太陽光や風力、水力などさまざまな種類がある再生可能エネルギー。そのひとつとして注目されているのが「地中熱」です。今回は、地中熱を活用した農業支援の取組みを紹介します。
株式会社イノベックス(東京都中央区)は、地中熱を活用したエネルギーソリューションに取り組んでいます。今回は同社が力を入れている農業支援について、GX事業部の福宮さんに話を聞きました。
地中から温度が安定している熱エネルギーを取り出し、冷暖房等に活用
「地中熱」とは地表からおおよそ地下200mの深さまでの地中にある熱のことで、このうち10m以深の地中温度は季節に関わらず、ほぼ安定しています。この安定した熱エネルギーを地中から取り出し、冷暖房や給湯、融雪などに利用するのが「地中熱利用」です。その利用方法は、ヒートポンプシステム、空気循環、熱伝導、水循環、ヒートパイプの5つに分類することができ、用途に合わせて選定することになります。
地中熱を活用して、ハウス内の環境を制御し、生産時期を適切に管理
地球温暖化が進む中で、農業の分野では熱くなりすぎるハウスを「冷やす」というニーズが高まりつつあります。農作物の成長点を効率よく冷やすことで、外気温に関わらず成長を促すことができます。
ところが、空気を熱源としたエアコンなどを使用すると、十分な冷却効果が得られないことも多いにもかかわらず、電気代ばかりが増大してしまいます。
当社が開発した独自技術「ヒートクラスター®」では、既存の井戸を活用することで、一つの熱源孔から「水資源」と「熱エネルギー」の両方を取り出すことができます。この技術を活用した空調システムであれば、ハウスの空調温度を低コストで目標温度に管理しながら、生産時期もコントロールできるようになります。
病院や保育園、道の駅等、さまざまな施設でのエネルギーコストと環境負荷低減に寄与
また病院や老人ホーム、保育園、幼稚園、道の駅といった広い敷地を保有し、長時間冷暖房を使用する施設でも、従来の空調システムに比べ、エネルギーコストが抑えられることから、環境負荷低減にも貢献します。
将来的には、データセンターの排熱によるホットスポットを冷却する用途にも使用できるのではないかと考えています。この独自技術をさまざまな業種のランニングコストの削減に繋げるだけでなく、環境に配慮した未来の街づくりに貢献し、関係するステークホルダーの事業価値の向上に貢献したいと思います。
さまざまな種類がある再生可能エネルギー。今回紹介した地中熱は、未利用エネルギーを活用した熱融通の技術といえます。2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、さらなる技術開発と、より幅広い分野での活用が期待されます。