えることで電気代の削減や災害時に活用、地域への還元に使うことができます。その他にも浄水場やマンション・ビルなどからも引き合いが増えているので、一つずつ丁寧に進めたいと思います。
―今後の取組みについて。
分散型の電力インフラを構築するためにマイクロ水力発電システムの普及は不可欠ですが、今後は電力貯蔵分野も視野に入れています。小規模な発電が多くの場所でできたとしても、それを使いたいときに使えなければ意味がありません。そのために蓄電池の共同研究をスタートしていたり、水素は貯蔵が容易なことから水素製造においても研究をしています。
今後もエネルギー業界でいろいろなことに挑戦していきます。一緒に取り組んでいただける方や応援だけでもしていただけると励みになります。
再生可能エネルギーには、さまざまな種類、導入の形態があります。2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、小さな水のエネルギーを使って省スペースで発電ができるマイクロ水力発電は、今後の活用が期待されるシステムといえます。