脱炭素社会の実現に向けた国際的な動向(1/2)
気候変動の原因となる温室効果ガスの排出削減に向け、世界全体での取組が求められています。
ここでは、脱炭素社会の実現に向けた国際的な動向を整理し、各国の主な目標と政策をご紹介します。
世界全体で取り組むべき気候変動問題
「気候危機」とも言われている気候変動問題は、私たち一人一人にとって避けることができない喫緊の課題です。既に世界的にも平均気温の上昇、雪氷の融解、海面水位の上昇が観測され、日本でも平均気温の上昇、大雨、台風等による被害、農作物や生態系への影響等が観測されています。
この地球規模の課題である気候変動問題の解決に向けて、その原因となる温室効果ガスの排出削減のための世界全体での取組が求められています。
2023年に開催されたCOP28(国連気候変動枠組条約第28回締約国会議)では、パリ協定下で初めてパリ協定の実施状況を進捗・評価するグローバル・ストックテイク*に関する決定が行われ、気候変動による地球全体の気温の上昇を1.5℃に抑えるためには、緊急な行動が必要であること、また世界全体の温室効果ガスの排出量を2030年までに43%、2035年までに60%削減する必要があることが強調されました。
* グローバル・ストックテイク : パリ協定の長期目標の達成に向けた世界全体の進捗を評価する仕組み
また、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は気候変動に関連する最新の科学的知見を取りまとめ、2021年から2023年にかけて、第6次評価報告書の第1作業部会・第2作業部会・第3作業部会の各報告書及び統合報告書を公表しました。
世界全体でのGHG排出量と目標
世界の温室効果ガス(GHG)の総排出量は、1990年から現在にかけて大きく増大しており、今後もその傾向が継続するおそれがあります。地球規模でのGHG排出削減には、主要排出国(中国、米国、インドなど)の取組が鍵を握ります。
国連環境計画(UNEP)が毎年公表する報告書 Emissions Gap Report では、現在及び推定される将来のGHG排出量に関する最新の科学的研究の知見を評価し、パリ協定の目標を達成するために世界が最小コスト経路で推進するのに許容される排出量レベルと比較しています。
直近の Emissions Gap Report 2023 では、現行の政策や NDC のままでは2035年には排出(エミッション)ギャップが開き、埋められない差となることが予想されており、今後10年間で早急かつ前例のない緩和策が必要であると結論付けられています。
このような現状を踏まえ、気候変動問題の解決に向けて、世界各国が平均気温上昇を工業化以前に比べて1.5℃に抑えることや、今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成することなどを合意し、この実現に向けて、120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」を掲げています。