シリーズ「IPCC AR5の警鐘」
(第4回)第3作業部会(気候変動の緩和)の報告(その1)

COOL CHOICE編集部
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21世紀の人類全体の大きな課題である『気候変動』。
その影響は、世界を襲い、猛威を振るう強い台風や、熱波の来襲のニュースなどによって感じることができます。
地球に何かが起きている。
その“何か”について、人為起源による気候変動、影響、適応及び緩和方策に関し、科学的、技術的、社会経済学的な見地から包括的な評価を行い、とりまとめた報告書として、2013年~2014年にかけて第五次評価報告書(AR5)が発表されました。
このシリーズでは、IPCC AR5の概要を追いながら、気候変動の最新知見を確認していきます。

※IPCCとは

IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change : 気候変動に関する政府間パネル)は、 1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により設立された組織で、現在の参加国は195か国、事務局はスイス・ジュネーブにあります。
IPCCでは、人為起源による気候変動、影響、適応及び緩和方策に関し、科学的、技術的、社会経済学的な見地から包括的な評価を行い、報告書としてとりまとめています。
「第五次評価報告書」(2013年~2014年)は、世界中で発表された9,200以上の科学論文を参照し、800名を超える執筆者により、4年の歳月をかけて作成されています。

2℃上昇までに残されているCO2総排出量

世界は2100年までに、世界の平均気温上昇を2℃未満に抑えることで合意しています。
※2015年末のCOP21 において採択された「パリ協定」では、世界共通の長期目標として2℃目標が設定されるとともに、1.5℃に抑える努力を追求することに言及されました。
では、このままいくと世界の平均気温が2℃上昇するまでに、どのくらいの時間が残されているのか見てみましょう。

2℃上昇をもたらすCO2総排出量は、約3兆トンと言われています。これに対し、既に排出した分は約2兆トン。既に、3分の2を出しているということで、残りはあと3分の1の1兆トンということになります。 仮に、ここ数年と同じ量のCO2排出が続くとすると、3兆トンまでは、あと30年で到達してしまうと計算できます。更に、CO2排出量は近年急増していることを考えると、何もしなければ、今年よりも来年、再来年にはよりCO2排出量は増えると考えられますので、3兆トンに到達するのは、30年より早まる可能性があります。
つまり、“2100年 2℃未満”の目標を達成するためには、1日も早く対策をとる必要があるということです。

温室効果ガスを'減らす'供給側の緩和策

緩和策は、エネルギー、産業、交通・物流、家庭やオフィス、農業や土地利用、地域づくりや土地計画まで経済全体に係わります。これをエネルギーを作る側、使う側に分けて考えてみましょう。
まずは供給側、エネルギーを作る側です。エネルギーを作る側の緩和策は、低炭素なエネルギーを増やすことです。

'減らす'緩和策≪エネルギー供給≫ エネルギー対策のカギは低炭素エネルギー

低炭素なエネルギーとは、何のことでしょうか。
IPCCは、低炭素エネルギーとして、再生可能エネルギー、原子力発電、火力発電にCO2の隔離技術を備え付けたものを対象にしています。

'減らす'緩和策≪エネルギー供給≫
2100年に2℃に抑える可能性を高くする場合、低炭素エネルギーの
エネルギー供給に占める割合は、2050年に60%程度、2100年に90%程度

気温上昇を低く抑えるには、この低炭素エネルギーをどれくらい使えばよいのでしょうか。
現在のエネルギー供給に占める低炭素エネルギーの割合は15%ですが、2100年に2℃に抑える可能性を高くするには、2050年は60%程度、2100年は90%程度とする必要があります。

'減らす'緩和策≪エネルギー供給≫ CCS(CO2隔離技術)について

低炭素エネルギーのなかでカギを握っているのは、まだ商業化されていない、CCSと呼ばれているCO2の隔離技術です。CCSを火力発電と組み合わせることでCO2の削減が期待できます。
CCSは、Carbon dioxide(CO2)、Capture(回収)、Storage(貯蔵)の頭文字を意味します。
CCSは、枯渇した油田・ガス田や地中深くにある帯水層などに直接CO2を圧入して貯留しておく技術で、 現在はまだ実証段階で商業化されていません。
このCCSを利用することには、運用の安全性、長期的なCO2貯留の安定性の懸念などが考えられます。

最新技術CCS(二酸化炭素回収・貯蔵)

北海道 苫小牧で行われているCCSの実証実験の様子から、CCSの仕組みを紹介します。

'減らす'緩和策≪農林業・土地利用≫

農林・土地利用も、エネルギーを作る側の削減に重要なカギを握っています。
光合成によりCO2から炭水化物を合成して成長した植物をバイオエネルギーとして利用し、更に先ほどのCCSを組み合わせることで、大気中のCO2を実質的に減らしていくことができると考えられています。
また、植林を大規模に行い、CO2を吸収することも緩和策です。
ただし、これらの緩和策には、食料安全保障や水資源への影響、生物多様性への影響、気候への影響などが懸念されており、わからないこともあります。
これらの緩和策がどの程度利用できるのかが、他の分野でどの程度緩和策を行うのかに大きな影響を及ぼします。

低炭素な街づくり~滋賀県東近江市

荒れ果てた雑木林を地域に眠る再生可能エネルギーとして見直し、町の活性化につなげる取組みをご紹介します。

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<温室効果ガスとは>
主に、水蒸気、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、ハロカーボン類(フロンを含む)、地上オゾン(O3)などがあります。
温室効果の約50%が水蒸気、約20%が二酸化炭素とされています。
大気中の水蒸気量は気温などの条件により決まるため、人間活動による水蒸気の排出は大気中の水蒸気量にほとんど影響しません。このため、水蒸気は人間活動により排出された温室効果ガスには含めません。

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