北陸三県の自治体として初めて、環境省の「脱炭素先行地域(注)」に選定された福井県の敦賀市。
敦賀市は、2021年7月に2050年までに市内のCO2排出量実質ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ」へ挑戦することを宣言しています。
そして、この取組みの一環として、電力会社や民間企業と連携し、2022年7月に市内の太陽光発電等による再生可能エネルギー(卒FIT電力)を敦賀市の公共施設等に供給する「再エネ地産地消プロジェクト」をスタートしました。
この取組みにより、市内で作られた再生可能エネルギーを市内で消費する「再生可能エネルギーの地産地消」を推進するとともに、地域の再生可能エネルギーの供給量の確保を行うことで、将来的な敦賀市スマートエリアの実現を目指しています。
消費行動の分析によって、最適な電力の利用方法の提案も視野に
このプロジェクトは、市内で卒FITとなった太陽光発電設備を保有している家庭が余剰電力を北陸電力に売電し、敦賀市の公共施設等に電力を供給することに同意することで、その余剰電力に応じ、特典としてポイント(Tポイント)を受け取ることができる取組みです。
また、全国初の取組みとして、民間企業(CCCMKホールディングス)と連携し、敦賀市の将来的なスマートエリア等の実現に向けたデータの分析・実証を行います。
これによって、卒FIT電力の余剰電力データやTカードの購買履歴等から得られる消費行動に関するデータを活用し、市民の皆様それぞれの生活スタイルに合わせた最適な電力の利用方法の提案などに繋げていくことが期待されます。
VPPを活用した広域でのエネルギー地産地消も検討
また敦賀市では、関西電力が行うVPP(バーチャルパワープラント)の実証事業に協力しています。VPPとは、企業や工場、住宅等、さまざまな施設で発電した電力を集め、需要に合わせて供給するもので、太陽光発電や蓄電池、エコキュート、電気自動車などのエネルギーリソースを、IoTを活用した高度なエネルギーマネジメント技術で遠隔・統合制御し、一つの発電所のように機能させる仕組みです。電力需給に合わせて充放電を行い、電力の需給バランスの調整を行うことで、再生可能エネルギーの普及拡大に貢献することができます。
将来的には再生可能エネルギーによって成形されたVPPを確立することで、福井県南部の嶺南地域全体でのエネルギー地産地消を目指しています。
北陸新幹線敦賀開業を契機とした脱炭素化へ向けて
環境省による「脱炭素先行地域」に選定された敦賀市では、北陸新幹線の金沢駅~敦賀駅間の開業(2024年春の予定)を契機と捉え、脱炭素化を推進する予定です。
具体的には、新幹線開業の象徴的エリアとなる駅西地区、中心市街地集客施設、シンボルロード等へ卒FIT太陽光発電や新設予定のごみ発電による再エネ電力の供給を計画しています。
また、地域の電力会社や金融機関と連携して、「敦賀市脱炭素マネジメントチーム」を結成し、省エネ要請等による需給調整や環境意識の高い事業者等への融資・補助一体型支援などにより、中心市街地全体へ脱炭素化の取組みを波及拡大させる予定です。
敦賀市のように、今後は各地域において脱炭素社会の実現に向けた取組の加速化が予想されます。再生可能エネルギーの役割は、ますます重要なものとなっています。