2023.02.22

北九州市が市民と取り組む脱炭素アクション「KitaQ Zero Carbon(キタキューゼロカーボン)」とは?

北九州市が市民と取り組む脱炭素アクション「KitaQ Zero Carbon(キタキューゼロカーボン)」とは?

ものづくりの街・北九州市はかつて、四大工業地帯の一つとして発展し、日本の近代化・高度経済成長の牽引役を果たしましたが、一方で1960年代には深刻な公害が問題となっていました。そのとき、対策を求めて最初に立ち上がったのは、子どもの健康を心配した母親たち、市民でした。同市は市民をはじめとして、企業、行政が一体となった「市民環境力」で公害問題を克服したのです。

政府が2022年10月からスタートした「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」の発足式では、こうした歴史を背景に、同市の北橋健治市長が「市民が自発的に頑張って公害を克服した街です。その歴史を誇りに思っており、脱炭素も市民と一緒に進めていきます」と力強くスピーチしました。

北九州市は今、「KitaQ Zero Carbon(キタキューゼロカーボン)」というプロジェクトで脱炭素という課題を乗り越えようとしています。現場で携わる北九州市環境局の小田信介さんと竹林美月さんに詳しくお話を聞きました。

小田 信介(おだ しんすけ・写真右) 竹林 美月(たけばやし みづき・写真左)
小田信介(おだ しんすけ) 竹林美月(たけばやし みづき)

北九州市環境局 グリーン成長推進部 グリーン成長推進課。
2018年に国の「SDGs未来都市」に選ばれた北九州市は、市民や企業と一体となって環境課題を解決していく「市民環境力」を活かしながら、環境・経済・社会の両立を目指している。

――北九州市の「KitaQ Zero Carbon」は、どのような取り組みですか?

「KitaQ Zero Carbon」は、一人一人のアクションを集めて気候変動対策にみんなで取り組もうというプロジェクトです。市民や企業の皆さんとともに、オール北九州の「市民環境力」を集結してカーボンニュートラルを実現するため、2022年1月から2024年12月までの3年間で6万人のアクション創出を目指しています。

気候変動対策は世界に共通するとても大きな課題ですが、市民や企業の皆さんと一緒に取り組み、アクションを積み重ねていけば乗り越えられると考えています。

脱炭素に関するイベントなどに参加しながら、カーボンニュートラルを目指す

脱炭素に関するイベントなどに参加しながら、カーボンニュートラルを目指す

市ではこれまで気候変動対策を呼びかけても、市民の皆さんからは「脱炭素やカーボンニュートラルという言葉をよく聞くようになったけれど、何から始めたらよいのかわからない」「環境にやさしいアクションに取り組んでも、成果が見えないので実感しにくい」という声を聞くことが多く、課題となっていました。

そこで、「KitaQ Zero Carbon」では、社会貢献活動の取り組みをアプリケーション上に登録すると、「actcoin(アクトコイン)」というデジタルポイント(コイン)が発行されるサービスを活用し、脱炭素に関するアクションの「見える化」を始めました。

市民の皆さんが植樹会などの脱炭素に関するイベントに参加したり、不要になった小型電子機器の回収に協力して廃棄物削減に取り組んだり、市内に設置した宅配ロッカーを利用して再配達の抑制によるCO2排出量の削減をすることでコインを獲得できるようにして、手応えを感じられるような仕組みを構築したのです。

これらは、環境にやさしい行動に対し、企業・自治体等が「ポイント」を発行する取り組みを政府が支援する「グリーンライフ・ポイント」推進事業も活用しています。

KitaQ Zero Carbonプロジェクトに参加してデジタルポイント(コイン)をゲットする方法は大きく分けて3つ

KitaQ Zero Carbonプロジェクトに参加してデジタルポイント(コイン)をゲットする方法は大きく分けて3つ

――脱炭素というと難しそうなイメージですが、アプリを使ってイベントに参加するなど簡単なことから環境にやさしいアクションを始めることができるのですね。どんなイベントをしているのですか?

はい、イベントでは、私たちの暮らしと脱炭素には深い関わりがあることをわかりやすくお伝えしています。これまでに開催したイベントには、植樹会やごみ拾い、環境ミュージアムの文化祭などリアルのイベントやオンラインのセミナーなどがあります。親子で楽しく参加できるものなども開催しています。ほかにも、企業からイベント企画の提案を受けて開催することもあり、好評を博しています。

イベント情報はKitaQ Zero CarbonプロジェクトのHPやアプリでチェックできる

イベント情報はKitaQ Zero CarbonプロジェクトのHPやアプリでチェックできる

ポイントがもらえるとモチベーションも上がりますね。ところで、アプリ上でゲットしたデジタルポイント(コイン)はどのように活用されるのですか?

市内全員で集めたコインの総数が100万コインに到達すると、アクトコインの運営企業から市内の環境活動団体に10万円を寄付するというキャンペーンを行っています。つまり、自分たちのアクションが環境活動の応援につながるのです。繰り返しアクションに取り組むことで少しずつコインが貯まっていくので、ぜひ100万コインを目指して取り組んでいただきたいですね。

新しく立ち上げたポータルサイト(外部サイトへリンク)では、市民の皆さんの獲得コインのランキング(アプリに登録した各自のアイコンやユーザー名などで表示)も公表しているので、ほかのメンバーの状況を知り、つながりを感じることもできます。学生や子育て世代をはじめ、できるだけ多くの市民に、ゲーム感覚で楽しく参加してもらいたいと考えています。

この先、「KitaQ Zero Carbon」ではどんなことを計画していますか?

脱炭素は、2050年という未来に向かって解決していかなければならない課題のため、その頃に主役となる若者世代に向けた広報に力を入れていきたいと考えています。

市内大学の学生を対象に、若者ならではの柔軟な発想や行動力などを活かしてイベントなどを企画・実施してもらう「脱炭素学生サポーター」の取り組みや、企業と連携してアクション実践の場を提供していく「パートナー制度」などを充実させていきます。

また、今後は、獲得したコインに応じて環境にやさしい製品などをプレゼントする企画も検討していきたいと思います。例えばマイ箸やマイストロー、リサイクル原料を使った衣類、フェアトレード食品などは、自ら手に取る機会は少ないかもしれませんが、プレゼントされたら「使ってみようかな」「食べてみようかな」と考える人も多いのではないでしょうか。こうした企画を通じて、脱炭素をもっと身近に感じてもらいたいと考えています。

脱炭素のアクションといっても、何をしたらよいのかわからない人も多いかもしれません。ですが、アプリで簡単に始められたり、ポイントをゲットできたりすれば、楽しく参加できそうです。北九州市のプロジェクトを参考にしながら、身近なゼロカーボンアクションから始めてみてはいかがでしょうか。

参考
KitaQ Zero Carbon(外部サイトへリンク)