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COP26の結果概要について

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2021年10月31日(日)から11月13日(土)まで、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が英国・グラスゴーで開催されました。ここでは歴史的なCOPの結果やその意義について紹介します。

決定文書採択の瞬間UNFCCC事務局HPより引用)

首脳級会合(世界リーダーズサミット)の開催・岸田総理によるステートメント

COP26を成功させるためには首脳級の関与が必要と考えた議長国英国の考えの下、今回の会合では、パリ協定を採択した2015年のCOP21以降、初めてCOPに各国の首脳級が集まりました。
首脳級会合では、130か国以上の首脳が気候変動対策の推進に向けた取組についてスピーチを行ったほか、首脳級が参加するイベントが開催されました。

日本からは岸田総理が出席し、全ての締約国に野心的な気候変動対策を呼びかけたほか、新たな2030年度温室効果ガス削減目標、今後5年間での100億ドル資金支援の追加コミットメント、適応への取組のための資金支援の倍増、グローバル・メタン・プレッジへの参加を表明するなど、日本の気候変動分野での野心的な取組の発信を行いました。岸田総理のコミットメントに対しては、多くの参加国・機関から高い評価と歓迎の意が示されました。

COP26世界リーダーズ・サミットでスピーチを行う岸田総理(首相官邸HPより引用)

COP26における交渉 ~パリルールブックの完成~

グラスゴー気候合意の採択

今回の交渉会合では、COP26全体としての政治的なメッセージが盛り込まれた全体決定(カバー決定)、「グラスゴー気候合意」が採択されました。
この中では、2015年に採択された「パリ協定」に基づき、世界中での温室効果ガスの排出の削減、気候変動の影響にどう対応していくか(適応)、開発途上国の気候変動対策を支援するためのお金(資金)、などの重要な論点がまとめられました。

特に重要なメッセージとして、パリ協定の1.5℃目標の達成に向けて、今世紀半ばのカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)と、その重要な経過点となる2030年に向けて、野心的な対策を各国に求めることが盛り込まれました。
さらに、すべての国に対して、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電の逓減(フェーズ・ダウン)及び非効率な化石燃料補助金からのフェーズ・アウトを含む努力を加速することを求めることが盛り込まれました。石炭火力発電についてCOP等の決定文書に盛り込まれるのはこれまで例のなかったことです。

「パリ協定の1.5℃目標」とは、工業化以前と比べて気温上昇を1.5℃以内に抑える努力を継続するという目標

パリルールブックの完成

また、COP26の交渉では、パリ協定の実施に必要なルールに合意できるかどうかが焦点の一つでした。
このルールは本来2018年のCOP24(於ポーランド・カトヴィツェ)で概ね決定されるべきものでしたが、いくつかの事項、例えばパリ協定6条に規定される国と国との間の排出量の取引(市場メカニズム)のルールについては、採択されずに宿題としてCOP26に持ち越されていました。

2週間にわたる交渉の末、市場メカニズムに関する実施指針、各国の排出量等の報告形式、各国の排出削減目標に向けた共通の時間枠といった重要議題について合意に至り、パリ協定のルールブックが完成しました。

市場メカニズムに関する合意における日本の貢献

この中でも特に、「市場メカニズム」の交渉に関して、世界に先駆けてJCM(二国間クレジット制度)を実施してきた日本は今回の合意に当たって大きく貢献しました。具体的には、以下の3点です。

1. 二重計上防止ルール(「承認案」)の提示
パリ協定6条4項(国連管理型のメカニズム)のプロジェクトを実施するホスト国が「承認(authorization)」するクレジットのみをパリ協定に基づく各国の削減目標(NDC)の達成及び国際航空分野などの目標達成に活用可能とし、これに相当調整を適用するという案を提案し、幅広い支持を得たことが6条交渉の妥結に向けたブレークスルーとなりました。
2. 個別プロジェクトに適用される具体的な排出削減量の算定手法の提示
日本は2013年から17のパートナー国とともに200件以上のプロジェクトを実施しているJCMにおける算定手法(優れた技術(Best Available Technology)やベンチマーク手法等)が6条の実施指針に反映されました。
3. 交渉の基礎となる定量データの提供
京都議定書下での国連管理型メカニズムであるCDM(クリーン開発メカニズム)に基づくプロジェクトや2020年までのクレジットのパリ協定下への移管という論点において、公開されているデータを基に数値を試算。これを基礎としてこの論点に関する交渉が進展しました。

こうした提案について交渉官級で各国に積極的に説明し、さらに山口環境大臣より閣僚級協議やバイ会談を通じて各国閣僚級に働きかけた結果、最後は日本の提案に各国が賛同する形で交渉がまとまりました。
このようにして、長年の宿題が解決し、他の交渉をまとめるための機運ができ、パリ協定を実施していく体制が整いました。

山口環境大臣によるクロージング・プレナリーでのステートメントの様子
UNFCCC事務局配信動画より抜粋)

ジャパン・パビリオンの設置

環境省は「ジャパン・パビリオン」を会場内に設置し、セミナーの開催、脱炭素技術の展示を行いました。

パビリオンにおける展示に関しては、12社が出展し、脱炭素地域づくり、食、モビリティ、エネルギー、新素材、衛星観測技術など、日本国内の脱炭素に関する取組や世界の脱炭素移行に資する技術や取組を積極的に発信しました。

また、セミナーでは、計31回のセミナーを実施し、主に、

  • 日本の脱炭素の取組(福島の脱炭素と復興を同時に実現する取組等)
  • 世界の脱炭素移行を支援する取組(都市や地域の脱炭素の取組を国際的に波及させていく取組等)

に関する様々な取組を紹介しました。

さらに、COPでは初めての試みとして、ウェブ上で「ヴァーチャル・ジャパン・パビリオン」を設置し、計33社が展示やプレゼンテーションを行いました。

ジャパン・パビリオンの様子(環境省撮影)

これらセミナーやプレゼンテーションの様子は環境省公式YouTubeチャンネルにアップロードしていますので、是非ご覧ください。

COP26が意味するところ

節目のCOP:実施主体の広がり

気候変動交渉の歴史を振り返ると、実施主体が広がってきたことがわかります。京都議定書の下では先進国のみ排出削減目標が課せられていましたが、パリ協定の下では先進国、途上国問わず全ての締約国が排出削減目標を掲げるなど、排出削減に関する主体が広がってきました。

COP26では議長国英国が毎日テーマ(例えば資金、エネルギー、適応・ロス&ダメージ)を設定し、産業界、自治体、市民社会などさらに幅広い主体に対して気候変動対策の実施を約束(プレッジ)するよう喚起していきました。

この点では、今後非政府主体(Non-State Actor)の気候行動への参加がますます重要になりますし、環境省としても非政府主体の方々と対話をしながら、気候変動対策を進めていきたいと考えています。

緩和・適応の野心強化

COP26のカバー決定には、緩和(排出削減)の強化、資金、適応やロス&ダメージへの対応を強化するための仕掛けが埋め込まれていると考えています。
日本としては2021年10月に閣議決定した地球温暖化対策計画等に基づき、2030年度目標の達成、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、着実に取組を実施することが重要と考えています。

排出削減目標(Nationally Determined Contribution : NDC

  • 新たな、又は更新されたNDCを未通報の国に対し、第4回パリ協定締約国会議(CMA4:COP27においてあわせて開催)に先立ち提出するよう強く求める。
  • 2022年末までに、パリ協定の温度目標に整合するよう、必要に応じてNDCにおける2030年目標を再検討し、強化することを要請。
  • 2030年までの決定的な10年間に緩和の野心及び実施の規模を緊急に拡大するための作業計画を策定し、CMA4において検討、採択する。
  • CMA4において2030年以前の野心に関する年次ハイレベル閣僚ラウンドテーブルを開催

適応

  • 適応に関する世界全体の目標(パリ協定7条)策定のための2か年のグラスゴー・シャルム・エル・シェイク作業計画を開始

ロス&ダメージ

  • ロス&ダメージの活動のための資金調達の取り組めを議論するために、締約国、関連機関及び関係者の間でグラスゴー対話を設置(~SBI60(2024年))。

資金

  • 先進国全体で2025年までに2019年比で少なくとも2倍にすることを強く求める
  • 2025年以降の資金動員目標(気候資金に関する新規合同数値目標)の審議を開始

今後に向けて

国内における気候変動対策の着実な実施

2050年カーボンニュートラル及び2030年度46%削減・50%の高みに向け、全ての社会経済活動において脱炭素を主要課題の一つとして位置付け、持続可能で強靱な社会経済システムへの移行を進めることが不可欠ですし、積極的な対策により次なる大きな成長につなげていく発想も必要となります。
環境省としては、地域の脱炭素化や国民一人一人のライフスタイル変革を進めることが重要と考えています。

地域脱炭素の取組支援

特に地域の脱炭素化に関しては、本年6月に「地域脱炭素ロードマップ」が策定されました。
環境省としては、再エネ等の地域の資源を最大限活用することにより、地域の課題を解決し、住民の暮らしの質を向上しながら脱炭素に向かう取組を支援していきたいと考えています。

市場メカニズムを活用した世界の脱炭素移行への貢献

国外に目を向けると、パリ協定6条の市場メカニズムに関するルールの大枠に合意したことを踏まえ、その交渉をリードし、世界に先駆けてJCM(二国間クレジット制度)を実施してきた我が国として、JCMをより一層活性化させ、温室効果ガスの更なる排出削減を図っていきたいと考えています。

まず、日本は現在17か国とJCMを進めていますが、このパートナー国をアジア・太平洋、あるいはアフリカで拡大していきたいと考えています。

また、民間企業においてJCMを通じた国際的な排出量取引市場への参加に関心が高まることを踏まえ、今後経済産業省等関係省庁と民間資金を中心としたJCMプロジェクトの形成に向けた検討を開始することとしています。

さらに、国連気候変動枠組条約事務局の地域協力センター等と連携して途上国の政府職員やプロジェクト関係者の能力構築を支援し、JCMプロジェクトを途上国で実施する場合の基盤を整備していこうと考えています。

加えて、こうした取組を通じて、日本の企業が有する脱炭素技術、ノウハウといったソリューションの海外展開も後押しできると考えています。

防災等適応対策の推進

COP26においても気候変動への適応の緊急性と重要性が国際的にも共有され、地方・国・周辺地域など様々なレベルで適応に取り組むことの必要性が再認識されています。
我が国としても、2021年10月に閣議決定された気候変動適応計画に基づき、防災、農業、健康等の幅広い分野において取組を強化していきます。

また、我が国は2025年までの5年間に気候変動の適応分野への支援を倍増することとされたところ。
アジア太平洋気候変動適応情報プラットフォーム(AP-PLAT)を通じた知識ベースの協力、我が国の防災、農業、国土強靱化といった分野における適応技術・サービスの海外展開など、海外における気候変動適応の取組を着実に推進していきます。

次回のCOP27は、来年2022年にエジプトのシャルム・エル・シェイクで開催される予定です。

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