競争が激化するフードデリバリーサービスに
期待される脱炭素社会との親和性
「ステイ・ホーム」が呼びかけられて、自宅でご飯を食べる機会が多くなりました。そのため食事を飲食店から配達してもらうフードデリバリーサービスが、新たなビジネスチャンスとして脚光を浴びています。新規参入企業が次々と現れ、さらに次世代のデリバリーサービスとしてドローンも登場。昨年8月からはKDDI、日本航空、JR東日本、ウェザーニューズ、Terra Droneの5社の共同プロジェクトによる、都内でのドローンを活用した物流サービスの実証実験が始まっています。すでにアフターコロナにおける物流革命をにらんだ動きも現れているのです。
そんな中、ハンバーガーレストランの大手・日本マクドナルド株式会社では、電動3輪バイクによるデリバリーサービスを本格的に展開しています。美味しさを、環境にも配慮しながら届けようという試みはなぜ始まったのか、日本マクドナルド、デリバリー推進室の毛利淳さんにうかがいました。
電動3輪バイクを導入して3つの課題の解決を目指す
「電動3輪バイク『アイディアAAカーゴ』によるデリバリーサービスは、2020年5月から神奈川県でテスト導入をはじめ、7月から東京都内の一部店舗に展開、その後順次全国へと展開しています。街中をさっそうと走る赤いバイクの姿を見かけた方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
もともと私たち日本マクドナルドでは、2010年から宅配サービスの『マックデリバリーサービス』をスタートして、現在1549店舗にまで展開しています。私たちは他社のフードデリバリーサービスとの差別化やマーケティング戦略を考える部署として、2019年10月に『デリバリー推進室』を発足させました。その発足直後の12月頃から、電動3輪バイクの導入を検討し始めたのです。
導入の理由は、環境、利便性などの課題に対してメリットがあるからです。まず環境への配慮についてですが、電動3輪バイクのメーカーの情報によると、従来のガソリンで動くバイクは、1台が1年間で約1.1トンものCO2を排出しています。デリバリーサービスを拡大すればするほど自然環境に大きな負荷をかけるというのは大きな問題です。電動3輪バイクはそれが減らせるだけでなく、気に障るエンジン音や排気ガスの匂いなどもないのですから、配達先の住民の皆さんへご迷惑をおかけすることもありません。
さらに利便性。この『アイディアAAカーゴ』は1回の充電で80キロほど走行することができます。これで1日のデリバリーに十分対応できますから、閉店中に店舗の外壁に装着した充電装置で充電しておけば、これまでのバイクのように配達途中にガソリンスタンドに立ち寄って給油するという手間が省けます。
また運転するスタッフの安全性にも考慮しています。3輪なので、車体が安定しており、さらに停車中にわざわざスタンドで車体を固定することもありません。雨、風や直射日光から運転スタッフを守るルーフにはワイパーが付いているので、雨天でもより安全に走行できます。それと、狭い路地などでバイクを方向転換させるのはなかなか大変なのですが、この『アイディアAAカーゴ』にはボタン一つでバック走行できるリバース機能がついています。」
環境を守り地球にやさしく価値観を共有してともに発展
「この電動3輪バイクを導入しようという提案が持ち上がったとき、社内では反対意見がありませんでした。そのため提案から開発、展開まで、かなりの短期間でスムーズに実行することができました。
というのも、私たち日本マクドナルドでは、『地球のことを考えて行動する』ということを環境理念として掲げているからです。そして2015年から国連が提唱している『SDGs(持続可能な開発目標)』に賛同し、それぞれ個別の目標に取り組んでいます。具体的には、責任ある森林管理の国際認証である『FSC 認証』済みの資材を使用した紙製容器包装類を提供したり、お客さまがご利用いただいたハッピーセットのプラスチックのおもちゃを回収しリサイクルする活動など、環境に対してマクドナルドだからできること、そしてお客さまと一緒になってできることに積極的に取り組んでいるのです。
そのような土壌、企業風土があるため、今回の電動3輪バイクの導入も何の障壁もなく、ぜひやろうという声が圧倒的でした。
私たちは地域と関わりながら活動し、ともに発展していくことを目指しています。そのためにはお客さまをはじめとする皆さんと、環境を守ろう、自然を大切に、地球にやさしくといった価値観を共有していかなければなりません。今回の電動3輪バイク『アイディアAAカーゴ』の導入は、その一環になるのです。」
2020年、「アイディアAAカーゴ」は「日経優秀製品・サービス賞」最優秀賞を受賞。手掛けるaidea社は次世代のモビリティであるZEV(ゼロエミッションビークル)により、環境問題をはじめとするさまざまな課題解決を目指しています。
機動力に優れたバイク配達であれば迅速かつ広範囲へ対応できることから、高まるフードデリバリーの需要に応えつつも環境への配慮も欠かさない、注目の取り組みといえるのではないでしょうか。
日本マクドナルド株式会社
デリバリー推進室 部長 毛利淳(もうり あつし)
駒澤大学を卒業後、日本マクドナルド株式会社入社。店舗経営を通じてマクドナルドの「ピープルビジネス」を学ぶ。その後、地域担当コンサルタント、地区統括マネージャー、地区FC法人担当統括マネージャー、東日本直営営業部部長を経て現職。
デリバリー推進室では、全国の店舗展開とオペレーション全体を担当。
マクドナルドのデリバリー実施店舗は1,500店舗を超えている。(2021年1月時点)
https://www.mcdonalds.co.jp/