「余剰地下水等を利用した低炭素型都市創出のための調査・検証事業」について
先日、今年の世界の月間平均気温が16ヶ月連続で過去最高を記録し、観測史上最長を記録したとの報道がありましたが、環境省では都市の暑さ対策の一環として、2016年5月中旬から10月までの間、大阪府大阪市、堺市、群馬県前橋市、埼玉県熊谷市、東京都江東区で「余剰地下水等を利用した低炭素型都市創出のための調査・検証事業」を行いました。電力エネルギーの使用を抑制しながら、都市の余った地下水等を利用して体感温度を下げる暑熱対策技術の効果を検証するもので、涼しさを感じられる施設が設置されました。今回は、屋外に設置された事例(大阪府堺市)をご紹介します。
気化熱の仕組みなどを活用し、路面電車の停留所の暑さを和らげる!
堺市綾ノ町停留所(大阪府堺市)での取組
路面電車の停留所は、道路のアスファルトの反射を受けるので、気温以上に暑く感じる場所です。大阪府堺市の阪堺電車綾ノ町停留所では、2016年6月3日から2016年9月30日までの間、①「放射」のコントロール、②気化熱(水が蒸発する際に周囲の空気から熱を吸収する)の仕組み、③「風」の力を混合した技術で、体感温度を下げる取組を行いました。
具体的には、日除け・冷却ルーバー・送風ファン付き微細ミストの3技術を組み合わせた設備を路面電車の停留所に設置。日除けは、日射角度を計算して設計された立体ピースが組み合わさったもので、強い日射しを遮りながら、日除け本体も熱くならないという特徴があります。冷却ルーバーは気化熱の仕組みによって冷やされ、周囲の空気を心地良く冷やします。また、送風ファン付き微細ミストは風を起こしながら水を放出することで、気化熱の仕組みと風の力で効率よく体感温度を下げることができます。
堺市綾ノ町での取組を含め、屋外に設置された施設の場合は、自然と人が涼しい設備に集まり、利用者同士で会話が弾むなど、コミュニケーションが生まれるきっかけにもなった事例もありました。また、エアコンの冷房と異なり、「冷房を使わない涼しさは心地良い」といった声も寄せられています。
2020年に向けた街づくりのなかで広がる可能性も
2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を控え、暑さ対策が大きな課題の一つとされています。2020年に向けた街づくりを検討する上で、上述の事例に対する関心が寄せられています。
堺市綾ノ町の実証実験で設置された設備は、狭い路面電車の停留所に設置することができました。同様の設備であれば小さなスペースでも設置可能で、都市部での活用が期待できます。また、壁で囲んだ建物にする必要が無いことから、景観を損なわずに空間を冷やすことが出来ます。
今後、都市の余った地下水などの「水」の力を活用した冷房に頼らない暑さ対策が、街のなかにどんどん広がっていくといいですね。
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