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TCFDを活用した経営戦略の立案

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普及啓発

TCFDとは

TCFDとは、気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の略称で、気候変動は⾦融システムの安定を損ない⾦融機関の脅威となる恐れから、2015年、G20の要請を受け、⾦融安定理事会(FSB)の下に設⽴されました。

「TCFD設立の背景」のイメージ
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気候変動は以下の三つの経路から金融システムの安定を損なう恐れがあるとされています。

物理的リスク
洪⽔、暴風雨等の気象事象によってもたらされる財物損壊等の直接的インパクト及びグローバルサプライチェーンの中断や資源枯渇等の間接的インパクト
賠償責任リスク
気候変動による損失を被った当事者が他者の賠償責任を問い、回収を図ることによって生じるリスク
移⾏リスク
低炭素経済への移⾏に伴い、GHG排出量の大きい⾦融資産の再評価によりもたらされるリスク

企業によっては、気候変動により企業価値が減少するリスクが非常に大きいとされており、気候関連リスクの影響は無視できなくなっています。そこで、投資家に適切な投資判断を促すため「気候変動の財務への影響」を公開するよう求めているのがTCFDタスクフォースです。
世界で約5,000の企業・政府・国際機関・民間団体等が、TCFDへの賛同を表明しています。日本は約1,500で企業数1位、次いでイギリスが約520、アメリカ約500となっています。(2023年9月30日時点)

2017年6月には、自主的な情報開示のあり方に関する提言(TCFD報告書)が発行され、最終報告書が公開されています。

「TCFD提言(最終報告書)」のイメージ
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TCFD提言が求めていること

TCFDでは、気候関連の規制強化や脱炭素技術移行等、脱炭素経済への移行に関するリスク(移行リスク)と気候変動に伴う自然災害・異常気象の増加等の物理的影響に関するリスク(物理リスク)を基に財務影響を評価することを推奨しています。

「気候関連リスクと機会が与える財務影響(全体像)」のイメージ
気候関連リスクと機会が与える財務影響(全体像)のイメージの画像を拡大表示

TCFD提⾔の要素は、「ガバナンス」・「戦略」・「リスク管理」・「指標と目標」の4つのカテゴリが存在し、11項目の開示が推奨されています。
特にその中でも、「戦略」の項目においては、気候変動シナリオ分析の実施が推奨されており、組織のレジリエンスを示すことを目的に、気候関連シナリオに基づいた分析が必要となっています。
具体的には、全ての企業に対し、①2℃目標等の気候シナリオを用いて、②自社の気候関連リスク・機会を評価し、③経営戦略・リスク管理へ反映、④その財務上の影響を把握、開示することを求めています。

「TCFD提言の開示項目(4カテゴリと11項目)」のイメージ
TCFD提言の開示項目(4カテゴリと11項目)のイメージの画像を拡大表示

TCFD提言におけるシナリオ分析は、気候変動が引き起こす不確実な未来において、複数のシナリオを想定し、それぞれの状況下で「企業に及ぼす影響がどういったものがあるのか」を予測しながら、レジリエンス性のある経営戦略を立てていく必要があるとしています。
「脱炭素が進行する世界」と「自然災害が激甚化する世界」の両極端を想定し、現実世界がどちらに進んでも事業を遂行できるレジリエントな体制を構築する必要があります。

「シナリオ分析は、将来の不確実性に対応した戦略立案と内外対話を可能にする」というイメージ
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「両極端のシナリオに備えておくことで、現実の世界がどの水準に収まろうと自社の経営が盤石になる」というイメージ
「両極端のシナリオに備えておくことで、現実の世界がどの水準に収まろうと自社の経営が盤石になる」というイメージの画像を拡大表示

TCFD提言ではシナリオ分析の手順として6ステップを提示しています。
シナリオ分析とは、設定したシナリオに沿って気候変動の自社への影響を分析することであり、定量化によって具体的な影響の把握と効果的な開示につなげることが可能となります。

「シナリオ分析6つのステップ」のイメージ
シナリオ分析6つのステップのイメージの画像を拡大表示
「シナリオ分析の事業インパクト評価」のイメージ
シナリオ分析の事業インパクト評価のイメージの画像を拡大表示

シナリオ分析の手法や他社事例等は、こちら「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ ~気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイド 2022年度版~」からご覧ください。

気候変動と生物多様性の関係性

気候変動による影響は、種の絶滅や生息・生育域の移動、減少、消滅などを引き起こし、生物多様性の損失や生態系サービスの低下につながる可能性があると言われています。
生物多様性は気候変動の次のアジェンダとなりつつあり、新たな国際目標への動きが急速に進んでいます。実際に、気候変動と生物多様性はこれまで別々に議論されてきましたが、2021年11月に英国グラスゴーで開催されたCOP26では、同時に対策を進めることの重要性が指摘されました。

「生物多様性喪失の要因」のイメージ
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「気候変動緩和策と生物多様性保全対策の相互関係」のイメージ
気候変動緩和策と生物多様性保全対策の相互関係のイメージの画像を拡大表示

TNFDとは

TNFDとは、自然関連財務情報開示タスクフォース(Task force on Nature-related Financial Disclosure)の略称で、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の自然版と言われています。
2023年9月に最終報告書が公表されました。企業情報開示を通じて資金の流れを変えることを目指しており、企業や金融機関が自然界への依存度を可視化し、自然環境や生態系に与える影響を評価、管理、報告する枠組みを検討するために発足した国際イニシアチブです。

TNFDではTCFDと同じ「ガバナンス、戦略、リスクとインパクトの管理、測定指標とターゲット」の4カテゴリの開示内容が求められています。14の開示項目のうち、自然関連の要素はあるものの、11項目はTCFDと同様であり、3項目がTNFD独自となっています。

「TNFD開示提言における開示内容と開示項目の一覧表」のイメージ
「TNFD開示提言における開示内容と開示項目の一覧表」のイメージの画像を拡大表示

TCFDに関する最新動向や他社事例等を知りたい方

TCFD開示は、開示して終わりではなく、開示内容を活用してどう経営戦略に織り込むかが必要となってきます。環境省の「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ ~気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイド 2022年度版~」では、最新の国内外動向をはじめシナリオ分析のプロセス、企業事例等、TCFDに役立つ情報をガイドに纏め公表していますので、以下のガイドをご覧ください。

TCFD・TNFDに関する勉強会のお知らせ

環境省では、令和5年度 事業者向け気候関連財務情報開示及び自然関連財務情報開示に関する勉強会を開催しています。開催が終了した勉強会については、アーカイブ動画でもご覧いただけます。

TCFD・TNFDに関する勉強会

(1)気候関連財務情報開示を企業の経営戦略に活かすための勉強会

  • 第1回 10月6日(金)09:00~12:00 TCFDの概況
  • 第2回 10月17日(火)13:00~16:30 TCFDシナリオ分析の実践
  • 第3回 10月30日(月)13:00~16:00 TCFDと経営戦略の統合
  • 第4回 11月16日(木)13:00~16:00 気候変動経営の実践とインターナルカーボンプライシング(ICP)
  • 第5回12月14日(木)13:00~16:30 これからのサステナビリティ経営

(2)自然関連財務情報開示のためのワークショップ <通称「ツール触ってみようの会」>

《ベーシック編》
  • 第1回 9月15日(金)13:00~15:40 自然との接点の分析に活用できるツールの紹介・実践
  • 第2回 10月31日(火)13:00~16:00 自然関連の依存・影響・リスクの分析に活用できるツールの紹介・実践
《アドバンス編》
  • 第1回 11月29日(水)14:00~17:00予定 ライフサイクル全体を通した自然との関わりの評価・分析①
  • 第2回 12月19日(火)12:30~15:40予定 ライフサイクル全体を通した自然との関わりの評価・分析②
  • 第3回 1月15日(月)13:00~16:20予定 情報開示に向けた準備

応募フォーム・資料・アーカイブ動画はこちら「環境省 - 企業の脱炭素経営への取組状況」よりご覧ください。

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