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第3次気候変動影響評価報告書を公表しました

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普及啓発

環境省は、気候変動適応法に基づいて、気候変動が私たちの健康や生活等に与える様々な影響を評価した「第3次気候変動影響評価報告書」を公表しました。

本記事では、気候変動影響評価報告書や評価結果の概要、具体的な影響についてご紹介します。ぜひご覧ください。

気候変動影響評価報告書とは

気候変動影響評価報告書(以下「報告書」)とは、環境省が最新の科学的知見を踏まえ、おおむね5年ごとに作成する、気候変動が私たちの健康や生活等に与える様々な影響を評価する報告書です。

農業・林業・水産業、水環境・水資源、自然生態系、自然災害・沿岸域、健康、産業・経済活動、国民生活・都市生活の7つの対象分野を細分化した80の項目ごとに、重大性、緊急性、確信度の3つの観点で気候変動の影響を評価しています。

第3次気候変動影響評価報告書(総説)表紙

評価結果の概要

全7分野80項目のうち、23項目(29%)において現状、既にレベル3(特に重大な影響が認められる)と評価されました。また1.5~2℃上昇した将来では、38項目(48%)、3~4℃上昇した将来では50項目(63%)がレベル3と評価されました。

温室効果ガスの排出を削減し、脱炭素やカーボンニュートラルを実現することにより気候変動そのものを抑制する「緩和」の取組を行わない将来(3~4℃上昇時)では、非常に多くの分野で重大な影響が出ることが示されました。

また、「緩和」の取組を行い、気温上昇を 1.5℃に抑えたとしても、現状より多くの分野で重大な影響が出てしまうため、気候変動の影響による被害の回避・軽減対策である「適応」の取組も合わせて進めていかなければなりません

第3次評価における全分野・小項目の重大性・緊急性・確信度の評価結果一覧表。
今回の評価結果から、以下が示された。
・1. 科学的知見が充実したことで、前回評価時に比べ確信度が向上した。
・2. 気候変動の影響は、将来のことではなく既に顕在化している。
・3. 多くの項目で、影響の発現時期と比較して、適応策が十分な効果を発揮するまでに要する時間が長いことから、できるだけ早く意思決定が必要である。
気候変動影響評価結果一覧

例えば、こんな影響を掲載しています

報告書では、分野ごとの評価だけでなく、どのような気候変動影響が科学論文などで指摘されているかについても幅広く取りまとめております。例えば、次のような気候変動による影響が掲載されています。ここでは、その一部を具体的な写真とともにご紹介します。

  • 農業・林業・水産業分野:米の収量や品質の低下、リンゴ等の着色不良
  • 自然生態系分野:サンゴの白化現象の頻度増加
  • 自然災害・沿岸域分野:洪水の発生地点数の増加
  • 健康分野:熱中症による救急搬送者数・死亡者数の増加
  • 国民生活・都市生活分野:大雨・台風等による電気・ガス・水道・通信の寸断

農業・林業・水産業分野

米の収量や品質の低下

下の左側の写真の米粒は、右の写真に比べ米粒が白く濁り、品質が低下しています。
これは、「白未熟粒(しろみじゅくりゅう)」という影響です。

水稲の「白未熟粒」(左)と「正常粒」(右)
出典:国立環境研究所気候変動適応センター
リンゴ等の着色不良

夏季に高温が続くと、下の写真のようにリンゴに着色不良が起きてしまいます。

リンゴの着色不良
出典:「令和6年地球温暖化影響調査レポート」(農林水産省)

自然生態系分野

サンゴの白化現象の頻度増加

下の写真は、高水温により白化(サンゴ体内に共生する藻類が少なくなり、サンゴの白い骨の色が見える現象)してしまったサンゴです。
白化した状態が長期間続くとサンゴは栄養を得られずに死亡してしまいます。

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白化したサンゴ
出典:「サンゴ礁生態系保全行動計画2022-2030」(環境省)

自然災害・沿岸域分野

洪水の発生地点数の増加

令和5年6月29日からの大雨では、多くの河川で氾濫等が発生しました。
この大雨は、地球温暖化の影響で総雨量が増加していたと報告されています。

福岡県久留米市の巨瀬川氾濫(令和5年)
出典:「災害・防災情報:6月29日からの大雨」(国土交通省)

国民生活・都市生活分野

大雨・台風等による電気・ガス・水道・通信の寸断

台風による大雨の影響で堤防が決壊し、変電所が水没してしまったこともあります。
このときに発生した停電は、復旧に約5日を要しています。(※復旧困難箇所を除く)

令和元年東日本台風で水没した変電所
出典:「令和元年に発生した災害の概要と対応」(経済産業省)

おわりに

環境省では、国民の皆様だけでなく、都道府県・市町村等や民間企業が気候変動影響に対する対策を講じる際にも、本報告書の内容を参考にしていただきたいと考えています。

※本報告書では、目的や想定読者ごとに、以下の資料をご用意しています。

  • ① より多くの人に気候変動影響を身近なものとして知っていただくために、気候変動の影響例をスライド形式で分かりやすく整理した「概要版(計19項)
  • ② 自治体や事業者の担当者が、気候変動適応に関する施策や取組を検討・判断する際の基礎資料としても活用できる「総説(計163項)
  • ③ 影響の詳細や評価の判断根拠、引用文献を確認したい場合に参考資料として辞書的に活用できる「詳細(計618項)

まずは、「概要版」などを通じて、気候変動の影響がすでに身の回りで生じていること等を知っていただければと思います。
そのうえで、たとえば暑い日は水分・塩分をこまめに補給することや、食料・医薬品などの防災グッズを揃えることなど、皆さまの生活に身近な「適応」に取り組むきっかけにしていただければと思います。