暖房時の室温を20℃にして快適に過ごすライフスタイル「ウォームビズ」。全国各地でさまざまな取り組みが行われています。なかでも山口県下関市は、食を通してからだを内側からあたためる「食べるウォームビズ」に注目した取り組みを行っています。
日常の食事を工夫してからだの中からあたためることも、ウォームビズのポイントです。下関市ではどのような取り組みがなされているのでしょうか?
平成17年度からウォームビズに取り組んでいる山口県下関市。市役所の食堂では、からだをあたためる食材をふんだんに使った「ウォームビズランチ」を期間限定メニューとして提供しています。「からだがポカポカあたたまり、しかもおいしい!」と利用者には大人気とのこと。
平成26年度からは下関市民の皆さんからもウォームビズのレシピを募集。毎年さまざまなレシピが寄せられるようになりました。優秀作品のうち「市食堂賞」を受賞したレシピは市役所の食堂で期間・数量限定で提供しています。なお、食堂は市の職員だけでなく、一般の方も利用することができるとのことです。平成28年度は「団らん」をテーマにレシピを募集。32件のウォームビズレシピが集まりました。
今回は、平成28年度に各賞を受賞したレシピをご紹介します。
ちりめんの香ばしいおにぎりを豪華にアレンジ。山口県産のれんこんを使ってとろみを出すのがポイントです。とろみのある料理は、通常の料理より冷めにくいという特長があります。あんかけ料理やポタージュやシチュー、カレーなどは最後まであたたかい状態で食べきることができます。
ウォームビズランチメニュー募集の共催者である下関市地球温暖化対策地域協議会の会長賞受賞作品。余ったご飯で大皿を使って作る簡単ドリアです。余ったご飯を有効活用し、大皿のワンプレート料理にすると、ゴミも洗い物も減らすことができます。ミートソースに使用している根菜は、からだをあたためる効果があると言われています。みじん切りにせず歯ごたえを残すのがおいしさのポイント。
地元で獲れた野生のシカやイノシシなどジビエのひき肉や地元のそうめんを使った地域密着レシピです。お肉はそぼろにすると食べやすくなります。からだの中からあたためるしょうがをたっぷり使っています。「地産地消」ということで地元産の食材を積極的に使うことは、輸送に関するエネルギーを減らすことにも役立っています。
なお、こちらのメニューは平成29年1月10日から2月10日までの間、同食堂で、一日限定20食 500円で提供されています。お近くの方はぜひ立ち寄ってみては?
※市役所食堂で提供される料理は、写真と若干異なります。
肉も野菜も海藻もバランスよく食べることができ、外国の食文化も学べる家族団らんのメニューです。韓国海苔とコチュジャンを使うと、手巻き寿司が韓国風に変身!コチュジャンは、韓国料理にはポピュラーなピリ辛の調味料で、からだをあたためてくれる効果も……。
地元産の鹿肉を使ったシチュー。お年寄りが食べやすいように具を小さめにしています。血行を良くしからだをポカポカにする生姜、ネギ、ニラを入れ、味付けに昆布茶を使用してあっさり感を出しているのがポイント。とろみがあり、冷めにくいシチューはからだをあたためます。
上記受賞レシピをはじめ、決勝審査に進んだ料理のレシピが下関市のウェブサイトでご覧いただけます。
下関市では平成17年度よりウォームビズの取り組み始め、庁舎内の室温を適正に管理(19℃推奨)し、職員も快適に仕事ができるよう重ね着やひざ掛けを活用しています。その結果、ウォームビズが実施される前の平成16年度と、平成25年度の1月から3月までの3ヶ月間を比べてみると、電気使用量は53,209kWhの削減、CO2排出量は35t削減、電気料金は118万円削減されたそうです。
こうした取り組みのなかで誕生したのが、からだをあたためる食材をふんだんに使うなどの工夫を凝らした「ウォームビズランチ」。平成28年度も小さいお子様からプロの料理人まで幅広い層から応募がありました。
審査においてはからだをあたためる食材や調理法だけでなく、地元の食材を使っていること、廃棄食材が少ないこともチェックしています。地元産の食材を使うこと、「地産地消」は、輸送に関するエネルギー消費が減り、廃棄物が少なくなることでゴミ処理に関するエネルギー消費も削減されます。日常の食生活でも、ちょっとした工夫で地球温暖化対策に貢献できるのです。
「市役所の食堂では毎年『市食堂賞』受賞メニューを一日限定20食で販売しているのですが、売り切れる日も多く、とても評判が良いです。わざわざこのメニューを食べに市役所に来てくださる市民の方もいらっしゃるんですよ。」(下関市役所環境部環境政策課の古賀裕二さん)
現在、市役所の食堂で販売されている『ぽかぽか!そぼろの温そうめん』を考案したのは高校3年生の矢野結菜さん。「募集レシピのテーマが『団らん』だったので、家族そろって食べられるウォームビズの食事を考えたところ、“そぼろ”はお年寄りの方でも食べやすいということに気が付き、そぼろを使った料理を考えて応募しました。自分の考えたレシピを他の人に作ってもらうのも、その料理が多くの人に喜んでもらっていることも、想像したことがなかったことで、とても驚いています」とのこと。これからもいろいろなレシピを考えていきたいそうです。
また、食堂の常連者からも「今年はどんなメニューか楽しみ」などの声も上がっており、ウォームビズとウォームビズランチが下関市で確実に定着していることを実感しているそう。
「毎日の食事に少し気を配るだけで、ウォームビズは実践できると思います」(古賀さん)と、ウォームビズランチレシピ募集の意義と手応えを話してくれました。
今年度のレシピは『団らん』をテーマに募集されました。家族が一つの場所に集まって食事をすることで『ウォームシェア』の効果も期待できます。暖房を使用する部屋に集まり、一緒に過ごすことで暖房や照明などのエネルギー消費を節約するウォームシェアでは、集まる人とのコミュニケーションも深まります。からだも心もあたたまり、一石二鳥の効果がえられますね。
山口県下関市の取り組みのように、ウォームビズは服装や住まいの工夫などのほか、毎日の食事でも実践することができます。食生活で工夫するべき、ウォームビズのポイントをご紹介しておきましょう。
からだをあたためる食材を使用する
生姜や根菜類などを意識して取り入れましょう。
料理の熱を保つ調理法で料理する
料理の熱を逃がさない「あんかけ」などがおすすめです。
地元の食材をなるべく使う
輸送で消費されるエネルギーを削減できます。
無駄なく食材を使う
生ゴミを減らす工夫も、ゴミ処理に係わるエネルギーの節約につながります
家族みんなで食事をする
家族全員で同時に食事をすれば「あたため直し」もなくなります。
毎日の食事からはじめるウォームビズ。簡単に取り組めることがたくさんあります。
まずは今日の夕ごはんから、チャレンジしてみませんか?
◆ ご賛同はこちらから
http://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/join.html