「省エネ住宅」とはどんな住宅?
~ポイントは「高断熱・高気密」と「日射遮へい」~
最近になって「省エネ住宅(省エネルギー住宅)」という言葉をよく目にするようになっています。
このままの言葉を素直に受け止めれば「エネルギー消費量が少ない住宅」となるのでしょうが、表に挙げるように、省エネ住宅に向かう工夫はとてもたくさんあります。
用途 |
建物の工夫 |
設備機器の工夫 |
暖房 |
断熱・気密性能を向上させる 日射取得性能を向上させる |
効率のよい暖房設備を選ぶ |
冷房 |
日射遮へい性能を向上させる 通風性能を向上させる |
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給湯 |
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効率のよい給湯器を選ぶ 節湯につながる水栓を選ぶ 保温性の高い浴槽を選ぶ 太陽熱温水器を設置する |
照明 |
太陽の光をうまく利用する |
効率のよい電球を選ぶ 調光機器や人感センサーを設置する |
換気 |
通風性能を向上させる |
効率のよい24時間換気設備を選ぶ |
家電 |
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効率のよい家電を選ぶ |
調理 |
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熱効率のよい調理機器を使う |
発電 |
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太陽光発電やコージェネレーションを設置する |
※これ以外に、設備機器の無駄遣いに注意するといった住まい方の工夫も重要です
筆者が「省エネ住宅ってどんな住宅?」と質問されたなら、「ここで挙げたすべての工夫を意識しながら、建設地の気象(寒さ・暑さ、日射量、風向きなど)、立地条件(日当たりなど)、施主の要望、予算などを考慮しながら、最大の省エネ効果と住まい手のメリットが得られることを目指した住宅」となります。
こうした定義を理解していただきつつ、これらの工夫におけるポイントを解説していきましょう。
そこでまずわかっておいていただきたいのは、「断熱・気密性能を向上させる」「日射遮へい(しゃへい)性能を向上させる」といった建物の工夫が何より重要で基本的な工夫になるということです。ここで気密性能とは「建物の隙間がどれだけ少ないか?」を示す性能であり、日射遮へい性能とは「夏に日射熱をどれだけ入れないか?」を示す性能のことです。断熱・気密性能と日射遮へい性能をしっかり備えることによって「最小限の暖房エネルギーで冬暖かく」「最小限の冷房エネルギーで夏涼しく」が得られるキホンができます。注文住宅を建てる、分譲住宅を購入する、いま住んでいる住宅をリフォームする、といったとき、まずは何よりこの2つの性能向上を考えるべきです。
この2つの基本性能が一定に確保できたあとに、その他の建物の工夫を考え、その次に設備機器の選択や設置に向かうという順番が適切です。
ではさらに、この2つの基本性能を実現させるポイントを挙げてみましょう。
<断熱・気密性能を向上させるポイント>
- ○最低限、省エネルギー基準で定められている断熱性能は確保する
- ○さらに「最小限の暖房エネルギーで冬暖かい」を実現したいなら、省エネルギー基準で定められている断熱性能の1.5倍の性能確保を目指す
- ○気密性能の向上を意識し、実践している住宅会社を選ぶ
<日射遮へい性能を向上させるポイント>
- ○窓の日除けを徹底する(外に付けるブラインド、すだれ、シェードがとても有効)
- ○屋根(天井)、外壁の断熱性能を向上させる
ここで挙げたポイントのうち、「窓の日除けを徹底する」という工夫が現状として“盲点”になっていることにご注意ください。屋根(天井)や外壁の断熱性能を向上させるよりも、窓の日除けを徹底するほうが「最小限の冷房エネルギーで夏涼しく」の実現には圧倒的に効果があるのですが、住宅会社も一般の生活者もこの認識をしっかり持っていないように感じます。断熱・気密性能を向上させることと同時に、窓の日除けをしっかり考えてください。この工夫はいま住んでいる家でも実践できますし、実践してみればその効果が実感できるはずです。
最後に、冒頭に書いた「筆者が考える省エネ住宅」を実現したいと思われるなら、次の2つを備えた住宅会社をじっくり探してください。
- 1. 省エネ住宅に向かう工夫のすべてを理解し、十分な知識や経験がある
- 2. その中でも「断熱・気密性能の向上」「日射遮へい性能の向上」が何より重要であることを理解し、その実践を行っている
さて次回は、今回書いた内容を踏まえつつ、皆さんの日々の生活に密接した「住まい」と「健康」に関することで、ぜひ知っておいていただきたい「窓の結露」や「家の中の温度差と健康リスク」といったテーマでお届けします。
野池 政宏
Forward to 1985 energy life代表理事。
「小さなエネルギーで豊かに暮らせる住まい」の普及をライフワークとし、パッシブデザインや省エネ住宅に関する、理論的で幅広い情報提供を継続的に行っている。
主な著書に「小さなエネルギーで豊かに暮らせる住まいをつくる」「パッシブデザインの住まいと暮らし」「本当にすごいエコ住宅をつくる方法」。