気象予報士に教わる、
これからの天気と私たちにできること<第6回>

COOL CHOICE編集部
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第6回:NPO法人 気象キャスターネットワーク
気象予報士 吉竹顕彰さん

NPO法人 気象キャスターネットワーク会員の、気象予報士の皆さんにご登場いただくインタビュー連載企画。第6回は、NHK福岡テレビ「ロクいち!福岡」などの気象キャスターとして活躍されている吉竹顕彰さんです。職場もご自宅も福岡という吉竹さんが日々の観察のなかから感じた地元福岡の環境の変化、またキャスターとして、地球温暖化防止コミュニケーターとして、子供たちに伝えていきたいことなどについて、お伺いしました。

※地球温暖化防止コミュニケーターとは
https://ondankataisaku.env.go.jp/communicator/#section_about

「温暖化の影響で、九州では明らかな異変を感じています」

―今年、福岡で豪雨災害がありましたが、どのような状況でしたか

福岡で7月5日に起きた九州北部豪雨は、私がこれまでに経験したなかでも特筆すべき災害でした。気象キャスターの仕事は、こうした災害時に何をいかにお伝えして減災させるかが大きな使命の一つです。臨時の特設放送で夜通し状況をお伝えしましたが、果たしてどれだけ皆さんのお役に立てたかと考えると、悔しい気持ちが残ります。

―最近の九州地方の気象に異変を感じることはありませんか

九州はそもそも比較的雨の多い地域ですが、近年は気象庁の解析データでも集中豪雨の回数が増えていることが証明されていて、私自身も実感しています。
ただ、ひとつひとつの気象すべてが異常気象だ、温暖化のせいだと結びつけるのは少し短絡的かと思っています。例えば突然の大雨は「夕立」として昔からあった現象ですが、流行り言葉のように「ゲリラ豪雨」だと報道されてしまう。そこは我々が冷静に、自制しながらお伝えなければいけないところですね。
温暖化の進行は否定しようのない事実です。ですが気象は科学的な検証が難しい分野なので、温暖化を考えるうえでは50年、100年といった長い時間軸での判断が必要になります。そうした判断のうえで、今後は海水温の上昇により、台風の勢力が強いまま日本にやってくる可能性があるとも指摘されています。そうなれば今まで以上に警戒が必要になってきます。

―温暖化の影響でいま気になっていることはありますか

温暖化と都市化の影響によって、九州では明らかな異変が起きていますね。まず感じるのは、植物の変化です。例えば秋の紅葉は大幅に遅れていて、12月まで色がつかず、色づきが不十分なまま葉が落ち、いきなり冬になってしまうという年が増えています。
桜で言えば、福岡は毎年全国で1位〜3位の早さで開花しているのですが、実はこれも、とても憂うべきことなのです。私が仕事を始めた30〜40年前は、九州の桜は南端の鹿児島から北上して咲いていましたが、ここ20年くらいは福岡から咲き始め、最後が鹿児島です。桜前線が逆になってしまった。これは福岡の気温が100年で2.5度も上がって春の訪れが早くなったこと、さらには鹿児島の冬が暖かくなり、桜が冬の寒さを経験できず花芽が目を覚まさないことが原因です。そんなに遠くない将来、鹿児島で桜は咲かなくなるとの研究もあり、毎年、桜のニュースをお伝えしながら心配しています。
こうした植物の変化などを見ていて、これはマズイと実感したことも、地球温暖化防止コミュニケーターになった理由のひとつでした。

「五感を磨いて自然と向きあうことが温暖化防止への近道」

―地球温暖化防止コミュニケーターとして出前授業や親子イベントなどで子供達と接していらっしゃいますが、子供達の反応はどんなものでしたか?

参加者たちの反応は、子供も大人もまず「えー!?」でした。100年間で上昇した地球の温度は0.7度だというと「えー?たったそれだけ?」と驚き、100年後には最大4.2度も上がるよというと、「えー!そんなに?」と驚く。福岡では桜も咲かなくなって、雪も降らなくなるかもしれない。CO2を出さないためにはどうする?と生活シーンに踏み込んで学び、子供達は素直に聞いていてきっと家で実践すると思います。

―地球温暖化防止のために、私たちはまず何をすべきでしょうか。

温暖化は家の中にいては実感できません。まずは自然に興味を持って、自然と触れ合うことがいちばんの近道だと思いますね。私は植物が好きで、毎週、植物園に通って定点観察をしているのですが、散歩や通勤の途中で空や道端の草花を見るだけでもいいです。一週間前、1年前、数年前との変化を、だんだん感じ取れるようになります。そしてそこに温暖化の影響を見つけたら、次は否応なく、温暖化防止のためにすべきことを考えるようになるでしょう。
現代人は、自然に対する感覚がすごく鈍感になってしまいました。温暖化した未来の環境で自分たちの安全を守るためにも必要なのは、いち早く危険を察知できる五感です。
大雨や台風に際しても、雨の降り方や雲の様子を観て、雷や風の音を聴いて、いつもと様子が違うなど危険なサインを判断できるように、日頃から自然と触れ合って訓練しておいたほうがいいですね。特に子供のうちに。昔の子供は夕方までどろんこになって遊んだものです。子供達に温暖化について教える前に、自然と触れ合う外遊びを教えることが先かなという気がしますね。勉強はそのなかで覚えていける。生きる勉強になると思います。

お話を伺って

九州で起きている桜前線の逆転現象など全国のニュースからは気づきにくい問題があることや、九州から紅葉や桜のシーズンがなくなるかもしれないという、ドキッとするような将来が身近に迫っていることに改めて気づかされました。まずは「普段から身近な自然に耳を傾けることが温暖化防止への第一歩」とおっしゃる吉竹さんですが、今後もこうした地球温暖化防止コミュニケーターが発信する情報に耳を傾けながら、ひとりひとりにできることを、一緒に考えていきませんか?

吉竹顕彰さん

NHK福岡テレビ『ロクいち!福岡」はじめラジオ等でも活躍中。NPO法人 気象キャスターネットワーク会員。地球温暖化防止コミュニケーターとして、各種イベントや小学校への出前授業などに参加。趣味の植物観察は、植物園での定点観察だけでなく、自宅でも数々の植物を育て、囲まれた生活を楽しみつつ環境の変化を考察されている。

NPO法人 気象キャスターネットワーク
http://www.weathercaster.jp/

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