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2022.12.02

私たちに身近な天気から、気候変動を考えてみませんか?

私たちに身近な天気から、気候変動を考えてみませんか?

60代を迎え、夫と2人で穏やかな日々を送る継代(つぐよ)さん。でも最近、豪雨や猛暑など昔とは違う極端な天気を実感する中で、次の世代のために何かできることはないか、気になっています。今回は、気象予報士として活躍する佐々木恭子さんにお話を聞きました。

佐々木 恭子(ささき きょうこ)
佐々木 恭子(ささき きょうこ)
合同会社「てんコロ.」代表。気象予報士。テレビ番組制作会社のディレクターを経て、2007年気象予報士の資格を取得し民間の気象会社へ。自治体防災向け局地予報、高速道路・国道向けの雪氷予測のほか、資格取得スクールの講師などを行う。 著書に『天気でわかる四季のくらし』(新日本出版社)、『世界気象カレンダー』(日本プロセス秀英堂)など、監修に『奇跡の瞬間! 空の絶景100選』(宝島社)、『NHK学ぼうBOSAI 命を守る防災の知恵 噴火・台風・竜巻・落雷 どう備えるか』(金の星社)など。


継代

気象に関する多彩なお仕事・実績をもたれ、気象予報士養成の講座やメディア出演などもされている佐々木さんに、本日は気候変動について、また、その対策として何ができるのかお話しを聞きたいと思います。 また、佐々木さんは特に雲についてお詳しいですね。秋から冬にかけては、どんなお天気や雲を見ることができますか?


佐々木

秋の天気は、晴れ、曇り、雨と2~3日の周期で変化することが多くなります。 雲は、条件さえ整えば、いろいろな種類を見ることができますが、季節によって現れやすいものもあります。例えば、比較的空の低いところにできる『積雲(わた雲)』は夏によく見られる雲で、空の高いところに現れるうろこ雲やいわし雲と呼ばれる『巻積雲』や、ひつじ雲と呼ばれる『高積雲』は、秋によく見られます。

このように季節による違いがあるのは、夏は低い空が湿りやすく、秋は高い空が湿りやすくなるからです。 ところが、冬になると、特に日本海側は低い所に雲が出やすくなります。シベリアから日本海上に吹き出す乾燥した寒気に、海面から熱と水蒸気が供給されて大気の状態が不安定になり、雲ができやすくなるためです。 一方、その空気が山を越えて太平洋側に吹き降りてくるときには再び乾燥し、冬の晴天をもたらします。

うろこ雲(巻積雲)(佐々木さん提供)

うろこ雲(巻積雲)(佐々木さん提供)


継代

なるほど、季節によってそのような空の変化が見られるのですね。空を見上げてみたいと思います。一方で、お天気に関するニュースなどを見ていると、最近よく耳にする気候変動についても気になるのですが、佐々木さんはどう思われますか?


佐々木

地球温暖化に伴う気候変動というと、人の一生よりも長いスパンで考えるものですが、最近は、私が子どもだった頃と比べて夏の気温がだいぶ高くなっているように感じます。中学時代は陸上部に所属し、真夏でも外で練習していました。現在のように、最高気温が35℃以上の猛暑日が当たり前ではなかったからです。

でも今は、昔の感覚のまま真夏の屋外で部活をするのは無理です。夜間も最低気温25℃以上の熱帯夜が続くこともあり、エアコンなしでは過ごせない日もしばしばです。 地球の平均気温は、産業革命以降、約1.1℃上昇しています。日本では、100年間に1.28℃上昇しています(図1)。1.1℃も1.28℃も数字ではわずかに見えますが、私たちはそのために驚くような気候の変化を実感しているわけです。

図1『日本の平均気温偏差』(細線(黒):各年の平均気温の基準値からの偏差、太線(青):偏差の5年移動平均値、直線(赤):長期変化傾向。基準値は1991〜2020年の30年平均値)(出典:気象庁 2021年5月更新)

図1『日本の平均気温偏差』
(細線(黒):各年の平均気温の基準値からの偏差、太線(青):偏差の5年移動平均値、
直線(赤):長期変化傾向。基準値は1991〜2020年の30年平均値)
(出典:気象庁 2021年5月更新)


継代

そうですね。私も、子どもの頃の夏は今より過ごしやすかったな、と思います。気候変動と災害の関係性はありますか?


佐々木

実際、猛暑日や熱帯夜の日数が増えています(図2)。平成30年7月は記録的な猛暑だったのですが、温暖化の影響がない状況を仮定したシミュレーションでは、この猛暑はほぼ発生しなかったという結果も出ています。猛暑と気候変動は無関係ではないということです。また、豪雨や台風による災害も毎年のように起きていますが、これも温暖化に伴う気候変動がどのように影響しているのか、事例ごとに詳しく調べた結果があります。

例えば、西日本豪雨とも呼ばれる『平成30年7月豪雨』について、気象庁は温暖化に伴う水蒸気量の増加が影響していたと考えられるとしています。ほかにも、気象研究所の発表によると、『令和元年東日本台風』(台風第19号)において、温暖化による気温と海面水温の上昇が大雨に与えた影響を評価したところ、1980年以降の気温上昇がなかった場合と比べて、総降水量の約11%の増加に寄与したという計算結果が得られたということです。

また、台風については、強い台風の日本への接近頻度が増えていることや日本付近での移動速度が低下していることなども分かってきました。

これらのことから、今後も温暖化が進めば、気象災害はさらに激甚化することが懸念されています。気候変動対策として温暖化に対する緩和策を進めるのと同時に、適応策も強化していかなければなりませんし、私たち一人ひとりも今まで以上に備える必要があるということです。

図2『全国の日最高気温35℃以上(猛暑日)の年間日数の経年変化(1910~2021年)』
              棒グラフ(緑)は各年の年間日数を示す(全国13地点における平均で1地点あたりの値)。<br>太線(青)は5年移動平均値、直線(赤)は長期変化傾向(この期間の平均的な変化傾向)を示す。
              全国の猛暑日の年間日数は増加。最近30年間(1992~2021年)の平均年間日数(約2.5日)は、統計期間の最初の30年間(1910~1939 年)の平均年間日数(約0.8日)と比べて約3.3倍に増加している(出典:気象庁)

図2『全国の日最高気温35℃以上(猛暑日)の年間日数の経年変化(1910~2021年)』
棒グラフ(緑)は各年の年間日数を示す(全国13地点における平均で1地点あたりの値)。
太線(青)は5年移動平均値、直線(赤)は長期変化傾向(この期間の平均的な変化傾向)
を示す。 全国の猛暑日の年間日数は増加。最近30年間(1992~2021年)の
平均年間日数(約2.5日)は、統計期間の最初の30年間(1910~1939 年)の
平均年間日数(約0.8日)と比べて約3.3倍に増加している(出典:気象庁)


継代

今後も温暖化が進めば、気象災害がさらに激甚化する恐れがあるのですね。気候変動対策のための取り組みについて、注目していることや気になることはありますか?


佐々木

日本の気候変動対策は海外から遅れをとっていると聞きます。私自身も企業向けの講演をする機会や関連する文献を通して、多くの日本の企業でいまだ気候変動対策に消極的な方が多いと感じます。消極的な理由は、対策に必要な先行投資や設備投資を「お金がかかる、そんな余裕がない」「自分の会社は小さいから関係ない」などと思っていることです。

そんな中、「デカップリング」という考え方に注目しています。これは、経済成長や便利さを維持しつつも、新たな手法でエネルギー消費を減らしていく、経済活動とエネルギー消費を切り離した考え方、仕組みのことで、この考え方が社会に浸透すれば日本の温暖化対策は前進すると思います。

実際、デカップリングが実現しているドイツやスウェーデン、イギリスではGDP(国内総生産)が増えているのに、温室効果ガスの排出量は減っている(※)というデータを見て驚きました。これこそまさに、「温暖化対策を進めるには、経済活動を止めなければならない」と誤解している多くの人に目の当たりにしてほしい現実だと思います。

もちろん、日本でも建設業や農林水産業、サービス業などさまざまな分野で、すでに温暖化対策とともに業績アップを実現している企業もありますので、いまはそういう企業の取り組みを勉強しています。


継代

気候変動対策をより意識的にとらえるために、普段の生活の中でできることはありますか?次世代のためにも何かしたいと思っています。


佐々木

気候変動は、「話が大き過ぎる」「対岸の火事」のように感じている人が多いように思います。しかし、産業革命以降、地球の平均気温がたった約1.1℃高くなっただけでも、自分が生きてきた高々20~30年の間に、真夏の昼間は屋外で活動しづらくなり、夜間もエアコン無しでは過ごせなくなるなど、生活がガラリと変わってしまいました。

ということは、このまま何も対策を取らなかったら、少し先の未来がどういう世界になってしまうか想像できると思います。まずはこの現実を受け止めて、温暖化に伴う気候変動について正しく理解することが重要です。

その上で、個人でもCO2などの温室効果ガスの排出を減らすアクションを起こしていくということが必要となります。ただ、「個人の活動がすぐに効果として表れない」「効果が見えにくい」ことから、なかなか行動に移せない人も多いです。そこで、自宅への太陽光パネルの導入やテレワークの実施、カーシェアの利用など、個人のどのような対策が、どれだけ温室効果ガスの排出を削減できるか計算された資料を参考にすることをお勧めします。

例えば、自宅の電力を再生可能エネルギーに変えるアクションは、かなり効果が大きいんですよ。年間のCO2排出量は、1人あたり1,232kg削減できるという試算です。

ゼロカーボンアクション30 > エネルギーを節約・転換しよう! > 再エネ電気への切り替え をクリック!

ゼロカーボンアクション30 > エネルギーを節約・転換しよう! >  再エネ電気への切り替え をクリック!


佐々木

このような資料を参考にして、個人でも無理なくできる温暖化対策を選択し、「自分の暮らしを豊かにする、次世代の人たちを幸せにする」という目標に向けてアクションを起こしていければいいと思います。


継代

少し先の未来がどうなってしまうかを考えたら、すぐにでも対策を始めなければいけないですね。再エネ電気への切り替えのほかにも、冬に向けてウォームビズなどの方法や効果なども調べて、身近なところから実践していきたいと思います。

継代(ツグヨ)
継代(ツグヨ)
子どもは自立し、夫と2人暮らしの60代女性。理想の家・暮らしの実現のために、いろいろな人に話を聞いている。定年でおうち時間が増え、快適な暮らしを求め、これからもより一層生活を楽しみたいと思っている。SDGsやカーボンニュートラルといった言葉が普及するなか、次世代のために自分にできることを探し中。

脱炭素社会の実現には、一人ひとりのライフスタイルの転換が重要です。
「ゼロカーボンアクション30」にできるところから取り組んでみましょう!

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引用元

(※)The decoupling of emissions and growth is underway. These 5 charts show how(外部サイトへリンク)

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