すっかり冬の風物詩となったイルミネーション。今では多くのスポットでLEDが使用されています。白熱電球や蛍光灯形電球に比べ、消費電力が大幅に減らせることや、自由な表現力が評価され、全国各地で工夫を凝らしたあかり風景の実現に一役買っています。ここでは、その事例をご紹介します。
工場夜景とのコラボレーションが人気
近年、写真集が出版されたり、各地でツアーが企画されたりと、工場夜景を観光資源として盛り上げようという機運が高まっています。室蘭市は、北海道を代表する工業都市であり、また「日本十大工場夜景エリア」の一つとして人気を集めています。このエリアの夜景は、港町ならではの海岸線にともるあかりや工場群のあかり、そして白鳥大橋のライトアップのコラボレーションが美しいと評判です。
白鳥大橋は、室蘭市陣屋町と祝津町を結ぶ全長1,380メートルを誇る東日本最大の吊り橋で、白鳥が羽を広げたような美しい姿が特徴。海からも町からも山からも見ることができる、市民だけでなく観光客にも人気のスポットで、一年を通して夜間には全体がライトアップされています。
全面LED化へ
白鳥大橋は、ロープ照明機器と投光器に無電極放電ランプを使っていました。無電極放電ランプの生産終了に伴い、環境に優しく経済的でもあるLED電球への切替えを検討。2015年にLED電球を購入し、2016年から2017年にかけて、全面LED電球に取り替える工事が行われました。全面LED化は、主塔の間の距離が720メートル以上の規模では全国初だそうです。
LEDで大幅な省エネが可能に
橋にはLED電球のロープ照明機器228個と投光器64個が設置されました。投光器の数が88個から64個と減っていますが、色合いや操作性なども従来のものと同等になるよう設計されており、これまでとほぼ変わらない照明環境になっています。LEDに変更したことで、投光器の数を減らすことができ、さらに無電極放電ランプより高効率なため消費電力量を大幅に削減できるといいます。
ロープ照明が無電極放電ランプ(18W)からLEDランプ(12W)に、投光器がマルチハロゲンランプからLEDランプに変更になることにより、市では理論計算で半分程度の削減効果を期待しています。全面LED化後の6月〜8月のデータでは、概算して平均約57%削減されたそうです。ライトアップのための電力は、祝津風力発電設備から供給され、節電した分の余剰電力は、電力会社へ売電される仕組みのため、経済的にさらに良い効果が得られることが期待されます。
少ない消費電力で、美しいイルミネーションを見せてくれる白鳥大橋は、これからも市の交通そして人気の夜景スポットとしての存在感を保つことでしょう。
廃食油でイルミネーション点灯
みなさんは、揚げ物など、料理で使った後の油(廃食油)をどのように処理していますか?凝固剤で固めたり、古新聞に吸わせて家庭ごみとして捨てたりすることが多いのではないでしょうか。実際、家庭から出る廃食油のうち約91%※が廃棄されていると言われています。
この廃食油を使ったユニークな取り組みをしているのが、「目黒川みんなのイルミネーション2017」(2017年11月10日〜2018年1月8日)です。東京都の目黒川沿いの両岸、総延長約2.2kmにわたって、約42万球のLED電球を桜の木に装飾し、光る桜の並木道をつくっています。最大の特徴は、100%自家発電でエネルギーの地産地消を実現していること。
そのエネルギーが廃食油。開催エリア周辺の家庭や飲食店から回収した廃食油をバイオディーゼル燃料(BDF)にリサイクルし、発電機を動かして、電気を作っています。また、廃食油を回収するトラックもBDFで走る車を使用しています。
このイベントには、地域がひとつにつながり、CO2の削減、電力のあり方を見直すきっかけにしたいとの思いが込められています。地域の方々の廃食油回収への協力があってこそ成り立つイベントですね。捨てられればごみになり、環境汚染につながりかねない廃食油に着目し、それを活かそうという知恵、そして環境問題に対する一人一人の心がけと行動によって、大きな価値が生み出されています。
消費電力が少なく、長持ちするLED電球がイベントをサポート
このイベントは2010年から始まり、今シーズンで8回目。2012年度にはグッドデザイン賞を、2017年には国際的デザインコンペ「A' Design Award 2017」のシルバーを受賞。日本のみならず、世界からも注目されているイベントです。回収された廃食油は約5,400リットルで、期間中のすべてのイルミネーション点灯をまかなっています(昨シーズン実績)。また、スタート時からLED電球を使用していますが、これまで一度も電球を交換したことはないそうです。消費電力が少なく、長寿命であるLED電球がこのイベントを支えているといえるでしょう。
午後5時、冬枯れの桜の木々に一斉に灯りがともると、その華やかさに人々から歓声があがります。桜色のイルミネーションが川面にも映り、水辺ならではの美しい夜景が目の前に広がります。捨てられるはずだった廃食油が活かされ、地域の活性化に役立っていることを実感する瞬間です。
※農林水産省資料「食品リサイクル法の施行状況」より
華やかなイルミネーションは見る人を魅了し、心に暖かい光をともします。それを実現するのが低コストでさまざまな表現を可能にするLED電球。商業施設や橋、ビル、町のメインストリートなど、あなたのそばにも、LED電球を使った素敵なあかり風景があるのではないでしょうか。これからも「あかり」で「COOL CHOICE(賢い選択)」を実践している事例にご注目ください。
そして、CO2削減になり、快適なあかり環境をつくるLED電球を身近な暮らしの中にもどんどん取り入れましょう。
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