日本人は「お風呂好き」と言われています。東京ガス都市生活研究所が実施した10〜60代の東京圏在住者を対象としたアンケート調査によると、「好き」「まあ好き」と答えた方の割合が約8割を占めています。からだを温めてくれる入浴は、ウォームビズを実践する上でも大切な生活習慣です。
ただし、大量のお湯を使うお風呂は、家庭の中でもエネルギー消費量の大きな割合を占めています。また、入浴中に体調を崩す「ヒートショック」などが原因と考えられる溺死事故は、冬の寒い時期に多発しています。人口動態統計によると、家庭の浴槽での溺死者数は平成27年に4,804人で、平成16年の2,870人と比較し11年間で約1.7倍に増加しており、消費者庁が注意を呼びかけています。
そこで、今回は、省エネと健康に配慮して楽しむ、ウォームビズ流「入浴法」のポイントをご紹介します!
入浴には、おもに「温熱」「水圧」「浮力」という3つの作用があります。また、41℃以上の熱めのお湯での入浴は交感神経を刺激してからだを活性化させる「目覚め」作用があり、40℃以下の熱すぎないお湯での入浴は、副交感神経が働いて心身をリラックスさせる作用があるとされています。
温熱作用
お湯がからだを温めてくれる作用です。血管が開いて、血液の流れがよくなります。
水圧作用
水圧がマッサージのように作用します。お湯に浸かっている部分が圧力を受けるため、とくに全身浴のときに大きな効果があります。シャワーの場合でも、水流によるマッサージ作用があります。
浮力作用
水の中では、空気中と比べて体重が約10分の1になり、下半身の関節などへの負担が軽くなります。
短時間でからだを温めるには、肩までしっかりお湯に浸かる全身浴が最も効果的です。前出の東京ガス都市生活研究所が千葉大学との共同研究(※)などで検証した結果では、入浴しなかった場合や、同じ温度のシャワーを使った場合、半身浴をした場合などと比べ、全身浴をすると最も疲労回復効果が高いことが紹介されています。
(※)参考/都市生活レポート『快適バスライフのすすめ』(東京ガス 都市生活研究所)
ただし、入浴時間には注意が必要です。消費者庁が行ったアンケート調査(55歳以上対象)によると、入浴中にのぼせたり、意識を失ったりしてヒヤリとした経験をもつ人の割合は、浴槽に長く浸かっていたほど多くなることが報告されています。また、省エネの観点からも湯温の維持や沸かし直しに余分なエネルギーを使う長風呂は避けたいところ。「40℃程度の熱すぎないお湯に10分以下を目安にゆったり浸かる」のがオススメです。
また、ヒートショックを防ぐためにも、浴室や脱衣スペースの窓などの断熱性を高め、冷たい外気の影響を受けにくくすることが有効です。
(サイト内参考ページ/ぽかぽかゼミナール PART3『暖房費も節約できる「窓の断熱」テクニック』)
資源エネルギー庁の『エネルギー白書2016』によると、家庭におけるエネルギー消費のうち、給湯は30%近くを占めています。給湯の大部分はお風呂に使うお湯ですから、お風呂での省エネに配慮することは、各家庭からの温室効果ガス排出を削減するためにも、重要なポイントといえるでしょう。
では、具体的にどのようなことに注意すればお風呂での省エネを実践できるのか、いくつかのポイントをご紹介します。
●浴槽のふたをこまめに閉める
お風呂にお湯を張ったり(風呂釜式の場合は沸かす時)、交替で入浴する間など、こまめに浴槽のふたを閉めると、浴槽のお湯が冷めにくくなり、追い炊きなどのエネルギーを節約できます。
●できるだけ続けて入浴する
複数の家族などが入浴する場合、時間を空けずに続けて入浴するようにしましょう。いくら浴槽にふたをしていても、湯温は2時間で約1.5℃程度は下がってしまいます。
●シャワーを使う時間を短くする
髪を洗うときなど、シャワーを出しっぱなしにしていませんか? シャワーの湯量が1分間に12リットルの場合、約17分間で家庭用の一般的なサイズの浴槽が満杯になる200リットルものお湯を使っていることになります。
また、水からお湯を沸かす風呂釜式に比べて、給湯式のお風呂の方が効率はよく(浴槽容量200リットル程度の風呂に使う機器の効率を比較した場合)、消費エネルギーを節約することができます。築年数の古い一戸建てなどで風呂釜式のお風呂を使っている方は、窓の断熱などと合わせて改修することを検討してみてはいかがでしょうか。東京ガスの試算(※)によると、こうしたお風呂の省エネを実践することで、年間に約8,400円の光熱費を削減できると報告されています。
(※)参考/東京ガス『ウルトラ省エネブック』
日本には古くから「薬湯」の伝統があります。冬至の日に入る慣習がよく知られている「ユズ湯」もそのひとつ。ほんのりとユズの香りに包まれて風流な気分でくつろげるのはもちろん、ユズ湯には何も入れないお湯で入浴するよりもからだが温まり、風呂上がりにも湯冷めしにくくなるという効果があることがわかっています。
ユズ湯の作り方は、丸ごとのユズの実を2〜3個湯船に浮かべるだけでとても簡単です。また、皮だけを浮かべても効果があります。ただし、果汁を搾り入れると肌への刺激が強いことがあるので注意してください。
また、市販されている入浴剤を活用してみてはいかがでしょうか。入浴剤には、使われている成分によっていくつかの種類があります。基本的な効果としては、入浴することによって得られる温浴効果(からだを温めるなど)や保湿効果を高めることで、市販されている入浴剤には効能を表記することが法律で定められています。
無機塩類系入浴剤
炭酸水素ナトリウム(重曹)や硫酸ナトリウム(芒硝)などの成分を配合しています。塩類が皮膚表面のタンパク質と結合して膜を形成することで、入浴後の保温効果を高める働きがあります。
炭酸ガス系入浴剤
炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどを配合した入浴剤です。炭酸ガスが皮膚から吸収されて血管を広げて血行をよくします。その結果、からだを温め、新陳代謝を促すので、疲れや痛みを緩和します。
薬用植物系入浴剤
チンピ(ミカンの皮)やハッカ葉などの生薬を刻み入れたり、その成分を配合している入浴剤です。使われている生薬の種類によって効果は異なります。植物の香りによるリラックス効果も期待できます。
スキンケア系入浴剤
セラミド、スクワラン、ミネラルオイルなどの保湿成分などを含み、冬に起こりやすい肌のかさつきなどをケアできます。
(参考/日本浴用剤工業会『入浴剤の効果とメカニズム』)
こうした入浴剤は、家庭のお風呂で温泉気分を味わうこともできます。ユズ湯などの薬湯とともに、その日の気分に合わせて楽しみましょう。温かいお風呂に入るのは、冬の楽しみのひとつでもあります。エネルギーの節約や健康維持に配慮して、ウォームビズな入浴を楽しんでくださいね!
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