一歩進んだ宅配ボックスで再配達を防止。マンション業界の取り組み

宅配ボックス設置しやすく

国土交通省は、2017年11月に、共用廊下と一体化した宅配ボックスについて、容積率規制の対象外とするルールの明確化を行いました。ルールの明確化前には、容積率にゆとりがない場合、マンション開発企業が宅配ボックスの設置を断念する例もありましたが、ルールの明確化後は容積率を気にせず、宅配ボックスを設置できるようになりました。
マンション開発企業各社でも、それぞれに工夫した宅配ボックスの設置や運用サービスに取り組んでいます。今回はその事例をいくつかご紹介します。

※容積率:建築物の延べ面積(床面積の合計)の敷地面積に対する割合
各住戸専用の宅配ボックスと共用ボックスで、設置率120%に
─大京─

「ライオンズ早稲田ミレス」(東京都新宿区・2018年2月入居)に、宅配ボックスメーカーと共同開発したオリジナルの「ライオンズマイボックス」を設置し、再配達防止を図っています。その特長についてお話を伺いました。

〈取材にご協力いただいた方々〉株式会社大京 建設管理部 商品企画室 室長 兼 商品開発課 課長 中山雄生氏、同 商品企画室商品開発課 係長 小田島隆行氏、同 商品企画室建築企画二課 主任 大浦武氏
外観

メールボックスと一体型タイプを開発

■「ライオンズマイボックス」の開発について

建設管理部 中山氏:私もマンションに住んでいますが、宅配ボックスがあっても荷物が受け取れないことが多々あります。実態を調査しても満杯警報がよく出ていましたし、お客様から不満の声もありました。そこで、物件の企画を考える際に、スペースとコストがかかっても全住戸に宅配ボックスを入れようという話になったんです。荷物が確実にお客様に届くことと、再配達問題という社会課題の解決をコンセプトに、「再配達ゼロを目指した宅配ボックス」に取り組みました。
建設管理部 大浦氏:1世帯につきメールボックスと一体化した住戸専用宅配ボックスが1つ、さらに従来からの共用のボックスも設置し、世帯カバー率120%を実現しました。大きさは宅配便でよく使用されるサイズを調べ、3辺の合計が80センチまでのサイズが入る大きさにしました。大型の荷物は共用ボックスに入れていただきます。
また、従来は1つの宅配ボックスに1つの荷物しか入れられなかったのですが、宅配大手3社の荷物であれば複数個入れることを可能にしました。これまで大型の宅配ボックスに小さな荷物が入れられ、他が入れられない…ということが散見されましたが、それが回避できます。
また、メールボックスと一体化したことで、設置面積も少なくてすみます。

ライオンズマイボックス

■グッドデザイン賞受賞について

中山氏によれば、大京が初めて宅配ボックスをマンションに設置したのは1989年(竣工ベース)のこと。しかし、他の住宅設備に比べて、宅配ボックスの仕様構造などはこれまであまり進化していなかったそうです。大浦氏は、「グッドデザイン賞受賞は、ちょうど再配達問題が社会的な問題として認識されてきたこともあって、その良さが認められたのだと思います。社内でもこれまでにないほど好評でした」と笑顔で語っていました。

     

「ライオンズマイボックス」は、今後も物件の特性にあわせ、分譲に限らず、賃貸でも1棟リノベーション物件でも順次導入していく予定とのこと。また、今後は、余ったスペースに宅配ボックスを入れるのではなく、企画の段階から、宅配ボックスの優先順位を上げていきたいとお聞きしました。

ライオンズ早稲田ミレス
http://lions-mansion.jp/MA151007/

取材風景
すべての住戸の玄関前に宅配ボックスを設置
─三菱地所レジデンス─
     

「宅配便は家まで届けるもの」というコンセプトのもと、ICカードを利用した「各住戸玄関前宅配ボックス」の設置に取り組んでいます。この点についてお話を伺いました。

〈取材にご協力いただいた方々〉三菱地所レジデンス株式会社 第二販売部 石毛瞳氏、クオリティ業務部 浅岡友也氏、商品企画部 藤谷誠矢氏

再配達削減とユーザーの利便性向上に貢献

■取り組みの背景について

商品企画部 藤谷氏:自分自身が注文した水が1階の宅配ボックスに届けられることがあり、以前から不便だと思っていました。一方で、お客様へのアンケートからも「マンションの共用エントランスにある宅配ボックスがいっぱいで使えない」、「重い・大きい荷物を共用部から自室に運ぶことが大変」という声が上がっていたこと、再配達によるCO2排出量増加が社会問題化したこともあり、宅配ボックスメーカーと共同で開発に取り組むことになりました。最大のポイントは、各住戸専用の宅配ボックスが家の前にあることで、住戸数に対する宅配ボックスの設置率が100%になり、宅配物の再配達削減に貢献するとともに、ユーザーの宅配ボックスに対する悩みが緩和され、より快適で便利な暮らしの実現に貢献できる点です。
第二販売部 石毛氏:このボックスは、飲料水の箱やお米、ゴルフバッグなど、大型の荷物にも対応しています。駅から近い都市型マンションに導入予定なのですが、共働きでネット通販をよく利用されるような方にとっては、非常に良いシステムではないかと思います。
クオリティ業務部 浅岡氏:今後の物件においても、立地や物件特性に応じて導入していきたいと思います。

利用イメージとサイズ

■ICカードを使ってトラブルを予防

藤谷氏によれば、「玄関前に宅配ボックスを設置する場合の最大のハードルは、セキュリティ面でのトラブルをどのように予防するかということ」。今回のシステムでは、宅配企業の方がICカードを使って1階の共用エントランス及び各住戸前宅配ボックスを開錠することで、開錠記録の管理を可能にする一方で、夜間はICカードを使用しても開錠ができないように制限をかけたり、万が一紛失の場合は利用停止できる仕組みになっているそうです。
まずは宅配ボックスメーカーと提携する宅配企業と摺り合わせを進めており、ネットスーパーや食材配達企業のエントリーなども検討しているとのことです。

     

今後もマンション開発企業として、再配達防止に何が必要かを考え、住まわれる方にとっても、宅配される方にとっても、負担の少ない住まいを提供していきたいとのお考えをお聞きしました。

ザ・パークハウス 文京千石一丁目
ホームページ開設準備中(2018年4月3日開設予定)

取材風景
スーパーとも提携。使い勝手を向上させたデリバリーステーション
─野村不動産─

「プラウド綱島SST」(神奈川県横浜市港北区・2018年3月入居)に、新たな宅配ボックスのスタイル「デリバリーステーション」を設置。その内容についてお話を伺いました。

〈取材にご協力いただいた方々〉野村不動産株式会社 住宅事業本部 商品戦略部 建設企画課 課長 村上智徳氏、技術主査 高吉希氏、住宅事業本部 事業推進二部 推進三課 新妻みなみ氏
外観

荷物の困りごとをまとめて解決

■物件の概要は

住宅事業本部 新妻氏:「プラウド綱島SST」は、隣接する商業施設・研究施設などを含めた街全体として低炭素で持続可能な暮らしをめざしている「Tsunashima サスティナブル・スマートタウン」の一角に位置している分譲マンションです。 次世代の暮らしを提案するため、さまざまな工夫がなされていますが、その一つがプラウドシリーズ初の「デリバリーステーション」です。
宅配ボックスの設置数を従来より向上させ、また、郵便物・宅配物以外の品目も扱うことで、宅配ボックス利用・メールコーナー利用の相乗効果を期待しています。受け取れる荷物のサイズや個数を変更したり、スペースの使い方を工夫するなどして構成を見直し、大型の荷物を一時的に入れられる「バゲッジポート」や、ネットスーパーと提携した「食配ステーション」、保育園を運営する企業からの貸し出し絵本を返却するボックスや、出前どんぶりの返却ボックスなどもあり、何かと便利な宅配ボックスとメールボックスになっています。
住宅事業本部 村上氏:これまでの物件でも宅配ボックスは設置していましたが、物流状況が変わってきているので、全社的に設置率を見直しているところです。この物件はその先駆け的なものとして開発しました。

■IoTの活用について

この物件では、IoTを暮らしの中に取り入れていこうというコンセプトがあったため、新しい試みとして、センサーの働きにより、キーをバッグやポケットから取り出すことなく、ハンズフリーで利用できる「Tebraキー」を採用したそうです。もちろん、セキュリティにも段階をもうけ、宅配企業はここまで、その他不特定多数の方はここまでと、利用者によって出入口での制限をかけ、安全を確保しています。

今後の展開としては、設置率のさらなる底上げはもちろん、宅配ボックス企業や宅配企業ともしっかりコミュニケーションをとって、ニーズを把握して対応し、再配達防止という社会的課題の解決に貢献したいとのお話を伺いました。

     

プラウド綱島SST
https://www.proud-web.jp/mansion/sst/

取材風景
ハード・ソフト両面から多彩な対策で再配達を防止
─三井不動産レジデンシャル─
     

「パークタワー晴海」(東京都中央区・2019年9月下旬入居予定)では、宅配便の再配達ゼロをめざす取り組みを行っています。開発の経緯や内容について伺いました。

〈取材にご協力いただいた方々〉三井不動産レジデンシャル株式会社 都市開発二部 開発室 主管 齋田量穂氏、市場開発部 商品企画グループ 主査 唐澤豊成氏
完成予想CG

ボックス構成と運用の両面を改善

■取り組みの背景は

都市開発二部 齋田氏:再配達はCO2排出の面からも、労働問題からも、社会的損失が大きいため、住宅として何かこの課題に対し軽減できることはないかとの思いで、取り組みをスタートさせました。
市場開発部 唐澤氏:宅配ボックスの設置スペースは限られているという認識のもと、今あるスペースで再構成してボックスを増やすことができないか、他にできることはないか、宅配ボックスメーカーとも協力しながら改善策を探りました。

■課題解決のためのポイントは

検討の結果、ハード・ソフト両面から、さまざまな工夫が生まれたそうです。ハード面では、宅配便でよく使われる小さめの宅配ボックスを新たに開発し、設置スペースを変えることなく、ボックスの個数を増加。また、郵便受けの投入口をメール便サイズにすることで、宅配ボックスへのメール便入庫を減らすようにしたとのことです。
ソフト面では「回転率の向上」を重視。荷物の入れっぱなしは、満杯になる要因の一つです。そのため、荷物到着後、荷物の取り出しがない場合に、取り出しを促す通知を従来の4日目から2日目に前倒しし、その後は4日目・10日目・20日目に行うようにしたそうです。このシステムに関しては、すでに全国約1,400の物件に導入しているとのこと。齋田氏からは「これは宅配ボックスメーカーと半年で20回以上のミーティングを重ねて実現したものです」とお聞きしました。

さらに、ドライバーの方が、空いているボックスがないのに宅配ボックス設置場所まで行って確認するという無駄な動線を減らすため、スマートフォンで入庫状況がわかる「宅配ロッカーの利用情報閲覧サービス」を構築するなど、宅配企業にもやさしい環境をつくっていることをお聞きしました。

その他、各階ごとに宅配ボックスを設置している物件があったり、賃貸物件での導入も検討したりするなど、物件の特性に合わせた再配達防止に取り組んでいるとのこと。唐澤氏からは「容積率に関するルールの明確化により、これまでより宅配ボックスが設置しやすくなると思います」とのお話も伺いました。

     

パークタワー晴海
https://www.31sumai.com/mfr/X1671/

取材風景

受け取り日・受け取り時間帯の指定や宅配ボックスの効率的な利用にご協力ください

このように、各社が知恵をしぼって再配達防止に取り組んでいます。開発した宅配ボックスやシステムを他社にも使ってもらいたいという企業も多く、社会全体で解決していこうという姿勢が感じられました。
宅配便を利用される方が受け取り日や受け取り時間帯の指定や宅配ボックスに荷物が届いたときに早めに取り出しを行うなどを心がけていただければ、より一層の再配達防止が可能になります。ぜひご協力をお願いします。