古民家でいろいろDIY断熱を試したのち、数年前、わたしは両親の建てた札幌にある元実家に「断熱リノベーション」を施し、現在も住んでいます。最低気温がマイナス8度の朝に、春のような暑くも寒くもない、日差しが、ただただ気持ち良いあの空間が忘れられず、リノベーションでなるべく再現してみたのです。国が提唱する省エネ基準の2倍ほど燃費の良い家になり、マイナス10度の朝に、薪ストーブが消えた室内がまだ17度で寒くないという朝にはびっくりしました。朝起きてまず着込まずにはいられなかった厚手の部屋着や靴下もなくても大丈夫だし、布団をすぐにはいでしまう息子への心配もしなくていい。肌の乾燥も和らいだり、平熱が少し上がったり、息子がまったく風邪を引かなくなったりと、いろいろな変化がありました。
わたしの住まいが札幌なので、冬の事例ばかりになってしまいましたが、当たり前だった寒さや暑さがなくなると、無意識にやっていたいろんな動作や当たり前だと思って受け入れていた不都合が、すっと暮らしの中から姿を消して、なんだか楽になったなぁ、という、じんわりとした余裕が生まれたのです。たとえば子どもが不意にひく風邪は、看病そのものに時間を割くだけじゃなく看病のために仕事の予定を調整することにも時間を取られていました。また、季節ごとの寝具の入れ替えや、ストーブの出し入れ、毎日大量の衣類の洗濯にも時間をかけていたのです。時短レシピや家事の効率化などいろいろあるけれど、無意識な忙しさの存在を家が気づかせてくれたことには驚きました。