暖房時の室温を20℃(目安)で快適に過ごすライフスタイル
快適なのに省エネを実現!オフィスでの「ウォームビズ」を考える

環境省が冬の地球温暖化対策として呼びかけている「ウォームビズ」は、暖房時の室温を20℃にして快適に過ごすライフスタイル。
「ウォームビズ」ぽかぽかゼミナールPART3『暖房費も節約できる「窓の断熱」テクニック』でご紹介したように、冬の暖房効率を上げるためには、窓の断熱性を高めることがとても大切。とくに、築年数が古い建物ほど、窓の断熱が不十分なケースが多いといえます。
そこで今回は、エコロジーをテーマにしたウェブメディア『森ノオト』の協力で、浴室で簡単にできる、さまざまな断熱の工夫で、どのくらいの効果があるかを検証してみました。

実験レポート!

ウォームビズでストールや腹巻など衣服を工夫したり、毛足の長いスリッパで足下からの冷えを予防したり。だけど、お風呂に入るときは、みなさんどうでしょうか?脱衣所で服を脱いだら寒くて大変。
そうして冷えたからだに、いきなりお湯をかけていませんか? 今回の実験では、浴室と脱衣所への断熱対策を施してみました。はたして、今回の対策でどのくらいの効果を得られるのでしょうか……。

<実験した人>牧志保さん
牧さんが暮らしているのは横浜市内にある築36年の一戸建て。小さな庭もあってお気に入りの家ですが、冬、とても寒いのが悩みとのこと。

「我が家は築36年の戸建住宅です。昨年リフォームしたので内装は綺麗なのですが、家のつくりは古いため、冬の寒さは格別に厳しいです。昨年の冬は暖房器具を使ってもなかなか部屋が温まらず、冬場の電気代が暖房器具を使わない時期の約3倍となり驚きました。そして次の冬は真剣に家の断熱対策に取り組まなければと固く心に誓ったのでした。

11月初旬の寒い雨の日、横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院准教授の吉田聡先生が我が家にいらっしゃいました。浴室の寒暖差を解消する実験を行うためです。

寒い季節になると、「ヒートショック」という言葉をよく耳にします。室内の温度差が原因で起こる血圧の急激な変化のことですが、この「ヒートショック」が原因となり亡くなる方も多く、特に冬場の浴室での事故が多いようです。その原因の一つが、昔ながらの日本の住宅のつくりにあると吉田先生はおっしゃいます。


分かりやすくお話をしてくれる気さくな吉田先生。

「日本の住宅は夏の暑さをしのぐことを重視してつくられていて、冬の断熱性に関してはあまり考えられていませんでした。また日が入る南側に人が集まる空間を持ってきて、浴室、トイレを寒い北側に配置するケースが多く見られます。そのため、冬場の浴室は冷え切ってしまいます。脱衣所で服を脱いで血管が収縮した後に、熱い湯に浸かることで血管が膨張して急激に血圧が降下します。このような負荷がからだにかかることによって事故が起こります」

「こうした住宅で生活しているのは高齢者層に多く、高齢者は家にいる時間も長いため住環境の中でも、特に温熱環境を改善することが大切です。しかし住宅のリフォームはコストがかかることもあり、住環境の改善はスムーズに進まないのが現状です。リフォームのコストも低くおさえられればいいのですが、他に、自ら手軽にできる断熱対策も有効です」。

住宅の温熱環境をよくするためには、窓の断熱が大切です。「人間のからだの表面温度はだいたい34度。冬場は窓面の温度との差により熱移動が発生し、人間の熱が奪われていきます。窓の断熱対策を行うと、実際の室温にはあまり影響しませんが、体感温度は大きく違ってきます。カーテンを引いたり、断熱シートを張ったり、窓の表面温度を下げないように工夫することが大切です」

そういった吉田先生のお話を踏まえ、我が家も断熱対策に取り掛かりました。我が家の間取りは、リビングダイニングが南に面し、玄関、浴室、トイレが北側に配置されている昔ながらのものです。北側に位置する浴室、トイレは昼間でも日がほとんど入らないため、夕方の入浴時刻には震えてしまうほど冷えています。まずは特に寒い浴室と洗面室から断熱対策を始めることにしました。

洗面室の断熱対策

床に簀子(すのこ)を敷く

洗面室は床が冷たく足元からじんわり冷え、お風呂に入るのが嫌になるほど寒いのです。そこで床に簀子を敷くことにしました。

洗面室の窓にアルミシートと気泡緩衝材のカーテンを取り付ける

洗面室の窓には突っ張り棒を設置し、そこに防災グッズとして売られているアルミシートと梱包材の気泡緩衝材を掛け、上からお気に入りの布を被せました。お手製の断熱カーテンです。


アルミシートは日光を通さないため昼間はカーテンを外し、入浴前に再びカーテンを取り付ける

朝、目を覚まして洗面室に入った際、アルミシートのカーテンを取り付ける前までと比べると、空気がふわっと温かく感じられました。窓から熱が逃げるのを防いで、寒さが和らぎます。また、床に簀子を敷くことで足元の寒さも緩和されました。簀子の上と、床の上とでは足の裏で感じる温度が大きく違います。

浴室の断熱対策

入浴前に浴室の壁と床にお湯をかける

入浴前に浴室の壁と床にお湯をかけて浴室を温めておくこともヒートショックの予防につながるという吉田先生のお話を参考に、浴室の壁と床にシャワーでお湯をかけました。41℃のお湯を、10秒くらいかけて、全体にまわしかけると、湿度が上がり、浴室が温かくなったように感じました。サーモカメラで撮影してみても、浴室壁面の温度が上がっているのが分かります。

サーモカメラで検証!


浴室のこの部分をサーモカメラにて撮影

浴室の壁と床に湯をかける前。
浴槽部分だけが温かい状態

浴室の壁と床に湯をかけた後。
5℃〜8℃も壁面温度が上昇している
壁面温度が上昇することにより、浴室に入った時に、からだから奪われる熱の量は減ると考えられる

窓に内窓を取り付ける

浴室の窓に内窓を取り付けました。内窓を作成してくれたのはNPO法人森ノオトの事務局の梅原昭子さんです。窓のサイズにもよりますが、作製は1時間程度で出来るそうです。作り方を梅原さんに聞きました。

用意するもの。角材、プラスチックダンボール(以下プラダンと表記)、すきまテープ、メジャー、
定規、カッター、ノコギリ、プラスチック用ボンド、鉛筆またはペン

窓を採寸したら、すきまテープの厚さ分を引いてプラダンをカッターで切る。同じものを2枚用意

プラダンのサイズに合わせて角材をノコギリで切る。上下、左右どちらかは、角材の厚みを引くこと

ボンドを角材につけてヘラ状のものを使って均一にのばす

角材4本をプラダンに合わせて接着する

角材を2枚のプラダンではさむようにもう一枚のプラダンをボンドで接着。プラダンの厚さは、
2ミリ厚のもので十分だが、より丈夫にしたい場合は4ミリ〜5ミリ厚のものを使用する

角材の周囲をぐるりと一周覆うようにすきまテープを貼っていく

ボンドで取っ手をつけ、ビス止めをする。

ヒートンタイプ(写真)のネジを取り付けても便利だし、かわいい。

ボンドが乾いたら完成! すきまテープには、硬めのものとやわらかめのものがあり、
初心者にはやわらかめのものが窓にはめやすくてオススメ。(見本は硬めのものを使用)

手でちょっとずつ押し込むようにはめるのがコツ。
この内窓はあくまでもお風呂場や脱衣所などの、小さくて開け閉めの少ない窓用のものです

簡単なものですが、内窓を取り付けることで窓から熱が逃げるのを防いで、以前より温かくなった印象です。プラスチックダンボールは光を通すため浴室が暗くならないのも気に入っています。浴室は換気が重要なので、内窓は簡単に取り外しができることも大切です。放射温度計※で計ると、内窓をつける前後で窓の表面温度は2℃くらい変わります。

注※ 放射温度計:赤外線を利用してものに触れずに温度を計る機器。壁や天井など面の温度を計ることもできる。

温度計で断熱効果を計測してみました!

浴室に手作りの内窓を取り付けることで、どれほどの断熱効果が得られるのか、浴室の温度と浴槽の湯温を計測する実験を行いました。


浴室温度と浴槽の湯温を計測する小型温度記録装置。今回は1分間隔で温度を計測

計測機器を設置する吉田先生

実験を行ったのは、我が家を含め、一軒家2軒とマンション2軒の計4軒です。中でも、体感だけではなく、数値上でも効果がみてとれたのは、横浜市青葉区の山田あさかさんの住宅です。あさかさんの家は築28年の一軒家、浴室は3年前にリフォームされています。


浴室の窓に内窓を取り付けるあさかさん。窓が広いため、冬の入浴時はとても寒いそう

測定結果!

黄の点線が内窓を取り付けた日の浴室の温度。黄の実線が内窓を取り付けた日の浴槽の湯温。この日のリビングの室温は19.5℃
青の点線が内窓なしの日の浴室の温度。青の実線が内窓なしの日の浴槽の湯温。この日のリビングの室温は19.4℃。内窓は、湯張りの直前に取り付けています。

横軸の0分が浴槽に湯張りを開始した時間、縦軸が温度となっています。内窓を設置した日の外気温は14.7℃、内窓設置なしの日の外気温は15.2℃。計測データをグラフでみると、内窓を設置した日の浴室温度(黄の点線)は始めは外気温の影響により、内窓設置なしの日(青の点線)に比べると低くなっていますが、湯張り後の浴槽の湯温、入浴後の浴室の温度は内窓を設置した日の方が高く保たれています。

あさかさんに実験の感想を聞くと、「内窓をつけると空間の気密性が上がり、普段より浴室が温かく感じられた」とコメント。

以上のことから、お風呂にはいる際のヒートショック対策を考えると、入浴後から日中の外気温が上がる時間には窓を開けて換気を行い、陽がかげり外気温の下がる前、15時ごろから内窓を取り付けておくと、浴室温度が高く保たれるといえるでしょう。

そして、さらに、入浴前のひと手間、浴室の床、壁にお湯をかけることで、リビングと浴室の温度差を小さくすることができます。

窓を断熱することは、窓から熱が逃げるのを防ぐという点で、効果が大きいものです。何より試行錯誤しながら断熱対策を行うのは楽しく、その効果を肌身で実感できるのが嬉しくもありました。

浴室と脱衣所を断熱対策することで、バスタイムが安全・快適になります。これもウォームビズの工夫のひとつです。

やってみよう!自分でできる断熱対策!

レポートは以上です。これら簡単な対策でも、断熱の効果を実感できました。ちょっとしたひと工夫で、住まいはもっと快適になるのです。
「我が家は断熱性能が……」と、冬の寒さを痛感している方は、ぜひとも検討を!

※簡易な作業でも施工には十分注意願います。 場合によってはご近所の工務店等に相談してもいいかもしれません。

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