【往復書簡】環境問題で気になることはなんでもずばり環境省に聞いてみることにした。

マルチクリエイター いとうせいこう
環境省 地球環境局 国際連携課長 川又孝太郎

プロフィール

いとうせいこうさん似顔絵イラスト
Ito Seiko

作家・クリエイター いとうせいこう

1984年早稲田大学法学部卒業後、講談社に入社。
86年に退社後は作家、
クリエイターとして活字、映像、舞台、音楽、ウェブなど、
あらゆるジャンルにわたる幅広い表現活動を行っている。
2021年に始動した「いとうせいこう発電所」では、再生可能エネルギーの生産にも取り組む。

環境省 地球環境局 国際連携課長 川又孝太郎

東京大学工学部卒業。
同大学院国際協力学博士課程修了。博士(国際協力学)。
1994年より環境省に勤務。
在ドイツ日本大使館参事官、環境計画課長等を経て
2022年7月より国際連携課長。
2015-18年のドイツ赴任時に、再生可能エネルギーに目覚め、
その普及をライフワークとする。

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Ito Seiko

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いとうこせいこうがずばり!環境省に聞いてみた。

Q&A 1

いとうせいこうさんイラスト
いとう「こんにちわ。川又さんとはたまにイベントなんかですれ違うんですが、実はどういう方なのかよくしらないんです。例えばどういう立場で、どういう仕事をしてるのか、是非この際教えてください!」
川又さんイラスト
川又「はい、環境省の者です。そう見えないとよく言われますが…」
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いとう「なにしろヒゲが目立ちますもんね(笑)」
川又さんイラスト
川又「いやいや…。で、今は環境分野の国際協力の仕事をしています。2018年まで3年間ドイツの日本大使館に出向していまして、そこで再生可能エネルギーの可能性に魅せられて、それ以降再エネの普及をライフワークにしているんです。たくさんの方々に再エネのメリットを知っていただくために、音楽イベントとコラボしたりもしているので、せいこうさんともたまにお会いするんですよね」
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いとう「なるほど、『普及』側の方だったんですね。しかも環境大国で、世界をリードするドイツで学ばれてきた」
川又さんイラスト
川又「はい」
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いとう「じゃ、早速質問しますね。このメールのやりとり、つまり往復書簡は“僕がわからないと思った環境問題をすぐに川又さんに聞いてみる”というものなので。ちなみに個人的に思いついて提案して、まったくなんのバックもない状態で、川又さんに受け入れてもらいました」
川又さんイラスト
川又「はい、なんでも聞いてください」
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いとう「では。この頃まさに話題なのは、“太陽光パネルの初期型の耐用年数が二十年だかで、これからすぐ大量廃棄が始まる!”とSNSなどで回ってくるんですが、これは本当ですか? そして、廃棄の際の問題点を環境省ではどうクリアする目論見なんでしょうか?
次世代、次々世代のパネルは僕も色々見ていて、日進月歩の技術革新があるのでお互いさまざま確認しあいたいところですが、その前にまずは初期型問題をきちんと知りたいんです」
川又さんイラスト
川又「はい、太陽光パネルの廃棄の問題はきちんと対処できます。リサイクルで言えば、実は太陽光パネルよりも量もずっと多く、物質の種類が多様な住宅・建物や自動車もきちんと処理がされていますよね。
環境省でも太陽光パネルのリサイクルにあたっての留意事項をまとめたガイドラインを策定しています。さらに、大量廃棄が予想される2030年代後半を見越してリサイクルを促進するための制度的検討も進めています」
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いとう「なるほど、で、その際にどのくらい“処理しきれない物質”が出る予測ですか?つまりゴミになるおそれです」
川又さんイラスト
川又「環境省では2030年代後半に最大で年間50~80万tのパネルが排出されると推計していますが、それら全てを円滑にリサイクル・処理できるよう、実態調査や制度的検討を進めているところです。なお、現状でも、既に太陽光パネルをリサイクルできる施設が導入されており、環境省の調査結果からも現在の排出量に対して十分な処理能力があると考えていますが、大量廃棄が見込まれる2030年代後半に向けて、太陽光パネルのリサイクル設備の導入に対する補助等も行っています」
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いとう「ふむ、最大で年間50~80万tはなかなか大きな数字ですね。ぬかりなく是非よろしくお願いします!僕もしっかり見張りますよ!」

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Q&A 2

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いとう「とにかく気になることをひたすら聞くんですが、太陽光パネルのうち、上部の細目のパネルで太陽光エネルギーを取り、隙間から下に射し込む光で作物を育てる、あるいは家畜のえさとなる牧草を育てるなど、いわゆる『ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)』という日本発のアイデア&技術の有効性を日本のあちこちで感じます。そもそも、こうして再生エネルギーを生み出すことは、例えば太陽、例えば海の波、あるいは風力といった自然現象を利用して価値を育てるわけなので、まさに第一次産業のようにとらえたほうがいいように思うんですね。ということは当然、農業や漁業との密接な連動が大きな力になると考えられるんですが、環境省としてまず農林水産省とか、他の農業関係団体と手を結んでしっかり進めているプランとかあるんですか?」
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川又「いわゆる『ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)』については、農水省も環境省も推進しています。平地の少ない日本では、農地での再エネの可能性は大きいです。また、近年は農業人口が減ってきていて、耕作放棄地が増えており、その有効活用としても注目されています。そのため、農水省では『農山漁村再エネ法』という法律を作って、営農型太陽光発電を含め、農山漁村で行う再エネを推進するための枠組みを作って後押しをしています。環境省も営農型太陽光発電に対する補助金を設けています。ただ、営農型太陽光発電はまだまだ知られていないので、普及の後押しとなるよう、せいこうさんもPRを是非よろしくお願いします!」
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いとう「ちょっと待った!『農山漁村再エネ法』!?なんですか、それは?農水省にかわって是非くわしく教えてください。特に新しく農業を始めたいと思う人たちに、同時に再エネをやろう!と思ってもらえるように」
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川又「農山漁村再エネ法は、地域の農林漁業の健全な発展と調和をとりながら、再エネを農山漁村で促進することを目的とした法律です。この法律では農山漁村で再エネを導入しやすくするために、再エネの導入に際して地域の関係者との連携を図ることや、再エネ設備の設置に関係する申請手続をワンストップ化することが規定されています。再エネの導入により地域の活力や持続可能性を高め、ひいては農林漁業の発展に結び付けることができます。営農型太陽光発電は、光熱費の削減や売電による収入で農業の経営を下支えする効果もあります。営農型太陽光発電のほかにも、荒廃農地を活用した太陽光発電や地域の資源を用いたバイオマス発電なども一次産業と調和した再エネと言えます。地方農政局等に国の相談窓口がありますので、新しく農業を始める方はぜひ再エネ導入も検討してください!」
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いとう「なるほど。たとえば農業を始める時、“上でエネルギー、下で農作物”といういわば『同時二毛作※』となる営農型太陽光発電などの導入で収入を増やすことが可能なんですね。そうした『農&エネ』のわかりやすい画像とかないですか?つまり営農型太陽光発電と緑が一体化したやつ。ここに貼っておくと一目瞭然だと思うんで」

※いとうせいこうさんのアイデアによる造語です。

川又さんイラスト
SUNファーム

(写真提供:SUNファーム)

いとうせいこうさんイラスト
いとう「いいですねー。僕も2022年の春に福島で見た、太陽光パネルと麦の共存の様子を貼りますね。二本松有機農業研究会代表・大内さんの営農ソーラーです。」

二本松有機農業研究会代表・大内さんの営農ソーラー

いとうこせいこうがずばり!環境省に聞いてみた。

Q&A 3

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いとう「さて、川又さんはエジプトで11月に開かれたCOPに行ってたでしょう? 世界はどんなスピードで再生エネルギーに向かってるんですか?
近頃はウクライナの状況によってヨーロッパがエネルギー不足で、再生可能エネルギーへの取り組みが早くなったとも、逆に遅くなったとも言われます。正反対の情報が行き交ってる。
川又さんが見たほんとのところを教えてください!」
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川又「はい、エジプトで開催された気候変動COP27に行ってきました。
COP27で多くの国がウクライナ危機の下でも再エネ拡大の歩みは止めないと主張しました。
再エネを増やすには一定の時間がかかるので、再エネで足元のエネルギー不足を賄うことはできません。
でも、再エネを増やすと将来的にロシア依存から脱却できるので、各国とも再エネへのシフトを加速化しようとしています。
国際エネルギー機関も10月27日に、ウクライナ危機が引き金となって、2030年頃までに化石燃料需要が頭打ちとなり、再エネへの移行が急速に進むという見通しを示しています。」
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いとう「“多くの国”の中で特に積極的なのはどこでしたか? そして消極的な国もCOP27の中には存在しているのでしょうか? もし存在しているとすると、どんな理由でそうなっていると推測されますか?
それと、再生可能エネルギーの中では、どんな割合(太陽光、風力、波力などなどの)で需要供給が増大してるんでしょうか?
なおかつ増えつつある分野で、特に注目すべき新たな技術革新は見受けられましたか?
質問、矢継ぎ早ですいません(笑)。ゆっくりお答えください!」
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川又「再エネの拡大に対して、消極的な国というのは聞いたことがありません。中東の産油国も太陽光発電をどんどん増やしており、再エネ拡大は世界中のトレンドと言っていいでしょう。
ロシアへの化石燃料の依存が高いヨーロッパでは、脱ロシアを図るため、再エネ目標を前倒ししています。ドイツは2030年に電力中の再エネ比率を80%以上とし、英国は2030年までに電力の95%を脱炭素化するとしています。
再エネの中で主力は風力と太陽光です。国際エネルギー機関は、今後5年間で過去20年分に匹敵する量が増え、2025年には石炭を抜いて世界最大の電源になるとの見通しを示しています。技術革新として、私が注目しているのはペロブスカイト太陽光電池です。薄くて軽いので、荷重の問題で従来型の太陽光発電が載せられない屋根はもちろん、建物の壁面や窓にも貼ることができ、現状よりもずっと多くの場所に設置できるので、ある意味で街全体を発電所とする技術です!」

写真:アイチューザー株式会社主催のオンラインイベント「再生可能エネルギーで、これからどうなる?私たちの暮らし。」(2022年10月13日開催)より

写真:アイチューザー株式会社主催のオンラインイベント「再生可能エネルギーで、これからどうなる?私たちの暮らし。」(2022年10月13日開催)より

いとうせいこうさんイラスト
いとう「あ、ペロブスカイト太陽光電池!
今大急ぎで作っている再エネに関するインタビュー集にも出てきます。
日本で開発された技術なんですよね? 日陰でも発電出来るとか。
ただし名前が覚えにくいので、いい略称がないかと思ってます(笑)」
川又さんイラスト
川又「はい、2009年に桐蔭横浜大学の宮坂力教授によって発明された技術です。弱い光でも発電可能なので、曇りや雨の日、さらには室内の弱い光でも発電できるんです。
また、非常に薄く作れるので、とても軽く、ビルの壁や窓、車の屋根など様々な場所に設置できます。発電効率も研究室レベルでは従来型と同じくらいにまで高まっていて、今後、急速に普及が進むと予測されています。
そのため、商品化に向けて、世界中で熾烈な開発競争が繰り広げられています。海外では既に商品化するところも出ていて、日本でも2025年には東芝が販売する計画なので、いとうさんも近々目にすることができると思いますよ!
そして、街全体が発電所になっていくのを想像するとワクワクしませんか?ペロブスカイトって名前は確かに言ってて舌かみそうですが、現在のシリコン太陽電池も単に太陽電池と言われているので、シンプルに薄型太陽電池とか呼ばれるんじゃないですかね(笑)。」
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いとう「とりあえずそう呼んでおきましょう!」

いとうこせいこうがずばり!環境省に聞いてみた。

Q&A 4

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川又「分かりやすく主張を伝えていかないとと思っているんですが、ほんとに難しいです。だから、せいこうさんにも手伝っていただきたいとこの連載も始めた訳で💦
再エネについては、そのメリットですね。デメリットはよく報道されているのですが、メリットが伝わらない。。。
メリットがあるからこそ、世界で普及が進んでいるんですよ。

まずは経済的メリットです。屋根置き太陽光発電を例にとると、標準家庭で設置費100万円程度で10年前の半分以下になっています。
東京都の試算では、都の補助金使えば6年で元を取れます(補助金なしでも10年)。
パネルの寿命は20-30年なので、その後の10年20年間の発電分はすべてプラスになります。
いまウクライナ危機で電気代が上がっているので、さらにプラスが増しています。

次に防災上のメリットです。家に太陽光があれば停電になっても電気が使えます。2019年の台風15号、19号や北海道全体での停電など日本は災害が多い。
今やあらゆるものが電化されているので、停電になるとお風呂にも入れません。
備えあれば憂いなし、ですよね。

現状の宣伝活動としては、ホームページが主ですね。不定期でイベントも行っています。雑誌や新聞などとのタイアップもたまにやっています。
ただ、予算の制約と、環境省の発信力が小さいので、できるだけ既存のメディアとコラボしてやることを最近は心がけています。
例えば、再エネスタートの動画でも、環境省サイトではビューアー数が100回程度しかないですが、雑誌のサイトでは同じ動画が2万回も観られているんですよ!
SNSの発信もしていますが、おそらくもっとよいやり方があるんだと思います。農水省の若手のYoutubeとかバズりましたよね。
伝え方の工夫ももっともっとして、多くの方に知ってもらうようにしたいです。
せいこうさんの目から見てどう改善したらよいと思いますか?」
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いとう「飾らずおごらず、特に前半のアピールなんかとても素晴らしいと思いました。
ちょうど今、超特急で『今すぐ知りたい 日本の電力 明日はこっちだ』という対談本を作ってて、なぜか攻撃されやすい再生可能エネルギーの現在を、世界の事情も含めてさまざまな方の言葉で語っていただいてます。三月頭には出ると思いますが、そこでも「わかりやすく、胸に響く」ように気を配りました。
しかしそれがメディアの中でどう効果的に刺さってくれるか。ここはなかなか難問ですね。
僕が『いとうせいこう発電所』をやってるのもひとつのアピールの手段ですし(誰でも発電出来るということの)、これ以降は千葉県匝瑳市でソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)に意欲的に取り組んでいらっしゃる東光弘さんのご協力を得て、「新しい技術を常に入れ替えて導入する再生可能エネルギーのフィールド」を『いとうせいこう第二発電所』として作って、見学も募れないかなあと勝手に思ってます。

あ、そうだ! そうなんですよ。どんなに小さくてもいい。いや、小さいからこそいいんだけど、あらゆる再生可能エネルギーを手軽に導入して「小さな村」を作るといいと思ってます。
問題があればそれを公開して解決しながら、農業や酪農などとも連携し、蓄電技術も追求し、そこでかつて武者小路実篤が始めた「新しき村」のエネルギー版をやる。新技術が出来たら即、そこで試してもらう。人が見に来る。小さなフェスもやる。ネット配信もする。
学校で作った田んぼみたいなものの、ほんの少し大きなものという感覚です。
役所はすぐ大きく作ろうとする。それが失敗のもとですよ。
そうじゃなくてみんなが問題を把握出来るサイズ、魅力にしびれてもらえる大きさで、『明日の村』!
まず環境省の前にビニールハウスくらい立てて、そこからw?」
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川又小さな“明日の村”、実はフェルムハイト村というベルリン郊外で近いことをやっているんですよ。
たくさんの視察を受け入れて、それを村の観光収入にもしていて。せいこうさんにはぜひ行ってご自分の目で見てもらえたらと思います。
環境省から出向しているドイツの日本大使館の職員がお手伝いしますよ!

いとうこせいこうがずばり!環境省に聞いてみた。

Q&A 5

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いとう「前回の話を引っ張って申し訳ないんですが、ドイツのフェルトハイム村のやってることをさらにくわしく、少しずつうかがっていいですか? 出来れば写真入りで!」
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川又「もちろんです!フェルトハイム村はベルリンの南西60kmにある人口130人の小さな村で、『エネルギー自給村』と呼ばれています。」
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いとう「130人!いいサイズです」
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川又「そこで2008年から電気と熱を自給自足しており、世界中から視察者が後を絶えません。あまりにも多いことから、これを観光収入につなげようと視察センターを作り、有料でガイド付きツアーを提供しています」
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いとう「見たくなりますもんね。世界の未来だから」
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川又「私もベルリンの日本大使館にいた2007年に、出張者とツアーに参加しました。その時の写真も貼り付けますね。詳しくは以下の英語サイトを見てください。Home - Neue Energien Forum Feldheim (nef-feldheim.info)

写真:フェルトハイム村
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いとう「ざっくり見ました。自転車で回るツアーとかよさそうだ!」
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川又「で、フェルトハイムの取組ですが、風力発電55基(123MW)、太陽光発電2.25MWに加えて、バイオガス熱電併給施設があります。
村にある畜産農家の牛や豚からの家畜糞尿と畑で取れたとうもろこしを原料に、電気のみではなく、熱も約500kWの能力で作り出し、熱供給管を通じて各家庭に配給しています。また、暖房需要が多くなる冬季には追加で木質チップのボイラーを使います。石油を毎年26万リットル節約しているということです!」
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いとう「そうなんですよね。結局電気だけじゃなく、熱エネルギーをどう生み出すかなんです。さすがフェルトハイム」
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川又「はい。これらの電気や熱は村が出資して設立した会社が各家庭に供給しています。ドイツではシュタットベルケといって、自治体が出資したエネルギー会社がドイツ全土で約1000社あります。もちろん、再エネで完全自給できているところはまだ限られますが、多くのシュタットベルケが将来実現することを目指しています。私もドイツ滞在中いくつも訪問しました。皆さん熱いんですよ!」
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いとう「それなんですよ、日本にもあって欲しい小さなコミュニティは」
川又さんイラスト
川又「彼らは電気の安定供給のために、10MWの能力の蓄電池も保有しています。
電気料金はドイツ平均に比べ25%も安く、また10年間据え置き価格になっています。昨今のウクライナ危機で、電気も熱も平均よりももっと下がっていると思われます」
いとうせいこうさんイラスト
いとう「もちろん見にも行きたいし、とにかくこのモデルケースで50人ほどが、出来れば東京の中で再生エネルギーを作り出しつつ溜めつつ使用する。そういう実験拠点があるといいですねー。小さければ出来るのでは?
ただし、今回の写真はちょっとぼんやりしててわかりにくかったですw」

いとうこせいこうがずばり!環境省に聞いてみた。

Q&A 6

いとうせいこうさんイラスト
いとう「さてさて、話がただただ変わってしまっては無責任な対談になってしまいますので、前回までに出た『実験拠点』についてさらにしつこくw。
環境省では全国各地に“観に行ける(出来れば体験型の)未来像のゾーン”とか作ってますか?よくあるのはパネル展示ですけど、そういうのじゃなくてあくまで体験主体の場所。
重ねて言いますが、どんなに小さくてもいいんで(むしろ小さくあって欲しい)教えてください。これを読んでる人が出かけやすいところだとよりうれしいです。」
川又さんイラスト
川又「ありますよ!
せいこうさんのリクエストに一番叶うんじゃないかと思うのは、小田原市のわんぱくランドでのプロジェクトです。ここではフェルトハイム村のように、再エネの地産地消に取り組んでいます。太陽光発電に蓄電池とEVを使って電気の需要と供給を一致させ、この地域で独立して運用できるようにしています。
この隣には「いこいの森 YURAGI」というワーケーションができる施設もあるので、せいこうさんも見学がてら利用してみては!?小田原駅からバスで20分と近いですよ!」
いとうせいこうさんイラスト
いとう「へえー、なるほど。不勉強で存知あげませんでした!先日小田原に新作歌舞伎を観に行ったので、そのときに知っていれば……。
で、ちなみにこの「わんぱくランド」ではどのくらいの需要をまかなえてるんですか?地域の広さとか、戸数とか、結局“大きさ”にこだわってるように見えちゃいますが(笑)。要するに実効的なパワーのことです。
そしてここはどういう予算でやっていってるんでしょうか?つまりこれは他にやりたい小さな組織、あるいは自治体が意思をもって追随出来る仕組みなのかということです。
例えば、ひとつの町内で「ひとつやってみるか」となった場合、どういう方法があるのかってことです。」
川又さんイラスト
川又「わんぱくランドでは太陽光50kW、大型蓄電池1.5MWhを設置し、停電時には独自に園内施設の照明や冷暖房、上下水道設備等の電力を供給します。予算は経産省の地域マイクログリッド構築事業という補助金を活用しています。環境省でも再エネや蓄電池の導入に使える補助金は色々とあって、以下のサイトにまとめていますので、ご参照ください。
https://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/enetoku/index.html
いとうせいこうさんイラスト
いとう「そういうエリアがモザイク状に、つまり分散的に出来ていき、じきにネットワークもするのが僕の抱く未来の日本像なので、ますます気になります。他にもなんか僕好みの実験はないんでしょうかね?」
川又さんイラスト
川又「ほかにも、環境省では『脱炭素先行地域』という、再エネなどを活用して、2030年度までに民生部門の電力消費からのCO2を実質ゼロにする地域を全国で100以上作るプロジェクトを今年度から開始しています。既に46件を選定しており、阪神タイガースのゼロカーボンベースボールパーク(尼崎市)、世界遺産の姫路城(姫路市)、動物公園(千葉市)などの特色ある個性豊かな取組が実施されますので、乞うご期待です!」
いとうせいこうさんイラスト
いとう「それも知らなかった!それ面白いじゃないですか。推測するに野球場サイズとか、城サイズ、公園サイズで取組をしていくってことですよね? しかも各プロジェクトで手法が違うというか、その場所ごとのソリューションになっていく、と。いやこれ、僕は不勉強でお恥ずかしい限りなんですが、そういう不勉強な人間にも響く伝え方、してますかね(笑)?自分を棚に上げて他人のせいにしてますが。
発表のペーパー出して、ホームページでリンク組んで、では何かが足りなそう。発電所がある地域でいっせいに発電したり、蓄電した電気を使用してアピールするイベントとか……。もちろんそんなパフォーマンスをしなくても、その場所だからこその暮らしやすさ、通いやすさが一番なんですけどね。
川又さん、ここ、アイデア公募したらどうですか?そしてすぐに実現しましょうよ!」
川又さんイラスト
川又「そうですね。多くの方に知っていただける良いアイデアがあれば頂きたいです。実は「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」を昨年から開始していて、官民連携協議会を創り、普及啓発のためのアイデアを随時募集しています。この官民協議会には、脱炭素先行地域の自治体や参画している企業にも参加頂いているんですよ。個人でも参加可能ですので、是非アイデアをお持ちの方は登録して、アイデアをご提供願います!」
いとうせいこうさんイラスト
いとう「なんだ、それもあるのか!なんかつい、話がついているところのアイデアが優先なんじゃないかなあとか疑ってしまいますが、個人でも参加できるならそれは是非宣伝して欲しいです。
これまでに優秀で実行につながった例はありますか?それとリンクを教えてください!自分たちのコミュニティを作って、その新しい国民運動やその官民協議会にも手伝ってもらって脱炭素化することを是非広げたいので」
川又さんイラスト
川又「国民運動は、2022年10月に始まったばかりですが、企業や自治体から、脱炭素につながる様々な官民連携での取組提案がぞくぞくと届いているところです。
また、国民運動のもと、参画企業単独あるいは複数社が連携して取組を進め始めている事例もあります。今後の展開にご期待ください。

リンクはこちらです。
https://ondankataisaku.env.go.jp/cn_lifestyle/
(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)」