2023.01.31

国立公園でワーケーションしませんか? 那須塩原市長に魅力を聞く

旅館など室内はもちろん屋外でもつながる充実したWi-Fi環境でワーケーションができる

旅館など室内はもちろん屋外でもつながる充実したWi-Fi環境でワーケーションができる

国立公園の豊かな自然の中で、日中はオンラインで仕事をして、夜は温泉でリラックス。そんな働き方もできる「ワーケーション」をご存知ですか?

ワーケーションとは、仕事(ワーク)と休暇(バケーション)を組み合わせた造語で、リゾート地などで休暇を取りながら、一部の時間を仕事に充てるワークスタイルのことです。

国立公園は、日本を代表する風景地として、自然公園法に基づいて国が指定するもので、北は北海道から、南は沖縄や小笠原諸島まで全国に34か所あり、国土の約5.8%を占め、年間3億人以上が利用しています。

栃木県那須塩原市の塩原温泉や板室温泉地区は日光国立公園の一部になっており、美しい渓谷や森の中でキャンプやカヌー、ウインタースポーツなどさまざまなアクティビティを楽しむことができます。那須塩原駅までは東京駅から新幹線で約70分。都心から抜群のアクセスでありながら、豊かな大自然が広がり、温泉が至るところに湧き出ています。

夏場は避暑地としてクーラーが不要であったり、冬場は温泉熱の利用であったりと、地域特性が豊富にある那須塩原市。脱炭素への取り組みや将来の展望について、那須塩原市長の渡辺美知太郎さんに話を聞きました。

渡辺 美知太郎(わたなべ みちたろう)
渡辺 美知太郎(わたなべ みちたろう)

那須塩原市長。参議院議員や財務大臣政務官などを経て、2019年から現職。
コロナ禍において、入湯税を原資とした観光業従事者へのPCR検査事業などの取り組みが評価され、同市は国際認証団体が選ぶ「世界の持続可能な観光地TOP100選」に関東で唯一、2年連続で選出されている(2021年と2022年)。

――日光国立公園でのワーケーションにはどのような魅力がありますか?

日光国立公園はワーケーションの先進地です。というのも、公園内の板室温泉は2021年に国のワーケーション実証事業を実施し、宿泊施設のWi-Fi環境や屋外の公衆無線LANなどの整備を進めてきました。室内や屋外など、どこにいても仕事ができるような快適な通信環境を整えています。板室温泉は古くから湯治場として親しまれてきた観光地ですが、現在は「板室ワーケーション」として自然と調和したワークスタイルを実現できるのが魅力の一つです。

また、日光国立公園内の板室温泉地区と塩原温泉地区は、2021年に環境省の「ゼロカーボンパーク」に登録されました。ゼロカーボンパークとは、「国立公園において先行して脱炭素化に取り組むエリア」として環境省が推進しているもので、栃木県内では初めて、全国では3番目の登録となり、温泉排熱の利用や温泉供給設備の高効率化、電動の自動運転バスの活用やプラスチックごみ削減対策など、持続可能な観光地づくりを進めています。

那須塩原市でワーケーションをすると、こうした先進的な脱炭素の取り組みを身近に感じてもらえると思います。

また、那須塩原市は酪農や農業、観光業が盛んですが、店舗や飲食店も数多くあります。仕事の後に、レストランで美味しい食事を味わったり、ショッピングを楽しんだり、もちろん温泉に入ってゆっくりと疲れを癒すこともできます。こうしたワーケーションを過ごせるのは、那須塩原市ならではの強みだと考えています。

――国立公園でのワーケーションを拡大するには、どのような課題があるのでしょうか?

ワーケーションを拡大するうえで鍵を握るのはデジタル化です。デジタル化を進めるにあたっては、ワーケーションのスタイルやニーズに合わせた通信環境の整備や、宿泊予約に加えて、例えば仕事が早く終わった場合に当日でも空きのあるアクティビティなどの予約を受け付けるプラットフォームの構築などが課題として挙げられます。

冬季などの閑散期にワーケーションに来てもらえるようにマッチングできる仕組みも検討する必要があるでしょう。こうした対策コストも課題の一つだと考えています。

――那須塩原市は、2050年CO2排出量ゼロに取り組むことを表明した「ゼロカーボンシティ」でもありますね。脱炭素に向けた取り組みや展望を教えてください。

那須塩原市は、太陽光発電のほか、日本三大疏水の一つである那須疏水を活用した小水力発電、生乳産出額全国2位の酪農業から発生する牛ふんを活用したバイオガス発電など再生可能エネルギーのポテンシャルが高く、再エネ事業に意欲的に取り組んできました。さらには、気候変動に対する適応策として、気象予報会社と連携して、身近な気候変動リスク分析や市民参加による気候変動影響調査なども行っています。

こうした実績をもとに、環境省の「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」を通じて、国立公園でのワーケーションを盛り上げながら、環境意識の高い企業や団体の方々とともに那須塩原ブランドの向上につながる取り組みを拡大していきたいと思っています。そのためには、脱炭素に取り組むことで生まれる価値を新しい切り口で広く伝えることが大切だと考えています。

2022年には、那須塩原市で開催した国体で、EVを活用するなどの工夫によってゼロカーボンでトライアスロンを実施することができました。また、環境省の第2回脱炭素先行地域にも選定され、今後も地域新電力会社や送配電事業者とともに脱炭素をより強力に推進していく考えです。脱炭素に興味がある方、企業のみなさんはぜひ一度、那須塩原市を訪れてこの魅力を肌で感じてほしいですね。

豊かな自然環境の中で、仕事も余暇も充実できるワーケーション。「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」では、ワーケーションやテレワークなどの働き方を後押ししています。
魅力あふれる那須塩原市の日光国立公園をはじめ、全国各地の国立公園でワーケーションに取り組んでみてはいかがでしょうか。