私たちが観光地などで楽しむことができる温泉。その温泉から再生可能エネルギーが作り出されていることをご存知でしょうか。
温泉をはじめ、地下の地熱エネルギーを活用する地熱発電は、長期間にわたって安定的に発電を行うことができる自然エネルギー発電です。またエネルギー源はマグマや温泉の熱エネルギーであるため、地球の資源を使わないサステナブルな発電方法になります。
ふるさと熱電株式会社は、熊本県小国町わいた地区の住民で組織する「合同会社わいた会」を事業主とした地熱発電所の運営・管理、資金調達を行う発電事業会社です。発電事業会社と地域住民が、共に強みを活かしあったパートナーシップのもとに事業を運営することで、そのノウハウを地域に根付かせていき、地域のサステナブルな経済活動を実現していくことを目指しています。
地域の資源である地熱を活用して地域創生に取組む、ふるさと熱電。地域創生部の垣内さんに話をお聞きしました。
24時間365日安定発電が可能な唯一の自然エネルギー発電 “地熱発電”
地熱発電は、24時間365日安定発電を行うことができる、唯一の自然エネルギー発電です。
地熱発電のエネルギー源はマグマ、もしくは温泉の熱エネルギーであるため、地球の資源を一切使うことなく、ランニングコストをおさえて発電することができます。
ふるさと熱電では、以下3つの地熱発電手法を活用することで、地域の特性や意向に適した発電を実現しています。
(1)フラッシュ発電
地下1,000m付近から蒸気を取り出し、蒸気のエネルギーを利用してタービンを回すことで発電。世界第3位の地熱資源大国である日本には、2,300万kW相当(注)の地熱エネルギー資源が存在するといわれています。
(2)バイナリー発電
地下から取り出した蒸気・熱水について、水よりも沸点の低い媒体と熱交換し、この媒体の蒸気によってタービンを回し発電。より低温での地熱流体での発電に適しています。
(3)温泉発電
80℃を超える温泉を利用したバイナリー発電。既存の温泉井戸を利用するため、新たな掘削を必要としません。発電に利用された後の温泉は、温度が下がり、浴用には適温となります。
「ひと」が中心となった地域創生にチャレンジ
これまでの地域創生は、「企業」が中心となって、産業や工場を誘致する事を目指していました。その場合、企業の都合で産業や工場が撤退してしまうと、その地域の経済も雇用も失われてしまうため、地域のサステナブルな経済活動を生み出すことできない実情が生じていたと考えています。そこで、当社では「ひと」が中心となって地域と事業が共生するような、地域創生に挑戦しています。
現在、地域創生事業の一つとして取り組んでいるのが、グリーンハウス事業です。小さな土地でも農業の収益化ができる、スマート農業としてバジル・ミントの栽培をしています。グリーンハウスの熱源は、地熱発電で発生した余熱を活用し、ハウス内のパイプに約70℃の温水を流すことで、室温を30℃前後に管理しています。暖房等の設置を行わないため、燃料代だけでなくCO2削減にも貢献できます。
グリーンハウスでは年間約3600kgのバジルを生産し、地元の熊本県だけでなく都市圏の飲食店や食品卸売業者へも販路を拡大しています。また地元の従業員を雇用することで、地域の事業・雇用にも貢献をしています。
今後は、売電収入をもとに遊歩道の整備や古民家の改装なども視野に、まちづくり計画を検討しています。「ふるさとの熱を電気に、資源をカネに、地域を元気にする」ことを目指し、事業拡大を進めていきたいと考えています。
日本を代表する観光資源である温泉が、地域で再生可能エネルギーを作り出す資源としても活躍しています。温泉によって作り出される地熱が、これからの地域を創生する重要な役割を果たすことが期待されています。