地産地消が脱炭素につながる!富山県のキャンペーンとは?
富山県が開発した公式アプリ「食べトクとやま」のロゴとアイコン
日々の暮らしの中で買い物をするとき、CO2排出量の少ない商品を選んでみませんか。例えば、遠くの地域で生産された食材を運んでくるためには飛行機やトラックからCO2が排出されますが、地元で採れたものを食べる『地産地消』なら、少ないCO2排出量で手にすることができます。
国内の温室効果ガス排出量を消費ベースで見ると、全体の約6割が家庭からによるものです(※1)。そのため、普段の私たちの消費行動において、CO2排出量の少ないものを選択するという視点が必須となります。
そこで環境省では、食とくらしの「グリーンライフ・ポイント」推進事業を通じて、環境に配慮された製品やサービスを選ぶ消費者の行動に企業や自治体などがポイントを発行する取り組みを支援しています。
富山県は地産地消への興味関心を高めてもらうために、公式アプリ「食べトクとやま」を開発、運用しており、それを促進するために、2022年、このグリーンライフ・ポイント事業を活用して「富山県地産地消キャンペーン」を行いました。これは、政府が2022年10月からスタートした「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」の取り組みの一つでもあります。
「富山県地産地消キャンペーン」とは、どういったものなのでしょうか。また、地産地消に取り組むことは、脱炭素にどのような効果をもたらすのでしょうか。キャンペーンに携わる富山県農林水産部市場戦略推進課の宮崎純弥さん、生活環境文化部環境政策課の飯野弘奈さんに詳しくお話を聞きました。
宮崎 純弥(みやざき じゅんや) 富山県農林水産部市場戦略推進課(写真左)
飯野 弘奈(いいの ひろな) 生活環境文化部環境政策課(写真右)
地産地消の取り組みを後押しすることで、脱炭素社会の実現を目指している。
――「富山県地産地消キャンペーン」とは、どういったものですか?
富山県は、水田率(※2)が95.3%と全国一高く、水とお米が美味しい県です。また、富山湾では、「定置網漁」という、網に入ってきた魚だけを捕る環境にやさしい漁(※3)が行われています。富山湾からの距離が近いため、朝に捕れた新鮮な魚が県内の店頭で購入できるなど、農水産物に恵まれています。
特に若い世代の県民の皆さんに、こうした地元の農林水産業をより身近に感じてもらい、地産地消への興味関心を高めてもらうために、2021年に富山県公式アプリ「食べトクとやま」を開発しました。アプリでは、県産食材の旬の情報や県内の直売所のイベント情報なども配信しています。
「富山県地産地消キャンペーン」は、このアプリを活用して2022年に行ったキャンペーンです。スーパーマーケットや農産物直売所などでQRコード付きのシールが貼ってある県産の食品などを買い、アプリでQRコードを読み込むと、ポイントをゲットできます。ポイントが貯まったら、県の特産品の中から好きなものを選んで応募し、抽選で当たればもらえるというものです。
このキャンペーンは、冒頭に紹介した、食とくらしの「グリーンライフ・ポイント」推進事業の採択を受けて実施しています。
県産品に貼付してあるシールのQRコードをアプリで読み取ると、キャンペーンのプレゼントに応募するためのポイントが獲得できる
――県産品を買ってプレゼントが当たるとは嬉しいですね。プレゼントの特産品にはどのようなものがありますか?
プレゼントの特産品は30種類以上あります。例えば、県産の肉、水産物、野菜、米などのほか、県の花であるチューリップの水耕栽培セットがあります。
これらの特産品は「地産地消を推進する」という趣旨に賛同いただいた事業者の協力によって提供されたものです。
スーパーマーケットや農産物直売所などに並べる県産品に、このキャンペーンに応募するためのQRコードを貼る作業には、小売店の皆さんにも協力してもらい、多くの県民の皆さんに地産地消に目を向けてもらうよう努めています。
――地産地消に取り組むと、県内の農林水産業を応援することにつながりますよね。脱炭素についてはどういった効果があるのですか?
地産地消に取り組むことは脱炭素にも役立ちます。県内で生産された食材を消費すれば、県外などの遠方から運んでくるより輸送距離が短く済み、トラックなどによる輸送にかかるCO2の排出量を減らすことができるのです。
脱炭素社会を実現するには、一人一人の暮らしの中での取り組みが重要です。買い物の場面でも、環境への負荷に少し目を向けてみて、地産地消など、できることから取り組んでもらいたいと考えています。
2022年度、県では2030年度の温室効果ガス排出量53%削減(2013年度比)を目標とする「富山県カーボンニュートラル戦略」を策定し、併せて、県と県内15市町村が連携してカーボンニュートラルに関する情報を県民・事業者向けにわかりやすく発信するポータルサイトを開設したほか、富山県におけるカーボンニュートラルを知り、考えるきっかけとすることを目的としたシンポジウムを開催しました。
また、2023年度には新しい全県的な啓発を検討しており、今後も引き続き、脱炭素型ライフスタイルへの転換に向けて、行動変容を促す取り組みを進めていきます。
アプリ内で旬の食材情報なども見ることができる
地元で作られた食材を選んで食べる地産地消は、日々の暮らしの中で取り入れやすいゼロカーボンアクションです。ライフスタイルに合わせて無理なく、脱炭素につながる暮らしを実践してみましょう。
参考
(※1)環境省 令和4年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書
(※2)水田率:田畑の耕地面積のうち、田が占める割合
(※3)環境にやさしい漁:富山湾の定置網漁のほとんどが漁港から4km・20分程度と近い所で行われることから漁船の燃料使用量が少なく、また、網をしかけ魚がくるのを待って、入ってきた魚を獲る「待ち」の漁法