企業は今、脱炭素社会の実現に向けて、事業活動により自ら排出するCO2だけでなく、バリューチェーン全体におけるCO2排出量の削減を求められています。建設時から顧客に引き渡したあとの運用まで、建物のライフサイクル全体を考えて脱炭素化に向けた取り組みを実施している清水建設(スマートエコエナジー)の岡本 賢さん、関 泰三さん、益戸 智生さんに話を聞きました。
- 岡本 賢(おかもと さとし)(左)
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清水建設株式会社 LCV事業本部 BSP事業部 新電力部 主査 兼 スマートエコエナジー株式会社 グリーン電力営業部 統括マネージャー。
- 関 泰三(せき たいぞう)(中央)
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清水建設株式会社 LCV事業本部 BSP事業部 BSP部 第2グループ 主査 兼 スマートエコエナジー株式会社 グリーンソリューション部 統括マネージャー。
- 益戸 智生(ますど ともき)(右)
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清水建設株式会社 LCV事業本部 BSP事業部 新電力部 兼 スマートエコエナジー株式会社 テクニカルサポート部 統括マネージャー。
2030年までに自社保有のオフィス・物流施設で再エネ100%を目指す
「自社の活動による負の影響をゼロにするだけでなく、顧客や社会にプラスの環境価値を提供したい」という考えの下、環境ビジョン「SHIMIZU Beyond Zero 2050」を掲げている清水建設。同社は、2050年度に「事業活動により自ら排出するCO2」と、顧客に引き渡しした設計・施工物件の運用時における「お客様が排出するCO2」排出量をゼロとすることを目標に設定。そのための取り組みとして、同社の不動産事業部門が保有する賃貸物件に、再生可能エネルギー由来の電力を順次導入しています。同社の持分割合が50%以上、かつ同社が電力需給契約を締結している賃貸オフィス・物流施設を対象に供給電力の再エネ化を進め、2030年度までに再エネ電力の導入率100%を達成する計画です。
2021年4月には横浜にある大規模賃貸オフィスでバイオマス発電由来を主とした再エネ電力の利用を開始。同年8月には、東京・横浜・埼玉の賃貸オフィスおよび賃貸物流施設の全体(共用部・専有部)を対象に、グリーン電力証書(再エネによって得られた電力の環境付加価値を証書化したもの)やトラッキング付非化石証書(固定価格買取制度の対象となる非化石電源によって発電された電気の環境配慮の価値を証書化したもの)などの環境価値に基づく再エネ電力の供給を開始しました。3施設の年間総電力使用量は約14GWhに上り、これらの再エネ化により年間約5,700トンのCO2排出量削減が見込まれています。また、再エネ電力の導入に伴う電気料金の増加分はテナント企業に転嫁せず同社が負担するため、対象施設に入居するテナント企業は従来と同等の料金単価で自社利用電力の再エネ化を図ることができます。
環境価値証書の活用からPPAモデルまで、多様な施策で再エネ化を推進
これら3施設に導入する再エネ電力プランは、小売電気事業を手掛ける同社グループ会社、スマートエコエナジーが供給するものです。清水建設は、建物のライフサイクルにわたり価値を生み出し向上させることを目指し、再エネやIOTなどを活用した包括的なソリューションを提供するLCV(Life Cycle Valuation) 事業を展開。同事業において、再エネ開発や電力小売りなどを担うのがスマートエコエナジーです。清水建設が保有する物件やグループ会社の事業所を中心に、既存の建物への再エネ導入を進めるとともに、新築物件においても建設工事期間中から運用時にわたるまでの使用電力の再エネ化に取り組んでいます。
提供する電力プランは、トラッキング付非化石証書やグリーン電力証書などを使用し、実質再エネ100%を実現する「Ecologyグリーンプラン」や、Jクレジット(温室効果ガスの排出削減量や吸収量をクレジットとして国が認証する制度)などの活用によるカーボンオフセット電力を供給する「Ecologyプラン」など。今後は、屋上を活用した自家消費型太陽光発電(オンサイトPPA)や、遠隔敷地から再エネ電力の供給を受けるオフサイトコーポレートPPAの提供など、多様な施策によって、顧客の建物のライフサイクル全体を通じた脱炭素化に貢献していきます。