トピックス

日本の気候に今何が起きているのか ~気候変動の最新情報~

掲載日
カテゴリ
普及啓発

今年の夏も暑い日が多くなっています。また、7月には東北地方などで大雨による災害が発生しましたが、毎年どこかで大雨等による災害が発生したというニュースが聞かれるようになってきています。

こうした日常生活で感じる変化の背景には地球規模で進行する温暖化が影響している可能性があり、変化の緩和や変化した気候への適応といった対策を取るためには、長期的な実態と見通しが欠かせません。
そこで、気象庁で観測したデータから見える変化と、対策を取るために必要な将来の予測についてご紹介します。

気温の上昇

全国(13地点平均)の猛暑日の年間日数の変化のグラフ。全国の猛暑日の年間日数は増加しています。統計期間1910~2023年で100年あたり2.3日の増加。最近30年間(1994~2023年)の平均年間日数(約2.9日)は、統計期間の最初の30年間(1910~1939年)の平均年間日数(約0.8日)と比べて約3.8倍に増加しています。
日本の日最高気温35℃以上(猛暑日)の年間日数の経年変化(1910~2023年)
棒グラフ(緑):各年の年間日数(全国13地点における平均で1地点あたりの値)、
折れ線(青):5年移動平均値、直線(赤):長期変化傾向。

出典:気象庁HP – 大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化
全国(13地点平均)の熱帯夜の年間日数の変化のグラフ。全国の熱帯夜の年間日数は増加しています。統計期間1910~2023年で100年あたり19日の増加。最近30年間(1994~2023年)の平均年間日数(約25日)は、統計期間の最初の30年間(1910~1939年)の平均年間日数(約9日)と比べて約2.9倍に増加しています。
日本の日最低気温25℃以上(熱帯夜)の年間日数の経年変化(1910~2023年)
棒グラフ(緑):各年の年間日数(全国13地点における平均で1地点あたりの値)、
折れ線(青):5年移動平均値、直線(赤):長期変化傾向。

出典:気象庁HP – 大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化

2023年の日本の年平均気温は、観測史上最高となりました
『気候変動への適応って必要ですか? ~「緩和」と「適応」2つの気候変動対策について~』のトピックにもあるように、日本の年平均気温は、様々な変動を繰り返しながら長期的には100年あたり1.35℃の割合で上昇していて、これは、世界平均気温の上昇率より大きい値となっています

「1.35℃の上昇」はどのように理解すればいいでしょうか。この上昇は過去から現在までの期間の平均的な気温変化を示しており、日々起きる寒暖差などの変動が長期的に高温側に偏ることを意味します。こうした変化は極端な現象の発生にも影響し、より高温側に偏ることで猛暑日や熱帯夜などを発生しやすくします。

実際に、全国の猛暑日(日最高気温35℃以上の日)の年間日数は増加しており、その割合は100年あたりでは2.3日の増加ですが、特に近年の増加が顕著にみられます。また、熱帯夜(夜間の最低気温が25℃以上のことを指しますが、観測データで長期変化傾向を見る際には日最低気温25℃以上の日をカウントしています)は、100年あたり19日も増加しています。

これらの変化は、都市化の影響が比較的小さい地点のみの結果ですので、東京や大阪などの大都市では都市化による気温上昇がプラスされて、気温や猛暑日日数等が更に大きく上昇・増加していると考えられます。

大雨の増加

全国(51地点平均)の日降水量100mm以上、200mm以上の年間日数の変化のグラフ。大雨の年間発生回数は有意に増加しており、より強度の強い雨ほど増加率が大きくなっています。
日降水量100 mm以上の年間日数の経年変化(1901~2023年)
棒グラフ(緑):各年の年間日数(全国51地点における平均で1地点あたりの値)、
折れ線(青):5年移動平均値、直線(赤):長期変化傾向。

出典:気象庁HP – 大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化
全国(51地点平均)の日降水量1.0mm以上の年間日数の変化のグラフ。全国の日降水量1.0mm以上の年間日数は減少しています。統計期間1901~2023年で100年あたり9.4日の減少。最近30年間(1994~2023年)の平均年間日数(約116日)は、統計期間の最初の30年間(1901~1930年)の平均年間日数(約125日)と比べて約0.9倍に減少しています。
日降水量1.0mm以上の年間日数の経年変化(1901~2023年)
棒グラフ(緑):各年の年間日数(全国51地点における平均で1地点あたりの値)、
折れ線(青):5年移動平均値、直線(赤):長期変化傾向。

出典:気象庁HP – 大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化

気温が高くなることで、雨の降り方も変化してきています

気象庁の観測地点における1901年以降の観測データでは、1日の降水量が100ミリ以上という大雨を観測した1地点あたりの日数は、増減を繰り返しながらも100年あたり0.32日の割合で増加しています。ただし、大雨以外の雨の降る日数自体も増えているのかというと、そうではなく、雨の降った日数(1日に1ミリ以上の降水量が観測された1地点あたりの日数)は100年あたり9.4日の割合で減っています。これは、雨の降り方が極端になってきていることを示しています。

また、短時間に降る強い雨の頻度や強度の増加も観測されています。アメダスの観測で捉えた1時間降水量50ミリ以上となる非常に激しい雨や、80ミリ以上の猛烈な雨といった短時間の強い雨の年間発生回数は、1980年頃と比較してそれぞれ増加しており、より強い雨ほど頻度の増加率が高くなっています。年最大日降水量も増加傾向が現れており、これは、大雨の強度も増加していることを示しています。(気象庁HP – 大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化 参照)

このような雨の降り方の変化も、気温の上昇によるものであると考えられています。空気には、「気温が高くなるほど水蒸気を多く含むことができる」という性質があります。このため、気温が高くなると、より多くの水蒸気が大気中にため込まれ、雨として降るまでの時間が長くなることとなり、その結果として、降水の回数が減る一方で、一度の大雨がもたらす降水量は多くなるのです

他にもこんな変化が見られています

気温や雨以外にも、日本の気候には様々な変化が見られています。

  • 雪の積もる量や大雪の日数には、減少傾向が見られている地域があります。
  • 日本の周辺の海の水温は上昇しています。
  • 日本の沿岸の海面の高さは、1980年代以降上昇傾向が見られています。
  • 日本近海の水素イオン濃度指数(pH)は低下しており、海洋酸性化が進行しています。
  • さくらの開花日は早くなり、かえでの紅(黄)葉日は遅くなっています。
日本近海の海域平均海面水温(年平均)の変化傾向のイメージ(℃/100 年)。日本近海における、およそ100年間にわたる海域平均海面水温(年平均)の上昇率は、+1.28℃/100年となっている。
日本近海の海域平均海面水温(年平均)の変化傾向(℃/100年)
1900~2023年の上昇率を示す。上昇率の数字に印がない場合は、信頼水準99%以上で有意な変化傾向があることを、「∗」が付加されている場合は信頼水準95%以上で有意な変化傾向があることを示す。
出典:気象庁HP – 気候変動監視レポート
表面海水中のpHの長期変化傾向(日本近海)のイメージ。日本近海の水素イオン濃度指数(pH)は、10年あたり約0.02低下しており、世界平均と同程度の割合で海洋酸性化が進行しています。日本近海の広い海域で表面海水中のpHが低下し、海洋酸性化が進行しています。
日本近海のpHの10年あたりの低下速度
現場水温における pH の値の10年あたりの低下速度。pHの低下は酸性化が進行したことを示す。
出典:気象庁HP – 表面海水中のpHの長期変化傾向(日本近海)の図を一部改変
日本におけるさくらの開花日の経年変化のグラフ(1953~2023年)。1953 年以降、さくらの開花日は、10 年あたり 1.2 日の変化率で早くなっている。
さくらの開花日の経年変化(1953~2023年)
折れ線(黒):平年差(全国58地点で現象を観測した日の平年値(1991~2020年の平均値)からの差を全国平均した値)、
折れ線(青)の:平年差の5年移動平均値、直線(赤):長期変化傾向。

出典:気象庁HP – 気候変動監視レポート

これらの詳細は、気象庁が公表している「気候変動監視レポート」で最新情報をまとめていますので、ご覧ください。

将来の予測

これまでにご紹介してきたような気候の変化による災害の増加等の懸念に対応するためには、今後の変化の予測を踏まえた気候変動対策を取ることが重要となります。そこで、ここからは、気温や大雨の将来変化の予測をご紹介します。

気候の将来の変化は、これから地球温暖化がどれだけ進むかによって変わってきます。人間活動による温室効果ガス等の排出量や、土地の利用状況などに応じて複数のシナリオが設定され、それをもとに、将来の気温や大雨等の変化を計算しています。

気象庁では、追加的な緩和策を取らずに二酸化炭素等の温室効果ガスの排出が高いレベルで続き、21世紀末の世界平均気温が工業化以前と比べて約4℃上昇した場合(4℃上昇シナリオ)と、21世紀末の世界平均気温の上昇を工業化以前と比べて約2℃に抑え、パリ協定の2℃目標が達成された場合(2℃上昇シナリオ)の2つのシナリオについての予測を行っています。

※ここで用いる4℃上昇シナリオ、2℃上昇シナリオはそれぞれ、気候変動に関する政府間パネル(IPCC) 第5次評価報告書(AR5)で用いられたRCP(代表的濃度経路)シナリオのうち、RCP8.5とRCP2.6シナリオにそれぞれ対応しています。

20世紀末と比べた21世紀末の気温や猛暑日等の変化
出典:文部科学省・気象庁「日本の気候変動2020 —大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書—」

世界の気温の上昇に伴い、日本でも気温上昇が予測されています。これにより、21世紀末には4℃上昇シナリオで、猛暑日が約20日、熱帯夜は約40日増加する(いずれも20世紀末からの増加日数の全国平均)という予測結果が出ています。一方、2℃上昇シナリオにおいても猛暑日や熱帯夜の日数が増加すると予測されていますが、増加日数は4℃上昇シナリオに比べれば少ないです。このように、いずれのシナリオでも気温が上昇し、猛暑リスクが増加すると予測されますが、温室効果ガスの排出量に応じて上昇量や増加量に違いがあります


注)1時間降水量50 mm以上の雨は、「非常に激しい雨(滝のように降る)」とも表現されます。傘は全く役に立たず、水しぶきであたり一面が白っぽくなり、視界が悪くなるような雨の降り方です。
20世紀末と比べた21世紀末の雨の降り方の変化
出典:文部科学省・気象庁「日本の気候変動2020 —大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書—」

大雨についても、21世紀末には4℃上昇シナリオでは、国内のすべての地域及び季節において1日の降水量が200ミリ以上という大雨や、1時間あたり50ミリ以上の短時間の強い雨の頻度が増加し、ともに全国平均では20世紀末の2倍以上の年間発生頻度になると予測されています。一方、2℃上昇シナリオでは、20世紀末の1.5倍以上に増加すると予測されています。このように、いずれのシナリオでも大雨の頻度や強度が増大し、豪雨災害のリスクが一層増加すると予測されますが、温室効果ガスの排出量に応じて増加率に違いがあります

おわりに

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次評価報告書は、人間の活動が温暖化を引き起こしていることは「疑う余地がない」と初めて明記しました。また「人為起源の気候変動は世界中の全ての地域で、多くの気象及び気候の極端現象に既に影響を及ぼしている」とも述べています。これは日本も例外ではなく、今回ご紹介したような気候の変化が実際に見られています。今後の気候変動に伴い増加するリスクに備え、効果的、効率的な気候変動対策を推進するために、気象庁では今後も、気候変動の監視・予測情報の充実・強化と情報発信に努めてまいります

「日本の気候変動2020 —大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書—」

気象庁は文部科学省と共同で、日本における気候変動対策の効果的な推進に資することを目的として、日本の気候変動について、これまでに観測された結果や今後の将来予測をとりまとめた「日本の気候変動2020」を、2020年12月4日に公表しました。また、各管区及び沖縄気象台が各都道府県における気候変動の観測成果及び将来予測に関する情報を取りまとめた都道府県版リーフレットも公表しています。

令和7年3月には、最新の観測・予測等の情報を盛り込み、更に内容を充実させた「日本の気候変動2025」も公表予定です。「日本の気候変動2025」では、特に対策が必要となるような極端な高温や大雨に関する、頻度や強度の変化についても掲載を予定しています。

是非ご参考にご覧ください。

文部科学省・気象庁「日本の気候変動2020 —大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書—」
ページ先頭へ