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おいしく健康に! 地球にもお財布にもやさしい食のすすめ(1/2)

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普及啓発

みなさんの中には、「てまえどり」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。これは、スーパーやコンビニなどで棚から食品を選ぶときに、購入してすぐ食べる場合には、販売期限の近い手前の商品から先に取ることで、食品ロスを減らしていこうという取組です。
今回は、そんな身近な話題を出発点に、おいしく、そして地球にも優しい食のあり方について一緒に考えてみましょう。

毎日の食事はどんなふうに環境に影響するの?

私たちの毎日の食事は、地球環境にさまざまな影響を与えています。食事と環境問題は結びつかないように思えるかもしれませんが、実際にはその関係は非常に密接です。では、具体的にどのように影響を及ぼしているのでしょうか?ここでは温室効果ガスの排出について詳しく見ていきます。

食べ物が私たちのもとに届くまでには、たくさんのエネルギーが使われています。日本は多くの食べ物を海外から輸入しており、その輸送中にも温室効果ガスがたくさん出ています。

また、日本が出す温室効果ガスのうち、約6割は私たちの家庭から出ていて、その中でも食べ物に関する排出が全体の12%を占めていると分析されています。

※対象期間は2015年1月1日から2015年12月31日。
※資料:南斉規介 「産業連関表による環境負荷原単位データブック」 (国立環境研究所提供)、 Keisuke Nansai, Jacob Fry, Arunima Malik, Wataru Takayanagi, Naoki Kondo Carbon footprint of Japanese health care services from 2011 to 2015」、総務省「平成27年産業連関表」より公益財団法人地球環境戦略研究機関 (IGES) が作成したものを編集部にて加工

消費ベース(カーボンフットプリント)から見た日本の温室効果ガス排出量

地球のためにどんなことができるの?

食品ロスを減らしていこう

「食品ロス」とは、本来食べられるのに捨てられてしまう食品のことです。 日本では、2022年度に、約472万トンの食品ロス(家庭から約236万トン、事業者から約236万トン)が発生したと推計されています。

日本人一人当たりの食品ロス量は1年間で約38kgです。これは、おにぎり約1個分のご飯を毎日捨てているのと同じくらいの量になり、経済損失に換算すると一人当たり毎日88円に相当します。

食品ロスの発生状況

これらの食品ロスに伴って、余計な生産や輸送、ごみの処理が必要となり、年間1,046万トン(2022年度)もの温室効果ガスが排出されています。

家庭部門の用途別CO2排出量との比較(令和4年)
(出所)環境省「2022年度(令和4年度)の温室効果ガス排出・吸収量」基に作成

食品ロスを減らすためには、日常生活のさまざまなシーンで少しずつ工夫をすることが大切です。ここでは、買い物のとき、調理のとき、保存のとき、外食するとき、そして食べきれないときの5つの場面ごとに、具体的な方法を整理してみました。詳しくは、食品ロスポータルサイトをチェックしてみてくださいね。

1. 買い物のとき

買い物前に冷蔵庫やパントリーをチェックし、必要なものだけをリストアップしましょう。食べきれないほどの食材を買いすぎないように注意が必要です。また、すぐに食べる商品は、販売期限が長いものではなく、陳列順に購入(てまえどり)することで、食品ロスを減らすことができます。

2. 調理のとき

食べられる分だけ調理することを心がけましょう。もし食材が余った場合は、使い切りレシピを検索してみてください。
環境省では、“食ロスゼロレシピ” に挑戦する人気コーナー「エコデリキッチン」で簡単にできておいしいレシピを動画でお伝えしています。これらを参考に、食材を無駄なく使い切る工夫をしてみましょう。

3. 保存のとき

食べきれなかった食品を保存する際には、冷蔵庫の中で古いものから使いやすいように配置を工夫し、保存した食べ物を忘れないようにしましょう。

傷ませてしまいがちな食材の中には、冷凍保存できるものがあったりします。ちょっとネットで調べてみると面白い発見があるかもしれません。例えば「もやし」など、意外な食材が冷凍保存できたりするんです!

4. 外食するとき

外食の際には、自分や家族が食べきれる量を注文することを心がけましょう。どうしても食べきれない場合は、お店の方に持ち帰りが可能かどうかを確認し、注意事項をしっかりと聞いた上で持ち帰るようにしましょう。「mottECO」マークがあるお店では、食べ残しの持ち帰りを推奨しています。

また、宴会などでは、乾杯後30分間とお開き10分前は自分の席で料理を楽しむ「3010運動」に取り組んでみてください。

「mottECO」マーク
「3010運動」

5. 食べきれないとき

買いすぎて食べきれない場合や、贈答品が余ってしまう場合には、フードドライブなどへの寄付やお裾分けを検討しましょう。お住まいの自治体がフードドライブを行っているかどうかは、自治体のホームページなどで確認できます。

「地産地消」・「旬産旬消」で食事を楽しもう

また、私たちが日々の食事で意識することができる「地産地消」と「旬産旬消」は、私たちの健康や地球環境に良い影響をもたらすことが期待できます。現在、日本ではカロリーベースで約6割を輸入食品でまかなっており、その分輸送に掛かるCO2排出量が大きくなっています。

地産地消」とは、地元で生産された食材を地元で消費することを意味します。地元の農家や漁師から新鮮な食材を購入することで、地元の経済の活性化に貢献できるだけでなく、輸送に伴う温室効果ガスの排出を減らすことができます。また、地元の食材の利用の促進は、生産者と消費者の結びつきを強化し、消費者が安心して地元の食材を購入することができるようになること、食生活に地域の特色ある食文化を取り入れることにより、消費者の豊かな食生活を実現することにもつながります。

旬産旬消」とは、その季節に収穫される旬の食材を消費することを意味します。旬の食材は、その時期に最も美味しく栄養価が高い状態で収穫されるため、健康にも良い影響を与えます。さらに、旬の食材は一般的に価格も安定しており、家計にも優しい選択です。そして、旬の食材を選ぶことで、エネルギー効率の良い生産が可能になり、温室効果ガスの排出を減らすことにもつながります。

野菜を食べて栄養バランスを整えよう

平均的な日本人が食事で出す温室効果ガスの量は、1年間で約1,400kgCO2e(キログラムの二酸化炭素相当)と試算されています。その中でも、肉、穀物、乳製品の順にカーボンフットプリントが高い傾向があります。特に肉は食べる量が少なくても、全体の約4分の1を占めるほど、温室効果ガスをたくさん出しています。その反対に、野菜や果物などは相対的にカーボンフットプリントが低いと試算されています。

肉は、飼料を作るときや運ぶときにCO2が出るだけでなく、家畜が飼料を消化する過程でメタンガス(CH4)を出すため、他の食品よりも環境への負担が大きい傾向にあります。
もし日々の食事に野菜が足りないと感じる場合は、バランスの取れた食事を心がけ、野菜を積極的に取り入れることで、より健康で持続可能なライフスタイルを実現していきましょう。

平均ライフスタイル・カーボンフットプリント及び物的消費量の2017年時点の推計値。
内部の円は物的消費量の割合を示す。外側の円はカーボンフットプリントの割合を示す。
公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)「1.5℃ライフスタイル脱炭素型の暮らしを実現する選択肢」より編集部作成

日本人の食に関するカーボンフットプリント及び物的消費量の割合(2017年)
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