気象予報士に教わる、
これからの天気と私たちにできること<第10回>

COOL CHOICE編集部
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第10回:NPO法人 気象キャスターネットワーク
気象予報士 山田修作さん

NPO法人気象キャスターネットワーク会員の、気象予報士の皆さんにご登場いただくインタビュー連載企画。第10回は、メ~テレ(名古屋テレビ)の平日朝と夕方の番組で、地元のお天気を毎日わかりやすくお伝えしている山田修作さん。東海エリアの気象の特徴や人々の環境への関心の高さに驚きつつ、地球温暖化対策のために伝たいこと、心掛けるべきことなど、その思いをお伺いしました。

「東海3県は気象トピックが豊富で、人々の地球温暖化への関心も高いです」

●山田さんが普段お伝えしている東海地方の気候には、どんな特徴がありますか?

私は愛媛の出身ですが、大学は東北、大学院はつくば、就職は鹿児島と各地を移り住んできて、名古屋にはもう12年です。故郷に次ぐ長さになりました。住みやすい反面、夏の暑さと冬の寒さは大変だなと感じますね。
ここへ来て驚いたのは、とにかく天気の話題に事欠かないエリアだな、ということです。担当番組の放送エリアが愛知、岐阜、三重の東海3県です。三重県南部の尾鷲は年間雨量の多い地域ですし、岐阜の飛騨・白川村の豪雪、多治見の夏の暑さもよく知られています。それに岐阜の六厩(むまや) という場所は、実は本州で一番寒いと言われたところで、冬はマイナス20度になることもあり、ダイヤモンドダストが見られるんです。北海道みたいですよね。
狭いエリアの中に飛びぬけた暑さや寒さなど、いろんなトピックがあってびっくりしました。だからこそ天気予報は難しいです。資料やデータを見ただけではわからないので、この土地での実感や経験が大事なんだなと思いましたね。

●そんなユニークなエリアで、気になる地球温暖化の兆候などはありますか?

僕自身は夏の暑さが一番気になっています。趣味でトライアスロンをしています。メインシーズンが夏場なので、会場では熱中症への注意喚起のアナウンスがしきりに流れますし、常に救急車が待機しています。気温によって大会規模が縮小されることもあり、近年は厳重な対策が取られていますね。実は僕も軽く発症してしまって・・・・・・。熱中症は実際に発症率が上がっているというデータもありますし、気温35度以上の猛暑日を名古屋について調べてみると、僕が生まれた1970年代は年間5日くらいだったのに、いまでは15日と、3倍になっているんですね。
その影響が及ぶのは人間だけじゃありません。豊橋市には表浜(おもてはま)海岸というウミガメの産卵場所があります。ウミガメの卵は砂浜の温度によって雌雄が変わるそうで、温度の上昇とともにメスばかり増えて、さらには孵化さえしなくなってしまうそうです。地球温暖化の影響で豊橋からウミガメがいなくなるかもしれない。ここにはそんな危機感が身近にあるんですよね。

●暑さが顕著なだけに、地元の方たちも危機感を感じられているのでしょうか?

このエリアの人々の夏の暑さに対する関心度は高いと思います。以前、講演に行った岐阜県可児市では「可児市気温一斉観測100×100」という取組をしていると聞きました。というのも、気象庁の観測地点がお隣の多治見市にはあるけれど、可児市にはないので、それなら市民で気象データをとろうじゃないか、と数年前から始められたそうです。毎年8月1日に100の地域で一斉に気温を観測するという簡易なものですが、長期でデータが蓄積されたら、地球温暖化の影響が見えてくるかもしれません。
他にも、地域の気象ニュースをお伝えする中で、例えば台風は日本の近くまで強い勢力のまま近づいてくることが多くなったなと実感していまして、50年以上前に伊勢湾台風を経験した土地だけに、皆さん台風情報にも敏感なんです。
名古屋には、僕らも参加しているなごや環境大学という市民大学が13年前からありまして、13年も長く続いているのは、それだけ地球温暖化への関心が高い証なのではと思いますね。

「体を動かすことでクールチョイスになるなら、地球も人も健康になれて、いいこと尽くめですよ」

●地球温暖化への関心が高い地域で、どんな伝え方を心がけていらっしゃいますか?

なごや環境大学で私たちが毎年開講している親子講座も、もう10年を超えました。初年に授業を受けた子たちはそろそろ20歳くらいになっているんですよね。そうやって毎年続けているうちに、年齢層も厚くなっていきますから、やはり今後も、とにかく活動を続けることが大事かなと思います。また来年も再来年も、次の小学生たちに教えていく。みんなに広めるためには止まっちゃいけないなと思います。継続は力なり、です。
そもそも僕は、テレビなどマス向けの一方通行ではない、直接お伝えできる機会もあれば・・・・・・と、もどかしい気持ちを持っていたのです。そんな思いから、なごや環境大学の親子講座の活動に加え、地球温暖化防止コミュニケーターとしても活動しています。イベントで子どもたちを目の前にして話していると、素直な反応が返ってくるので、とてもやりがいを感じますね。

イベントではいつも、子どもたちに「今日、空見た?」と声をかけるんですよ。空を見てきたという子どもたちに「じゃあ、どんな雲だった?」と聞くと「白だったかなぁ・・・ちょっと灰色だったかな?」と覚えていない。あまり“気にして”までは見ていないんですよね。
だから次からは「どんな空だったか」という点にも注意して興味深く観察してもらえるように話しかけています。見方が変われば、空だけでなく、お花が咲いたな、今年は咲くのが遅いぞ、と環境の変化にも敏感になれる。最近は外で遊ばない子も多いと聞くので、まずは身近な自然に普段から目を向けて欲しいなと思います。

●では、山田さんご自身がされているクールチョイスな取り組みや、おすすめの方法などを教えてもらえますか。

僕自身のクールチョイスな取り組みとしては、普段から移動には自転車を使っています。「あの滝を見に行きたい」というときも、車ではなく自転車。気が向けば40kmくらい乗ることも。車では通れない場所を走れますし、車では見られない光景が見られます。自然を近くに感じながら、いろんなことに気づけますし、健康増進にもなってエコにもなるなんて、いいことばっかりだと思います。皆さんにおすすめしたいです。
でも、おすすめはしますが決して無理はしないでほしいんですよね。無理は禁物です。
「こんな楽しいことが、実はクールチョイスなんだよ」というコトをいろいろお伝えしていきたいです。先日も、仲間を誘って自転車で岐阜の七福神めぐりに行ってきました。“楽しみながら”だったので、みんな難なく30kmをクリアできたんです。
体を動かすことがエコにつながるなら、人も地球も一緒に健康になれますし、それを楽しみながらできるように「クールチョイスは楽しい」とお伝えしていきたいですね。

お話を伺って

「伝えるべきことを、相手にちゃんと伝わるように直接お話したい」と地球温暖化防止コミュニケーターとして活動を続けてこられた山田さん。クールチョイスについては、スポーツマンらしく「体を動かして楽しみながら取り組めば、人も環境も健やかになれる」と話していただきました。みなさんもクールチョイスを楽しむヒントをもらいに、地球温暖化防止コミュニケーターのお話を聞いてみませんか?

山田修作さん

NPO法人 気象キャスターネットワーク会員。大学では気候学を専攻し、鹿児島の南日本放送でアナウンサーを務めている最中、2003年に気象予報士の資格を取得。現在はメ~テレ(名古屋テレビ) で、平日朝の「ドデスカ!」、夕方「UP!」の気象情報を担当。地球温暖化防止コミュニケーターとしての活躍も長い。また、ご自身はトライアスロン大会にも参加するほどのスポーツマンで、普段の生活でも体を動かすことでエコになるクールチョイスを、楽しみながら実践中。

NPO法人 気象キャスターネットワーク
http://www.weathercaster.jp/

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