日本の新たな温室効果ガス削減目標(NDC)とGX推進政策について(1/2)

2025年2月18日、地球温暖化対策計画が閣議決定され、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局へ、日本の次期NDC(温室効果ガス削減目標)が提出されました。本目標の達成のためには、脱炭素、経済成長、エネルギー安定供給の同時実現をめざすGX(Green Transformation)の推進が不可欠です。
この記事では、日本の次期NDCの内容に加えて、日本でのGX推進政策の取組について、環境省の取組を中心にご紹介します。
国が決定する貢献(NDC)ってなに?
NDCとは
NDC(Nationally Determined Contribution)(「国が決定する貢献」)とは、パリ協定*に基づき各国が5年毎に提出・更新する温室効果ガスの排出削減目標です。日本をはじめとする世界各国がUNFCCC事務局にNDCを提出しています。ここでは、日本の2030年度、2035/2040年度のNDCについてご紹介します。
なお、我が国において、NDCとしてUNFCCC事務局に提出される削減目標は、地球温暖化対策推進法に基づく政府の総合計画である地球温暖化対策計画において掲げられている削減目標と同様です。
*2015年のCOP21で採択された、京都議定書に代わる、2020年以降の温室効果ガス排出削減のための新たな国際的な枠組み。気候変動に関する初の法的拘束力のある国際的な条約であり、2020年以降も世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2度より低く、1.5度に抑えるよう努力することが決められた
2030年度削減目標
我が国は、2020年10月に、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち、「2050年カーボンニュートラル」*の実現をめざすことを宣言し、2021年4月には、この2050 年目標と整合的で野心的な目標として、2030年度において温室効果ガス46%削減(2013年度比)をめざすこと、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けることを表明しました。この2030年度目標は、2021年10月、地球温暖化対策計画の閣議決定と同日に、日本のNDCとしてUNFCCC事務局へ提出しています。
* 2020 年10 月の「2050 年カーボンニュートラル宣言」以降、カーボンニュートラルや脱炭素という用語が用いられてきた。一方、G7広島サミットの成果文書等にあるように、国際的な文脈においては、ネット・ゼロと表現することが一般的であることを踏まえ、本稿においては、固有名詞等の場合を除き、原則「ネット・ゼロ」を用いる。いずれも基本的な意味は同じと認識される。
2035/2040年度削減目標
さらに、2025年2月、世界全体での1.5℃目標と整合的で、2050年ネット・ゼロの実現に向けた直線的な経路にある野心的な目標として、2035年度、2040年度において、温室効果ガスを2013年度からそれぞれ60%、73%削減することをめざす、新たな日本のNDCをUNFCCC事務局へ提出しました。

次期削減目標(NDC)
地球温暖化対策計画(令和7年2月18日閣議決定)
また、同日に閣議決定された地球温暖化対策計画では、NDC達成に向けた主な対策・施策がまとめられています。国として、2050年ネット・ゼロの実現に向けた直線的な経路を弛まず着実に歩んでいくことを示すことにより、中長期的な予見可能性を高め、脱炭素と経済成長の同時実現に向けてGX投資を加速していきます。
既に利用可能な技術・設備の導入拡大を加速しつつ、「バックキャスティング」の考え方も踏まえ、現状の制度や技術にとらわれない創造的な対策の検討、導入及び実施を進めます。また、目標実現のために、エネルギー安定供給・経済成長・脱炭素の同時実現をめざすGX政策と協調して、脱炭素を軸として成長に資する政策を推進していきます。
世界の温室効果ガス排出量の削減に向けた貢献
1.5℃目標の達成に向けては、一国だけでなく世界全体で取組を進めていくことが重要になります。我が国は、世界全体での排出削減等につながる取組も積極的に推進していきます。2050年ネット・ゼロの実現に向けた取組を着実に進め、我が国の温室効果ガス排出・吸収量の実績を世界に示しつつ、パリ協定の運用を通じて、1.5℃目標の達成に向けた議論に積極的に貢献していきます。
また、これまで築いてきた信頼関係やアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)の枠組み等を基礎として、JCMや都市間連携等の相手国との協働に基づく協力を拡大していきます。環境性能の高い技術や製品等をいかして、脱炭素市場の創出・人材育成・制度構築等の更なる環境整備を進め、ビジネス主導の国際展開を促進し、アジア地域を始めとする世界の排出削減・吸収に貢献します。

次期NDC達成に向け地球温暖化対策計画に位置付ける主な対策・施策

日本のNDCに関するこれまでの取組
ここからは、日本が進めるGX推進政策について環境省の取組を中心に解説します。
GX(Green Transformation)ってなに?
GXとは
GX(Green Transformation)は、石炭や石油などの化石燃料中心の経済・社会、産業構造を、クリーンエネルギーを中心としたものに移行させ、社会システム全体を変革する取組です。
GXを推進し、エネルギーの安定供給を確保しつつ、経済成長と脱炭素化を実現することで、将来世代を含む全ての国民が希望を持って暮らせる社会を作り上げることをめざしています。

GX2040ビジョン
2025年2月、GX実行会議での議論を踏まえ、将来の見通しに対する不確実性が高まる中で、GXへの投資が見通しやすくなるように、より長期的視点から、2023年7月に策定した「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」(GX推進戦略)を改訂し、「GX2040ビジョン」を閣議決定しました。
このビジョンに基づいて、既に始動しているGXの取組を2040年に向けて大きく飛躍させるための政策の具体化を進めていきます。
GX2040ビジョンの構成
- はじめに
- GX産業構造
- GX産業立地
- 現実的なトランジションの重要性と世界の脱炭素化への貢献
- GXを加速させるためのエネルギーをはじめとする個別分野の取組
- 成長志向型カーボンプライシング構想
- 公正な移行
- GXに関する政策の実行状況の進捗と見直しについて