住まいの温度と健康との深い関わり
様々な調査で、いまの住まいに対して「冬寒い」「夏暑い」という不満を持っている人はたくさんいることがわかっています。断熱性能の低さは「冬寒い、夏暑い」の両方の原因になり、さらに窓の日除けに対する意識の低さが「夏暑い」の大きな原因になっているのですが、こうした不満を持ってしまう理由をもう少し詳しく考えてみます。
様々な調査で、いまの住まいに対して「冬寒い」「夏暑い」という不満を持っている人はたくさんいることがわかっています。断熱性能の低さは「冬寒い、夏暑い」の両方の原因になり、さらに窓の日除けに対する意識の低さが「夏暑い」の大きな原因になっているのですが、こうした不満を持ってしまう理由をもう少し詳しく考えてみます。
人は身体と周囲との間で熱のやりとりをしていて、たくさんの熱が逃げていくときに「寒い」と感じ、逆に熱が逃げにくくなって身体に熱がこもってしまうときに「暑い」と感じます。ここで「周囲」とは「自分の身体の周りにある空気(部屋の空気)」と「自分の身体に面しているもの(壁・窓・天井・床)」です。この2つの温度が低いと身体からたくさんの熱が逃げていって「寒い」と感じ、温度が高いと「暑い」と感じるわけです。
こうして実際に感じる温度を「体感温度」と言います。部屋の空気の温度(室温)の影響が大きいことは誰もがわかっているのですが、壁・窓・天井・床の表面温度の影響が大きいことは十分に理解されていないように感じます。つまり、この2つの温度を適切にでき、体感温度が適切な住まいが必要だということです。
もうひとつ重要なことは「部屋間の温度差」です。暖かい部屋から寒い部屋に移動したときに「寒っ!」と感じた経験がある人は多いはずです。急激に身体から熱が逃げていくことでこうした感覚を覚えてしまうわけです。
ここまでは「快適か不快か?」「寒さや暑さに不満があるか?」という話だったのですが、実は「寒い、暑い」と感じるような住まいの環境は「健康」にも大きな影響を及ぼしています。これはよく考えると当たり前のことで、人体が「寒い、暑い」と感じる機能を持っていなければ、気がつかないうちに熱がどんどん逃げていったり、熱がどんどんこもっていったりして、命の危険につながるからです。つまり「寒い、暑い」と感じることは、自分の健康への注意信号なのです。ところが、そうした認識で住まいを選んだり、リフォームを考えたりする人の割合は極めて少ない状況です。
とくに最近になって「住まいの温度と健康との関係」が明らかになってきています。具体的には「断熱性能が高い家で暮らすとアレルギー疾患が少なくなる」「住まいの温度(とくに部屋間の温度差)が血圧変動に大きな影響を与える」といったことです。また家の中で熱中症になり(救急搬送される場所の1位は家です)、救急搬送されるニュースを毎年聞くようになっています。
そういうことを考えれば、いかに「部屋の温度を適切に保つか」「壁・窓・天井・床の表面温度を適切に保つか」「部屋間の温度差を少なくするか」ということの重要性がわかっていただけると思います。こうしたことと住まいや暮らし方との関係を整理してみたのでぜひ参考にしてください。
冬 | 夏 | |
---|---|---|
部屋の温度を適切に保つ | その部屋の断熱性能を上げること(※)で、暖房の効きが良くなり、暖房費を気にせず暖房できるようになる | その部屋の断熱性能を上げ(※)、窓の日除けに工夫することで、冷房の効きが良くなり、冷房費を気にせず冷房できるようになる |
壁・窓・天井・床の表面温度を適切に保つ | 建物全体の断熱性能をよくすることに加え、とくに窓の断熱性能が重要 | 建物全体の断熱性能をよくすることに加え、とくに天井の断熱性能が重要(一戸建てや集合住宅の最上階の住戸の場合等において屋根に直接日光が当たる場合) |
部屋間の温度差を少なくする | 建物全体の断熱性能を上げることが重要 |
さて次回は、一戸建てや集合住宅を購入予定、賃貸住宅に引越し予定の方に向けて、ぜひ知っておいていただきたい、省エネ住宅をつくる/選ぶとき、快適・健康に暮らすチェックポイント についてご紹介します。ここではきっとみなさん関心がある「具体的にどの程度の断熱性能や窓の日除けが必要なのか?」ということをお話しする予定です。
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