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日本国特許庁の脱炭素社会の実現に向けた取組について

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国際連携

「三極知財・環境問題シンポジウム」の結果概要

2022年3月17日、日本国特許庁(JPO)主催の下、米国特許商標庁(USPTO)及び欧州特許庁(EPO)との共催で、「三極知財・環境問題シンポジウム」をオンライン会議形式で開催しました。

日米欧の特許庁は1983年に「三極特許庁(Trilateral Offices)」の枠組みを立ち上げ、毎年長官級での会合を実施するなど緊密な連携を続けてきていますが、三極特許庁の枠組みで環境問題に関するシンポジウムを開催するのは初であり、特許制度を戦略的に活用してカーボンニュートラル技術が開発・普及された事例が紹介されるとともに、知財のカーボンニュートラル達成への貢献について議論されました。

開催者挨拶と基調講演の様子
(左上:JPO森長官、右上:EPOローワン副長官、
左下:USPTOハーシュフェルド長官代行、右下:WIPOタン事務局長)

また、2022年11月9日、米国ノースカロライナ州ダーラムにて開催された「第40回三極特許庁長官会合」では、デジタル化への取組、特許集約産業に関する分析、中小企業支援、包摂的イノベーションについて議論を行った事に加えて、三極特許庁長官会合が40回目という節目を迎えたことを受け、三極特許庁がこれまで行ってきた主な取組を振り返りました。日本国特許庁(JPO)の主導により2009年から導入された「共通出願様式」等の取組に並び、「三極知財・環境問題シンポジウム」の開催も重要な取組の一つとして採り上げられました。

日本国特許庁(JPO)は、今後も米国特許商標庁(USPTO)及び欧州特許庁(EPO)と連携しながら、脱炭素社会の実現を、知財制度を通じてサポートしてまいります。

「三極知財・環境問題シンポジウム」の結果詳細

「三極知財・環境問題シンポジウム」とは、三極特許庁※1が、環境問題に関して初めて共同で取り組む事業として開催されたシンポジウムです。

近年、気候変動問題は人類共通のグローバルな課題としてこれまで以上に認識されてきています。この問題を解決するためには、脱炭素社会を実現することが必要であると考えられますが、技術的ブレイクスルーなくしてこれを達成することは極めて難しい状況となっています。

知財制度は、そのような技術的発展を支えるためのものです。知財制度を活用することで、カーボンニュートラル技術の開発・普及を促進することにより、脱炭素社会の実現をサポートできる可能性があります。本シンポジウムでは、特に特許制度等を戦略的に活用してカーボンニュートラル技術が開発・普及された事例が紹介されるとともに、知財のカーボンニュートラル達成への貢献について議論されました。

冒頭、JPO森長官EPOローワン副長官USPTOハーシュフェルド長官代行による開催者挨拶の後、世界知的所有権機関(WIPO)タン事務局長により、知財がグリーンイノベーションを支える重要な要素であることについて基調講演がありました。

その後、知財を有効に活用したカーボンニュートラル技術の開発・普及に関する紹介がありました。

紹介事例

株式会社ユーグレナ(日本) 社長・創業者 出雲氏
ミドリムシ(ユーグレナ)を用いた次世代再生可能ディーゼルバイオ燃料が紹介されるとともに、基礎特許を単独で取得した上で共同研究を実施するという知財戦略についてお話をいただきました。
オーカンエナジー社(欧州) CTO・共同創業者 シュスター氏
廃熱利用発電プラントを販売する上での、170件の特許からなる知財ポートフォリオが鍵になったことについてお話しいただき、資金調達、パートナーとの交渉、国際的な事業展開において、特許が果たす重要な役割が強調されました。
ノケロ社(米国) CEO・創業者 カトサロス氏
低コストかつ低環境負荷の太陽光発電LEDが紹介されるとともに、特許と意匠の両方で製品を保護するという知財戦略についてお話しいただきました。

続くパネルディスカッションでは、WIPOクワクワ事務局長補によるモデレートの下、三極ユーザー団体代表者である別宮理事長(日本知的財産協会)バウヴァー氏(ビジネスヨーロッパ)ペティ氏(米国知的財産権法協会)及びブローディ氏(米国知的財産権者協会)並びに三極特許庁代表者である福田国際政策課長(JPO)メニエール チーフエコノミスト(EPO)及びトゥール チーフエコノミスト(USPTO)の間で、知財のカーボンニュートラル達成への貢献について様々な議論が行われました。

その議論の中でJPOは、環境問題を解決する上でスタートアップの力が重要であることを述べ、知財ポータルサイトである「IP BASE」や、知財アクセラレーションプログラム(IPAS)を紹介しました。


※1「三極特許庁」:日本国特許庁(JPO)、欧州特許庁(EPO)、米国特許商標庁(USPTO)という日米欧三庁から構成された1983年から継続する重要な協力の枠組み。

「三極知財・環境問題シンポジウム」の開催概要

1.日時

2022年3月17日(木)

2.参加者

日本国特許庁 森 清 長官
欧州特許庁 スティーブン・ローワン 副長官(特許付与プロセス部担当)
米国特許商標庁 ドリュー・ハーシュフェルド 長官代行
世界知的所有権機関 ダレン・タン 事務局長
世界知的所有権機関 エドワード・クワクワ 事務局長補
株式会社ユーグレナ 社長・創業者 出雲 充氏
オーカンエナジー社 CTO・共同創業者 アンドレアス・シュスター氏
ノケロ社 CEO・創業者 スティーブン・カトサロス氏
日本国特許庁 福田 聡 国際政策課長
欧州特許庁 ヤン・メニエール チーフエコノミスト
米国特許商標庁 アンドリュー・トゥール チーフエコノミスト
日本知的財産協会 別宮 智徳 理事長
ビジネスヨーロッパ ジャック・バウヴァー氏
米国知的財産権法協会 フィリップ・ペティ氏
米国知的財産権者協会 サン・ヤング・ブローディ氏

※役職については2022年3月17日時点のもの

3.参考


特許庁のYouTubeチャンネルにてシンポジウムのダイジェスト動画も掲載しております。よろしければご覧ください。

Shortダイジェスト動画
Longダイジェスト動画
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